赤ちゃんと子供と登山。三方山・トレッキングシューズで本格下り②
登り始めて2時間20分。頂上までのコースタイムは1時間10分なのにまだ着かない。あきめて広い尾根上で休憩してから再び頂上へ向かいました。頂上の大展望も良かったですが、下山では歩きにくい道をタッタカとリズミカルに下ることができトレッキングシューズのすばらしさを実感しました。
広い尾根でお昼休憩をとる
14:20。
いい加減時間も経ったので、休憩をすることにした。頂上まではもう少し掛かりそうだ。
尾根は広く人通りも全然ないので道の真中に広げた。休憩と言っても私達は毎回ほとんどくつろぐことなんて出来ない。マットを急いで敷くと、2人にウィンドブレーカーを着せ、ゴハンを与える。カエデちゃんの食欲はいつだって凄まじく、冷えた離乳食もモリモリ食べるからありがたい。「もっとよこせ」「早く口に運べ」と言わんばかりに乗りかかってきて、器の中に口を入れたりする。
サクチャンも普段の食事は全然集中して食べることが出来ず、歩きまわって遊びに行ったり何時間もかけて食べたりしているが、山での休憩の時はさすがにお腹が減っているのか、おいしいのか、真剣に食べる。てのひらで壊れてしまったオニギリを落とさないように上手に食べていた。
カエデちゃんは現在9ヶ月。なんでも口に入れたがる時期だ。この時も地面の小石を手でシャーシャーとかき混ぜた後、石を口に入れていた。いっぱい入れるのではなく、一個入れてアメのように舐める感じだ。
14:45、25分間の休憩の後、出発。とっとと行こう。せめてすぐ先にある三方山の頂上までなら、まだ向かってもいいだろう。
三方山頂上と濃尾平野
15:05、休憩から20分後に頂上についた。突然の大展望でびっくり。
ひろーく広がる濃尾平野。木曽三川のすごさを感じる。確かに社会科の授業で大きな平野だとは習ったけども。ここまでとは、驚きだ。遠くには名古屋駅周辺の高い建物も見える。
調べてみると、濃尾平野って川が山を削って平らにしたわけではなくて、元々は海だった所に川の上流から運ばれてきた土砂がたまって平野になったんだって。海をも埋めるって、めちゃくちゃ壮大な話ですね。あと、この養老山地。平野から急にこんもりしているのがなんか珍しいと不思議に思っていたら、どうやらこれは断層で盛り上がって出来た山ということがわかった。ここも約200万年前は平野で、その後東側(平野側)が徐々に盛り上がって山になった。
例えばイメージするならこういうのはどうだろうか。目の前でげんこつを両手で作り指と指ををくっつけるように力を入れてみて欲しい。そのかかり続けた力を逃がすように、徐々に左手のげんこつが上に、右手のげんこつが下にずれていく。こうやって出来た段差の左手が養老山地で、右手が濃尾平野だ。ウィキペディアによるとこれは100万年前から始まったと考えられ、今も続いており、一年間に0.5~1mmくらい平野が下がっていっているらしい。なるほどー。簡単に書いてしまって恐縮だが、地学って本当に奥深い。山に登る時、それが土地の隆起で出来た山か、噴火で出来た山か、どうしてこんなに尖っているのか、なぜあそこだけ盛り上がっているのかなど、そういったことを知って登るのはとても楽しいことだ。私もたくさん勉強したわけではないけど知っている本の中から良かったものを改めて別のページで紹介したいと思う。
とっとと降りる予定だったけど、せっかくのいい景色をゆっくり眺めて、写真撮って、もう一回おやつを食べたりなんだかんだとしていたら40分も経っていた。
下山開始
15:45。おー!まずい!下山を開始しよう。
丸太の段差はこんな感じで降りた。
サクチャンを山側に、手を繋いで。道が広いからまだ下りやすい。でも次第に道上の砕石が増えてきたのでトレッキングポールを出す。サクチャンの方は一番短くして、私の方はやや長めに持って。サクちゃんが上手に使えているのかわからないが、「持ったほうがいい」と言う。
下りで勢いが止まらない時なんか、トレッキングポールは大活躍。
「とまらなーい!」と叫びながらサクちゃんは駆けっていく。テンションも上がってきて笑いも止まらない。気をつけないと。
手が抜けないために
山で手をつなぐ時に、一応気をつけている事がある。それは、手を抜かないように、ということだ。
サクちゃんが2歳2ヶ月の時、手が抜けたことがある。具体的には肘が外れたのだ。それはどういう状況だったかというと階段を勝手に下っていこうとするサクチャンを私が手首を引っ張って数段持ち上げた時のことだ。普段メソメソとは泣かないサクちゃんが車の後ろで「いたいーいたいー」と片手を抱えるようにして小さい声で泣いている。これは思い通りにならなかったからではなくなにか関節がおかしいのだと直感し、すぐに整形外科へ連れて行った。看護師さんが「このシールあげるよー」と、痛い腕の方角からシールを差し出してもそっちの腕では取ろうとせず、遠い方の腕を使った。そのチェックが終わった後順番が来て、先生は遠くを見ながら、まるで雑巾を絞るように肘をムニムニっとひねった。痛そうではなかった。「治ったと思いますよ」一度はそう言われて、廊下で再びシール渡しのチェックをするがサクチャンの様子は変わらずシールも取ろうとしない。そこでまた診察室に入り、先生が同じようにひねる。「あ、今入りましたね、音がしました」と言うので、また廊下へ行きシールのチェックをすると、何事もなかったかのように痛かった腕を使ってシールを看護師さんから奪い取った。あぁ、こんなにあからさまに違いが出るものなのか、と驚いたものだ。しかし一度抜けてしまった肘は癖になりやすいという。ちょっと憂鬱になった。私にあのムニムニのワザが使えればいいのに。
ここで伝えたかったのは、この時にお医者さんが教えてくれた2点が役に立つかと思ったからだ。
一つ目は、「力が効いていれば、抜けない」ということだ。子供本人が 親指にしっかり力を入れて握っているならば抜けることは無いというのだ。子供の腕に一切力が入っていないのに親が引っ張ると子供の体重がかかって簡単に抜けてしまう。だから子供自身の力でぶら下がっている状態なら大丈夫だ、ということだ。たしかに納得できた。大人でも自分で鉄棒にぶら下がる時は抜けないんだから。
二つ目は、「急に引っ張る時は二の腕がいい」ということだ。先生曰く、肩は引っ張ってもあまり抜けない。だから自動車が来て急に引っ張らないといけない時や駄々をこねるから引っ張って連れて行かなきゃいけない時なんかは二の腕を引っ張るといい、という。
そんなことで、下山の時は大原則でサクチャン自身の足でしっかり下り、私は手を貸してサクチャンの力で掴まってもらう、ということを心がけている。
無事到着
16:45、入山した時に渡った川に無事着いた。
行動時間、4時間45分。
歩行時間、3時間40分、休憩時間1時間5分。(コースタイム1時間55分)
722mに登頂。
標高差472m。思えば標高差、結構すごいなー
それにしても、コースタイム2時間弱のところを5時間かかる、というのはなかなか子連れ登山ならではですなー。次回以降の計画で覚えておこう。
下りはコースタイム45分のところ、 ちょうど60分で下ってきた。大人でさえ下りにくい浮石の道をこの時間で下れるとは、上々である。やはり足首まであるハイカットで靴底もしっかりしているトレッキングシューズではこういうところで差が出るのだろう。今回はトレッキングシューズ二回目にして本格的な下りを経験出来たことが一番の収穫であった。まぁどうせ暑い名古屋に子供2人と居たところで、どうせできることも限られているんだ。収穫なんて無くてもいいんだけども。
ザックのベストなサイズは
また、初めて使ってみたドイターのフューチュラ28の使い勝手もとても良いことが確認できた。チャックが大きく開いて中が見えやすのでお菓子やらオムツやらマットやらの出し入れがすぐにパッと出来てその辺は期待通りだ。ただ、ロゴの裏にあるポケットがもっと大きかったらよかったなぁと思う。まぁ財布と携帯とポケットティッシュくらいは入るんだけども。さらに、全体的にもっと大きかったらもっといいかも、とも思うんだけど、考えてみれば子供の荷物ってすごく変わるから、 常にベストも難しい。
というのも、サクちゃんは2歳半頃からオムツは使わなくなり3歳では完全に普通のパンツで過ごすようになった。それだけで、オムツ3―4枚とおしりふきティッシュが減るだけで荷物のカサはけっこう減る。それ以前にストローではなくコップやペットボトルで飲み物が飲めるようになってからは、マグマグを持って行かなくても出先でペットボトルのお茶を買って飲んだりも出来るようになった。
食べられるおやつも増えたので、ボーロや赤ちゃんせんべいなどをタッパーに入れていつもカバンにストックしておく必要も無くなった。離乳食やオニギリを作って持ち運ぶ手間も無くなった。それに、やがて自分の荷物は少しづつ自分のリュックに背負うようになれば、私の荷物は更に減る。
そう考えると、背負子におんぶされ、オムツをして離乳食とマグマグが必要で、且つ、体重も10kgと重くなってきた9ヶ月になるカエデちゃんは、今が最もお荷物な時期なんだ。この状態で背負われて山に行くのはいったい何歳までなのだ。きちんと歩ける時まで、と思うなら2歳半までか。
思い起こせば、サクちゃんが最後にキッドコンフォートに乗って登山をしたのは1歳4ヶ月の時、9月の八ヶ岳だ。その後秋冬が過ぎ、1歳10ヶ月になった3月に背負われてカナダでスノーシューをした。その後は私の妊娠と出産で山には行っておらず、その間にいつの間にかいろいろ食べれるようになり、しっかり歩き、オムツも外れた。そして3歳なりたてで、四国の剣山で2時間弱のミニ登山という形で山が復活したのであった。子どもとは変化につぐ変化である。
キッドコンフォートⅡ本体は3kgで、本体を入れて22kgまでが耐荷重だという。すると子供本体と洋服入れて18kgまではいける。現在10kgなのでまだ猶予があるようだ。しかし老いていくキタオくんの体力という問題もある。
いやいや、こうやって考えると、ザックの容量がいくつならベストなのかという話を飛び越えて何もかもが予測がつかない。みんなで山に登れる時期ってもしかしたら意外と短いのかもしれない。
だったらまぁ、ヒマな週末になんの目的が無くとも山に行っておくのはとりあえずいいことなのかもしれない。
養老の滝
駐車場に戻ると受付のおじいさんはとっくにいなくなり、楽しみだった売店も全部閉まっていた。しかし濃尾平野には夕日が差し、とても明るくて綺麗だった。
「ここからの景色で充分なんじゃないか」瞬間的にそう思った。
ここは250m、三方山の頂上は722m。472m登って見た景色とどれほど違っているのか、よく思いだせなかった。それくらいキレイに見えた。現に、この景色や滝を見るために麓からここまでのリフトがあるくらいだ。
売店で地元の物を食べることを諦めた私達は養老の滝を見に行くことにした。雰囲気的に滝壺はけっこう下まで下っていかなければいけなさそうだったのでややめんどくさかったが、あまりに有名な滝だということが足を運ばせた。だって高速道路のサービスエリアの名前にもなってたし。
サクちゃんは山よりも遥かに楽しそうな表情で滝壺の中の石を拾ったり水に入れたりしていた。カエデちゃんも足を水に入れてとても楽しそうだった。やはり子供は水が好きらしい。こんな大きな滝は初めて見たと思うけど、山の上からこんなに大量の水がおっこってくる、という不思議な自然の景観に対してはなんとも思っていないようだった