菊芋レシピのレビューと菊芋パウダーの作り方
旭川近郊では道路の脇や堤防沿いの道でキクイモが採れます。菊芋堀りは、初冬の、雪が降るか降らないか、くらいの時期のお楽しみです。
イヌリン豊富で糖尿病にも良い菊芋。どのように食べたら美味しいのか?もっともコスパよく利用するには?を考え、いくつかの料理と「菊芋パウダー」作りに挑戦しました。
菊芋は有名で、レシピもいっぱい
東京育ちの私は「菊芋」を初めて知りました。周辺の道民の友達も菊芋を知りませんでした。しかしいざ「菊芋 レシピ」で検索するとたくさんあり、おどろきました。商売用の菊芋農家さんもあり、花が鑑賞用に売られたり、流通量は多くないけど食物として生の菊芋が売られたり、最近ではスーパーフードとしてテレビにもよく出ていて、加工食品がサプリとして有名だそうです。
というのは、イヌリンという栄養素が、「天然のインスリン」と言われていて、食前に食べると、食後の血糖値の上昇を抑えられるということで、糖尿病患者に喜ばれているそうです。
そこで、取ってきた菊芋をいくつか料理してみました。
私が食べてみたレシピ1「味噌汁」
テレビでオススメされていたのも、味噌汁でした。皮に栄養がありそうだったので、タワシでよく洗い皮ごと5mmくらいのスライスにしました。
菊芋は火を通すと里芋のようにホックリした食感もあります。食べられなくはないけど、皮にゴボウ的なクセがあり健康目的な人なら続けられるかも知れないけれど、美味しさを目的に食べるには、私にはその「クセ」の食べ慣れなさが先に立ちました。
レシピにはあまりみなさん何も書いていないので、やはり幼い頃から食べている人はなんとも思わないのかも知れません。
私が食べてみたレシピ2「生のサラダ」
菊芋は、生で食べるとシャリシャリします。ヤーコン?というこれも一度山形の知人にもらって食べただけだけど、それに似ていたような記憶が。
味付けはごま油と塩とあらびきコショウです。最近ごま油をまぶす系のサラダって流行っていますよね。味は、まさにごま油の味になります。
クセはもろに感じますが、かえってこのように「全く別の食べ物」と思ったほうが食べやすいかも知れません。
私が食べてみたレシピ3「あまから煮」
これもクックパッドかなんかのレシピをもとに、友人が調理してくれたものです。
菊芋を素揚げして、砂糖・醤油・みりんなどで甘辛く煮詰めて、ごまを振る。あまからの味とゴマが先に立って、クセは隠されて食べやすいです。菊芋のクセを隠して甘辛を感じるための料理、っていう感じもします。
私が食べてみたレシピ4「素揚げポテト風」
これは、皮をかなり長いこと低温で揚げて、皮の存在感を消すことをイメージしました。
菊芋自体は揚げるとねっとりほっこり里芋系なのでおいしいっちゃおいしいです。
味付けは何でも良いのですが、クレイジーソルトにしました。わざわざ作って食べたいか?と聞かれると、答えはNOです。じゃがいもで作って食べたいからです。
私が食べてみたレシピ5「粕味噌漬け(かすみそづけ)」
じつは、実際に菊芋を教えてくれた人たちがススメてくれた料理は全部「漬けもの」でした。
梅酢漬けは、もともとの梅酢漬けに菊芋を加える、とか。そのなかでどんな理由だったか、塩分が高すぎないと言うことであったか、、、忘れましたが、酒粕と味噌を半々くらいで漬ける、というものを採用して作りました。
2年前のことです。実家に送るためには「調理済み、かつ保存食である」ことがベストだったからです。
酒粕も味噌も、スーパーで簡単に手に入りました。味噌と酒粕の風味の染み込んだ、シャリシャリとした漬物ができました。
美味しいか?と聞かれると、買ってまで食べないなあ、という感じ。実際、実家には2年以上たった今でも冷蔵庫の野菜室に残っており、もはや何故か名古屋名物の「守山漬け」の味に近いです。
糖尿病で歯も悪い父には漬物が食べづらいらしく、だったら意味ないじゃん、ということで漬物案は消えました。
私が食べてみたレシピ6「菊芋パウダー」
そこで、最終的にたどり着いたのがパウダーです。保存が効く、摂取が苦にならない、となるとやはりサプリメントタイプに加工できるのが良いと結論づけました。
「土の中に埋めておいて、食べるときに土から取り出す」ということができる保存に強い植物なので、もしかしてそういう食生活が定着したら一番良いのかも知れません。
しかし団地住まいの東京の実家では手間だろうと思い、加工して送ることにしました。でも今考えたら、ベランダのプランターに保存しておいてもらって、食べるときに掘り出す、ということも良かったかも知れません。
次に私が菊芋パウダーを作った経過を書きます。
菊芋の乾燥方法に試行錯誤
どうやって乾燥させるか?
パウダーにするにはまず乾かす必要があります。実は乾かすと栄養価が上がる食物はたくさんあって、フードドライヤーというものが意外と安く購入できます。
フードドライヤー、食品乾燥機、などで検索するとたくさん出てきて、美容やダイエット食、栄養たっぷりのローフードとして一部の人達の間ではもてはやされていることが、たくさんのメーカーが売り出していることがからもわかります。
一瞬「買っちゃう?」と思ったりしてしまいます。
次にみんなが考えることは、「フードドライヤーをDIYできないか?」ということだと思います。私もその流れに乗って検索すると、いくつかヒットしました。
- 百姓らぼ。さんの自作食品乾燥機(こちらはベニヤ&布団乾燥機)
- AGRI PICKさんのサイトより(こちらは100均グッズ&布団乾燥機)
なるほどなるほど。布団乾燥機なら我が家にもある。
それに、ベニヤでできるならダンボールで行けるんでは?ダンボールの燻製もやったりするし。
ということで、「ダンボール &布団乾燥機 &家にあるザル」 で作ることにしました。
切り方
既成のフードドライヤーだと、食品は基本的にスライスして、チップスのようになっています。
しかし我が家には良いスライサーがありませんでした。あるにはあるが、小さい菊芋を扱うには、指をスリそうで怖い。それに「乾かすなら細かいほうが、四方八方から乾いて良くない?どうせパウダーにするんだから、良いべさ!」と思い、千切りタイプのものを使うことにしました。
失敗。自作フードドライヤー
ここの項目は、結局、しっぱいだったので、簡単に書きます。なぜあきらめたのか、がもし参考になればうれしいです。
ダンボールを縦に2つつなげて、下の方に熱風を送り込む穴を開けました。以前テレビで見たのですが、洗濯物の場合も同様なのですが「乾く」のに大切なのは、「熱」よりも「風」だそうです。
なので、ダンボールの上部には、ちょっとスキマを開けるなりして入った分の空気が流れて出ていくようにしました。下から入れた熱風が、野菜を通過して上から出ていく。なんかうまくいきそうじゃないですか。
あと、布団乾燥機は空気をある程度逃さないと、たぶん壊れます。
まず、ホースが熱で変形します。以前「少しの熱も逃がすもんか」と思って、なにかでグルグルに覆って靴を乾かしたときに、熱で中敷きやゴム部分が全部小さくなってしまったことがあります。それだけ高温になるわけですから、高熱が溜まりすぎることは機械には悪影響だと思われます。
細かめの千切りにされた菊芋をザルに入れ、重ねていきます。適度にザルの場所を入れ替えたりすれば乾くのでは、と考えました。
実際に、底の部分は何度になっているでしょうか。温度計を見ると、43℃を指していました。市販のあるフードドライヤーは35℃~70℃の設定ができるようになっていると説明がありました。43℃あれば、いい感じなんじゃないでしょうか。
失敗というか、作戦変更
失敗というよりは、作戦を変更したと言ったほうがよいかも知れません。
実はこの時期、北海道の我が家では電気代が異様に高く、ホカホカとただ温まっているだけのように見えた菊芋を見て「ダラダラとやっていては電気代がかかるでは?」と気づいたのです。
逆に、湿度は低いのだから自然乾燥じゃだめなんだろうか?…っていうか、なぜみんな、自然乾燥をしないで機械で乾かそうとするのだろうか?なぞが深まってしまいました。
おや?この形、何かに似てる。あ!切り干し大根だ。切り干し大根て、みんな機械で乾かすんだろうか?いや、きっと天日だ。北海道はもう11月。日も薄暗いし、雪が降るから天日はできない。
いや、しかし。鮭とばづくりを思い出そう。あれも、冬に作ったじゃないか。あれも、日光には当てていない。考えてみれば、冬の湿度が低いのを利用して乾燥させる食べ物は多いのではないだろうか。干し柿みたいに。。。
このような思考の変化をたどって、室内で広げて乾燥させる、という作戦にたどり着きました。
菊芋パウダーの作り方、手順
ここからは、実際に作った手順をまとめて書いていきます。
洗って土を落とす
菊芋はボコボコしてて土が入り込んでいます。ぬるま湯に浸して土を柔らかくしたあと、タワシを使って土を落とし、スキマが密着してどうしても土が取れないところは、包丁で切り落としました。
洗い終わった、正味2キロの菊芋をパウダーにしていきます。写真では1749gとなっていますが、これ以上乗せるとエラー値が出てしまったので別に250グラムの菊芋を追加して2キロにしています。
千切り器で千切りにしていく
この千切り器は、沖縄料理のにんじんシリシリを作るために買ったものです。
この段階でのポイントは、小さな菊芋を扱う際に、指を一緒に切ることが心配されますが、そのときにニトリル手袋(上の写真の水色のゴムの手袋)が役立ったことです。
一瞬ゴムが刃の部分に食い込むことはあるのですが、グニっとなるだけで切れませんでした。皮膚だったら危なかったな~と思いました。
紙に広げて干す
ダンボール製の自作フードドライヤーをあきらめた私は、梱包材として荷物によく入っている大きな紙を持ってきて、菊芋を広げました。
湿度は45%だったのでもしかして放っておいても良かったのかも知れませんが、念の為、扇風機を取り出してきて一晩風を当てることにしました。
「風を当てる」というのは、食物を乾かす際によく使う方法のようです。というのは、鮭とばを作る際も、まず扇風機で風を当てて表面だけ乾かしてしまいます。すると、カビが付くのを防げるそうです。
もちろん身は分厚いので、その後1ヶ月掛けてじっくり水分をぬていきます。昆布を乾かす際も、やはり同じやり方を教わりました。
あと、終わったあとに知ったことですが、この際広げるものはカレンダーの裏とかの要らない大きな紙でも良いのですが、クッキングシートだとくっつかないで便利、というのを何かで知りました。実際、梱包用のわら半紙的なものだとくっついていましたので、手でコロコロして剥がすようにしました。まあ、それでも特に問題はありませんでした。
乾燥する過程
12月5日 2000g からスタート
12月6日 455g
2時間の自作フードドライヤーと24時間当てた扇風機のおかげで、一気に重量を減らしました。
12月19日 414g
前回の計量から約2週間経ちましたが、重量の減りは軽微です。もう完成と言って良いでしょう。
12月20日 409g(完成品)
完全にカサカサに乾燥したので、マジックブレッドの刃をミルサーに替えて、粉砕しました。乾いているのですぐに細かくなりました。
ザルにこしたところ、砂粒のように大きいものも残っちゃいました。何回かミルサーを掛けても多少は残ってしまいましたが、もったいないので混ぜ込んでしまいました。
(前日との重量の差は、器にくっついた分とか、ほとんど誤差だと思います)
まとめと補足
コスパはいかに
結局、2キロの菊芋は400gのパウダーになりました。これはコスパ的にどうなんでしょうか。
通販で検索すると、100gで1000円くらいが相場な気がします。
オーガニックだともうちょっと高いですね。使った菊芋は、特に肥料もやっていないところに生えていたので、化学肥料を使っていないという意味で「オーガニック菊芋」ということで良いんでしょうか。
ついでに商品をいろいろ見比べてみますと、菊芋によってイヌリンの含有量が違う、というようなことがうたわれています。「ウチの菊芋はイヌリンの含有量が豊富で、100gに36g含んでいる」などと、上記のオーガニック製品では説明があります。私が取った菊芋はどうなんでしょうか。
でも、拾った菊芋で4000円分の菊芋パウダーが作れたということです。売られているものよりもかなり粒子は粗そうですが、それ以外ではそんなに品質は変わらないのではないでしょうか。ただ干して砕いただけなので。多少手間はかかりますが、菊芋がタダで手に入るならコスパは良いと思われます。
糖尿病の父親の反応
父親に「菊芋パウダーを送ろうか?」と聞いた時、とても喜んでいました。父親の糖尿病の程度はおそらく軽めの部類で、2ヶ月に1回病院に行って診療と薬代で12,000円で済む程度です。でも現在、菊芋タブレットを常飲している、というのです。
聞いてみると、薬を継続的に飲んでいると便秘がちになるそうで、水溶性食物繊維であるイヌリンを含む菊芋タブレットによって便秘がかなり改善されるそうなのです。
それなら良かったね、今後は買わなくてすむね、と言って電話を切りました。
しかし2ヶ月後電話をしてみると、なんとお手製の菊芋パウダーを飲んでいない、というのです。
理由を聞くと、買っていた市販の菊芋タブレットがまだ残っていたから、と答えました。「イヤイヤ、市販のものの方が多少日持ちするでしょう、手作りのを先に飲んでよ」と思いましたが、本音ではタブレットの方が手軽で飲みやすい、ということのようです。
確かに私が完成品を飲んだときも、粒子が口の中にザラつくというか、そして菊芋の味が口いっぱいに広がって土っぽい味がするというか、そんな印象を受けました。しかも粒子が大きいものは、砂のように固い。
しかし菊芋400gといえば、一日に5g飲んでも80日分。節約と思って頑張って飲んでもらうしかありません。申し訳ないけど錠剤にすることはむりです。
もしかして紫フランスキクイモ?
パウダーだけでなく、菊芋茶、菊芋チップスなど商品の多さを見ると、熊本や岡山、島根など、本州のほうが菊芋利用の歴史は断然長いようです。
「菊芋茶はおいしい」、「パウダーはお米と炊いてもおいしい」というレビューもたくさんあります。想像がつきません。いつか美味しい菊芋の商品を味わって、どれほど違うのか比べてみたいものです。
と、ここまで書いて、拭い切れなかった疑問に立ち返りました。もしかして、私が使った菊芋って、種類が違うのかも。ネット検索しているうちに、「紫フランスキクイモ」なるものにヒットしました。
なぜ疑問だったかというと、レビューに「クセがない」とか書いてあるのが、どうも納得いかなかったんですよね。
けっこうクセあります。お米に入れて炊くとか、ちょっと「え~!」って感じです。私が食べ慣れていないからだろうか?と思ったけれど、これらのサイト見ると、白と紫があって、味もちょっと異なると書いてあります。たしかに私がとったキクイモは赤っぽいのです。
上記のフランスキクイモの産地は同じく寒冷地の山形ですし、旭川近郊の路地に生えているものは、どうなんでしょうか。
もしフランスキクイモだとすると、一般的な白い菊芋よりも栄養価が高いらしく、高価になり、120gで2000円を超えて発売されている商品もあります。そうだったらうれしいです。
北海道では2013年に「北海道キクイモ研究会」なるものが設立され、商品化に力を入れていこうと活動しているようです。いつか正解が知りたいものです。
まなび
終わってから気づいたことですが、もし身近に切り干し大根を作ったり野菜を干したりという保存食を作るおばあちゃんとかと暮らしていたら、ダンボールの装置を作るとかの紆余曲折尾を経ずに、当たり前のように並べて干したかも知れません。
私が頼りにするものはYou Tubeやブログということになってしまいますが、きっと生身の経験者に聞くことが一番良いでしょう。あらためて年配の方の経験の貴重さを感じた菊芋パウダーづくりでした。