ボルダリングのテクニック(基本編Ⅰ)
ボルダリングの基本的なテクニック Ⅰ-A
1. 足元を良くみる
テクニックと言ってしまうとあれなのですが、ボルダリングの基本的な動作なので書いておきます。
初めて課題にとりかかるとどうしても手にばっかり意識が行き、強引でかっこ悪い登り方になってしまいます。ボルダリングジムの課題では手のホールドが決められているので、どこに置いても自由な足はどうしてもおろそかになりがちです。
そして適当なホールドに足を置くので体重を足にあずけることができず、手で踏ん張って体を支えることになります。こうなると手が疲れ、必死に壁に張り付いて不格好になってしまいます。
ですのでまず大事なことは足元を見て、体重をしっかりと乗せられそうなホールドを探し足を置くこと。しっかりと足に体重を乗せることが出来れば、無理なくホールドを取りに行くことができます。
2. 足のつま先でホールドに立つ
ボルダリングはつま先でホールドに立つのが基本です。特にちょど親指の位置あたりが最も力の入るところで、ここをホールドに置ければ滑りにくく安定し、足にぐっと力をいれることができます。
そしてつま先で登るメリットは、ホールドに足を置いた時に足首を回転させられること。体の向きを変える事ができるので可動域がかなり広がります。逆に足の裏でべったりとホールドに乗ってしまうと壁にくっつく事になってしまい、ほとんど動けない状態になってしまうのです。その状態で無理やり手の力を使って登ろうとしてしまうので、初心者の方はすぐに腕が疲れてしまうのです。
足のホールドをしっかりと見てつま先で乗れば、びっくりするくらい楽に登れると思います。
3. はしごの様に 足→手→足→手 の順番で登る
はしごを登るのを想像してみてください。まず右足でぐっとはしごを登ったら右手ではしごを掴み、次に左足を上げまたぐっと登り左手ではしごを掴みます。恐らく大抵の人はこのように「足、手、足、手」の順番ではしごを登ると思いますが、このはしごの登り方がボルダリングの基本の登り方になります。
そしてまたはしごを登っているのをもう一度想像して頂きたいのですが、手ははしごから落ちないよう体を支えているだけで、足の力だけを使ってぐいぐい登っているのがわかると思います。
ボルダリングの登り方も一緒で手は体を支えているだけで、足の力を使って上に登ります。腕で登ろうとするとすぐに消耗してしまうのです。
このはしごを登る時の様に、手足のいずれか3ヶ所で体を支えるのを「三点支持」と言い、常にフリーの状態を1ヶ所残し、それを使って登っていきます。登山でも岩場を登る時の基本的な姿勢になります。
4. ホールドを掴んでいる時は腕を伸ばす
次のホールドを探している時など、落ちないよう腕をまげて壁にしがみついていると腕に無駄な力が入り消耗してしまいます。
また壁にぴったりとくっついてしまうと足のホールドを探すのも大変になり、身動きが取れなくなってしまいます。
反対に腕を伸ばすと視野も広くなり、体と壁の間にスペースができるので次の動作にうつりやすくなります。そして腕を伸ばすと重心が足に落ち、足の力を使って楽に登ることができます。
5. 手が届かない高い位置のホールドには足を上げてみる
ボルダリングの課題で最初にぶつかる問題に、「あのホールドにもうちょっとで手が届くのに・・・届かない!」と言うものがあります。指の先でホールドに触れる事はできるんだけど、体をどれだけ伸ばしても届かない、と言う問題にぶつかります。無理やり取りに行って墜落する人も多いのではないでしょうか。
そんな時はまず足の位置を上げてみましょう。まず取りに行くホールド側の足を今の位置より高いところに持っていきます。足元を見て、今足が乗っているホールドより高い位置にあるホールドを探しましょう。そのホールドに足の先でしっかりと乗ったら、ゆっくりとその上げた足に体重を移動します。
初めは滑りそうでちょっと怖いかも知れませんが、恐れずにゆっくりと体重を移動させましょう。そしてそのまま体をゆっくりと持ち上げます。その時体重が乗っていない足は壁に沿わせると安定します。こうすることで体の位置が上に上がり、取れなかったホールドもとれるようになります。
それでも届かないホールドの場合は、取りに行くホールド側の足をもうちょっと高くします。しっかりとした位置に足を置いたら、ひざをぐっと曲げホールドに乗り込み体重をあずけます。そうする事で体が壁に近づき、より遠くのホールドをとれるようになります。先ほどと同じ様に、ホールドに乗っていない足は壁に沿わせていると安定します。
6. ホールドの上で左右の足を入れかえる
例えば右方向のホールドをとろうとして届かない場合、右足で乗っているホールドに左足で乗り右足と左足を入れ替えることができると遠くのホールドに届きやすくなります。
小さいホールドに足を置いていると難しいと感じるかも知れませんが、しっかりとつま先でのることができればスムーズに足を入れかえることが出来ます。
これも「三点支持」の要領で、左右の手と右足で体を支え左足をフリーにします。その左足をゆっくりと右足に近づけて行き、右足が置いてあるホールドにつま先で乗ります。しっかりと左足が乗ったら重心を左足に移します。今度は右足がフリーになるのでその右足を右のホールドへと移動させます。こうすると右方向のとれなかったホールドもとりやすくなります。
このように細かく細かく横に移動すると体が安定して次の動きが楽になります。逆に思いっきり足を開いて横に移動しようとすると、体が伸びきってしまい身動きがとれなくなってしまいます。
7. ホールドは掴むよりひっかけるイメージで
オランウータンがロープをうんていをしているイメージでホールドを掴むと腕が疲れにくくなります。
例えがわかりづらかったかも知れませんが、ホールドを指で握りこんでしまうのではなく、指でひっかけるようにホールドをもつのです。そうすることによって腕が伸びるので疲れにくくなり、また小さめのホールドもとりやすくなります。落ちないよう手に力を入れるとすぐに疲れてしまいますので、リラックスして手をひっかけているイメージをもつことを意識しましょう。
ボルダリングの基本的なテクニック Ⅰ-B
1. 体を回転させて遠くのホールドをとる
普通壁を登る時は壁に対して体を平行にします。これが基本的な登り方になりますが、これに腰のひねりを加えるとより遠くのホールドをとりやすくなります。
例えば左手の高い位置のホールドを左手でとろうとした場合、足の位置を高くしてとりにいきますが、足を置けるちょうど良いホールドがみつけられないかもしれません。
そんな時は左足のホールドに体重を移し、腰を左に回転させ、両方のかかとを左に向けます。こうすることで体の向きが変わりより遠くまで手を伸ばすことができるのです。
伸ばす方の手の方向に両方のかかとを向ける。こうするだけでわざわざ足の位置を変えなくても、届かなかったホールドに手が届きやすくなります。
しかしそのためにはしっかりとつま先でホールドに乗れていることが大切です。足の裏でべったりとホールドに乗ってしまっているとかかとの向きが変えられなくなってしまいます。
2. 壁から体を離したりくっつけたりするのを繰り返して登る
基本テクニック①で書いたように、ボルダリングをしている時の姿勢は、極力腕が伸びた状態で体の前にスペースがある状態がベストです。腕が曲がり壁にぴたっと張り付いていると手に余分な力が入り疲れやすくなってしまうからです。
しかしこの状態をキープしながらだとさすがに手が届かないホールドがでてくるので、ときには壁に体をくっつける動きが必要になります。
まず足を上げる時には手を伸ばし体の前にスペースを作ります。こうすることで足が動きやすくなります。そして手を上げるときは腕の力で体を壁にひきつけます。壁との距離が近づき体がまっすぐになることで、壁から離れていた時に比べより遠くに手を伸ばすことができるようになります。
この「足を出す時は壁から離れる、手を出す時には壁に近づく」と言う動作を繰り返しながら登れる様になると、より楽にスムーズに登ることが出来るようになります。
3. 体を降って勢いを使ってホールドをとる
遠くのホールドを手でとりに行くとき足の位置を変えたり体の向きを変えたり、色々な体の動きを駆使します。
しかし時には体を支えるホールドのかかりが悪くてそんな動きが許されな局面に出くわします。もうちょっとなのに少しでも動いたら壁から離されてしまう、と言うような状況です。
そんな時は強引にホールドをとりに行ってしまいましょう。たまには無理も必要になってきます。とるホールドの状況によっても異なりますが、体を振って勢いをつけ、ガッとホールドをとりに行ってしまいましょう。
4. オブザベーションをする
オブザベーションとは壁のスタートからゴールまでを観察することを言います。要は登る前のイメージトレーニングの様な感じです。「あそこのホールドを左手でとって、ここに足をのっけて・・・」と言う風に、頭の中で自分の動きを組み立てておくのです。こうすることによって壁で悩んでいる時間が減り、体力の消耗を防ぐことができます。
このオブザベーションは実際に体を動かしながらシュミレーションをしてみると、頭で考えているよりもイメージが作りやすくなります。しかし覚えるのも中々難しいので、初めはスタート位置からゴールの位置までの移動の流れを把握しておくだけでもよいでしょう。
なるべく少ない時間で楽にゴールが出来る様に考えると、ボルダリングはどんどん上達していきます。
5. レスト(手をシェイクして疲労を回復)する
腕がぱんぱんになりホールドを持つことが出来なくなることを「パンプ」と言いますが、そのパンプを回復させるための技術を「レスト」と言います。
掴みやすいホールドを片手でしっかりと掴んだら、もう片方の腕をだらんと下に下げて細かく振ります。こうすることでパンプを回復させますが、なかなか最初は片手だけでホールドを掴んでいるのは難しいものです。余裕があるときに試してみましょう。またこのレストは、ボルダリング中にチョークをつける動作にもつながります。
ホールディング
1. クリンプ(カチ持ち)
小さいホールドを指の先を使って持つ方法。カチっと指がかかるホールドを持つ事から”カチ持ち”とも呼ばれます。
指が開いた状態で持つと力が入りにくいので、指を立ててしっかりと固め、第一関節から先に力を集中させます。またこの時親指は人差し指の脇か第一関節の上を強く押さえるようにおくと安定します。
使える場面が多いホールディングですが、指への負担が大きいので使い過ぎには注意しましょう。
2. パーミング(スローパー)
丸くてのっぺりとした指をひっかけづらいホールド(スローパー)の持ち方です。安定しないので初心者の方は特に難しく感じると思います。
パーミングのポイントはまず持ちやすい場所を探すこと。手のひら全体の摩擦を利用して押さえ込むように持つのが安定するか、指先をかかりやすい場所で持つか、スローパーの形によっても持ちやすさが変わるので色々と探ってみると良いと思います。
また手だけではなく体勢も重要になってくるので、安定しやすい足場を探し体勢を作る事も大事です。
3. ポケット
穴が開いているホールドに指をかけてひっかける様に持つ方法です。多く指をかけた方がより安定感がましますが、一番多いポケットは指が2本入るものです。2本のタイプのものは人差し指を使うより薬指を使う方が安定しますが、薬指は故障しやすいので注意しましょう。
ポケットを使って体を持ち上げる時は手だけを使うのではなく、肩や背中の筋肉を使って引くようにすると力が入ります。
4. アンダー
手のひらを自分に向くようにして下から引き上げて持つホールドィングです。
アンダーホールドは腰のあたりで持つと安定するので、アンダーホールドを掴んだら足の位置をあげ、アンダーホールドが腰の位置にくるようにしましょう。
フットワーク
1. インサイドエッジ
最も多く使われる足の使い方で、親指側でフットホールドに立つ基本的なフットワークです。親指のあたりが一番力が入りやすく滑りにくいにので、そのあたりをフットホールドにおき、またカカトを上げると力がより入りやすくなります。
きちんとインサイドエッジができ足に体重を乗せることができると、腕の負担をぐんと減らすことができます。
2. アウトサイドエッジ
アウトサイドエッジは、親指以外の指でホールドに立つ方法です。アウトサイドエッジを使う場面ではその次の動作で体をひねることが多くなります。ですので力が入りやすいよう足の指でホールドを掴むよう意識しましょう。
3. スメアリング
スメアリングとはインサイドエッジやアウトサイドエッジを使って立つことのできない、スローパーのようなのっぺりとしたホールドに立つ方法です。シューズのソールをホールドに押し付け、摩擦力を利用して立ちます。そのためソールのたくさんの面積をホールドに押し付けると効果が大きく、またかかとを上げ押し付けるように足を置いてやると滑りにくくなります。