テイルピースをアルミに、スタッドを鉄に。 ~レスポール改造物語~
「アルミのテイルピースとスチールのスタッドの組み合わせが最高に良い、ビンテージの音に近づくぜ、サスティーンもいいぜ」という様な記事をどこかの外人さんのサイトで読み、挑戦することにした。
しかし結果は散々で、できれば無かった事にしたいくらいだけれど、未来の自分が同じ過ちを犯さないために、そしてこの経験が誰かの役に立つと期待して記録しておこうと思います。
ゴトーのアルミテイルピース「GE101A」
アルミのテイルピースはGOTOHの「GE101A」。値段も安く、レスポールを改造している人からの評判も良かったので選んだ。本当は、「Tonepros」というメーカーのテイルピースを試してみたかった、というか、なんとなく気に入ってしまったメーカーだったのでそれを使いたかったけど、高かったのでやめた。
それにトーンプロスのテイルピースはロック式になっている。スタッドはトーンプロスのロック式にしようと思っていたので、ロック×2になるのもおかしな気がした。
テイルピースの形状の違い
アルミの方が断然軽いのは間違いないことだけれど、デザインもゴトーのテイルピースの方がギブソンに比べて細くすっきりしている。レスポールに装着して見比べた時、ゴトーの方がかっこいいなと僕は思う。
横からみるとこんな感じに。これだけテイルピースの幅が違うから「弦を張った時に弦の角度や距離が変わってしまい問題があるのでは」と海外のサイトで書いている人がいたがどうなんだろうか。僕には違いがわからなかった。
ちなみにゴトーのアルミテイルピースで「GE101A-T」という「T」がついたモデルがあるけれど、それはスタッドのトップの形状の違いの様だ。丸みを帯びているらしい。
スタッドのピッチの違い
スタッドの長さもかなり違うし、またテイルピースをひっかける箇所の径も違う。上で書いた事と同じ様に、この太さが異なるとテイルピースの距離感も変わってくるだろうとは思う。
それと、何よりも違うのはネジのピッチ。ネジ径は同じだけれど、ピッチが違うのでギブソンオリジナルのアンカーに使用することができない。もちろん、ゴトーのスタッドを使用する予定はなかったので問題はないのだけれど、商品が届くまでネジのピッチについて考えることなんて全くなかった。これが原因で後の作業が大変なことに。
アンカーの径の違い
ゴトーとトーンプロスのアンカーはほぼ同じ様な形状だけれど、ギブソンのオリジナルだけは全く違う。
と言う訳で、ギブソン以外のアンカーは使用できないことになるけれど、僕はアンカーの太さについて全く考えていなかった。そしてこのこともあり、後の作業がえらいことになった。
スタッド・アンカーサイズ表
スタッド経 | スタッド長さ | アンカー経 | アンカー長さ | |
---|---|---|---|---|
ギブソン | 7.85mm | 22.25mm | 13mm | 22.2mm |
ゴトー | 7.85mm | 19mm | 11.3mm | 25mm |
トーンプロス | 上と同じ | 21.7mm | 11.25mm | 25mm |
表のサイズは自分がノギスを使って測ったものですが、トーンプロスのスタッドだけは既にセッティング済みなので測っていません。ギブソンのアンカーにあうのでスタッドの径もピッチも同じと考えています(後に追加します)。長さに関してははトーンプロスのサイトの情報からです。※スタッドの長さはネジ部分、首下の長さです。
ToneProsのロッキング・スタッド(鉄)
ebayで購入したトーンプロスのスタッド。ToneProsのサイトから購入することも出来たけれど、ebayの送料が安くて選んだ。楽器屋から購入したので間違いはないと思うし、こんな物の偽物を作る人はまあいないだろうと思う。
素材はビンテージスチールということで磁石を近づけるとちゃんとくっつく。もちろん他のものはそうは行かない。ちなみにどのアンカーにも磁石はつく。
このロッキングスタッドはトップの部分がネジで取り外せる様になっていて、それでテイルピースを固定してしまおうと言うもの。複雑な作りなので物としてはかっこいい。さて、スタッドの素材は鉄が良いと多くの人が言っていたけれど効果はいかに。
アンカーをひっこ抜く、大失敗
そしてついにアンカーをひっこ抜く作業に突入。いくつかのサイトで紹介されていた、ボルトを使って抜く方法に挑戦。使用したものは
- 5/16 ボルト(インチサイズ)
- ワッシャー
- ストラップの革の部分(ボディの保護に)
- マッキーの蓋にドリルで穴を空けたもの
そして大変なことになった。スタッドのところにも書いたけれど、ボルトのピッチとアンカーのピッチが合っていなかったのだ。それはボルトを回し始めてすぐにわかったので引き返すこともできた。 でも僕はもう、アンカーを引っこ抜きたい強い衝動にかられていて、そして強引にねじ込むことに決めた。ピッチが合わないボルトをアンカーに力づくでねじ込んで行く。ものすごいパワーが必要だった。
そして無事にアンカーを抜くことは出来たけれど、問題は抜いたアンカーをボルトから抜くことができなかったことだ。ペンチを使ったりしたり、どれだけがんばってもボルトにしっかりと絡まったアンカーを回すことができない。そしてしまいにはアンカーはぼろぼろになった。僕の頭の悪さにただ驚くばかりだった。
前に進もう、と言うことで2個めに挑戦。しかしせっかく用意したマッキーの蓋もダメになってしまったために違う作戦を実行。
僕は前々からある疑問を持っていた。「なぜみんなボルトを使うのだろうか。スタッドで回しちゃえばいいんじゃないだろうか」と。ということで、スタッドのサイズにぴったりのペットボトルの蓋を使い、スタッドをボルト代わりにしてアンカーを抜くことにした。
すると驚くくらいあっさりとアンカーは抜けた。すごくなめらかに、ほとんど力を入れずにスタッドを回しアンカーを抜くことができた。なのでスタッドにもアンカーにもダメージはないだろう。はじめからこうすれば良かったのだ。
アンカーのサイズ合わず、ギブソン買い直す
そしてウキウキしながらトーンプロスのスタッド・アンカーを穴に入れてみた。すると、なんということでしょう。驚いたことにものすごくスッカスカだった。
信じられないことだけれど、僕はこの瞬間まで、アンカーの太さが違うことを全くもって気づかなかったのだ。アンカーを抜くという作業に心を奪われすぎて盲目になっていた事はある。でもこれくらいの事は測らなくても見てわかるはずだろう。僕は完全にアホだ。困った。
抜いたアンカーは戻せばいい。それだけのことではある。けれど僕の場合、1つのアンカーがどうしてもボルトからとる事ができないのだ。なので諦めて同じサイズのアンカーを買い求めるしかない。
アンカーの候補にはMontreux(モントルー)の物があったけれど、もうこの時点でやる気や攻める気持ちは完全になくなっていた。またピッチが合わないとか、そんな問題が出てきたらもう僕は耐えられない。なのでギブソンオリジナルの物を選んだ。
僕は何をやっているんだろうか。使用しないスタッドが6つ、テイルピースが2つ。いらない物がどんどん増えてゆく。
こうしてやっと、アンカーはギブソンの新品に生まれ変わり、スタッドはトーンプロスに交換することができた。
しかしここにはまた微妙な問題があった。スタッドとアンカーの構造上の違いで、スタッドとアンカーの間にどうしても隙間ができてしまうのだ。なのでテイルピースを一番下げて使用したい人は少し気になるかも知れない。僕はテイルピースを多少上げているので問題はないんだけれど。
※上の写真ではアンカーの上下が逆だと思います(撮影のために適当にやってしまったので)。上下が逆でなかったとしても、アンカーとスタッドの間にはわずかな隙間ができてしまいます。
結果。セッティング狂い大惨事
さて、テイルピースはアルミに変わり、それは鉄製のロッキングスタッドでがっちりと固定された。音はどう変わったのだろうか。正直わからない。なんと言うのだろうか、テイルピースとスタッドの交換に着手してからなんやかやで時間が経ち微妙な音の変化に気づく事ができないのかも知れないし、何も変わっていないのかも知れない。それより何よりも、3弦4弦のサスティーンが微妙な感じになってしてしまい、それが気になり音の比較どころではなくなってしまったのだ。
とりあえず交換したスタッドやテイルピース、また前回交換したペグすらも戻した。しかしそれでもサスティーンは回復せず。たぶん、テイルピースを交換の際にブリッジの高さを変えたのが原因だと思われる。けれど、それらのバランスをいくら調節しなおても良くならない。
ナットファイルでサドルとナットの溝を調節
もう何をしても回復しないので、ナットファイルでブリッジのサドルとナットの溝を調整することに。楽器店に持って行った方が早いし原因もわかるだろうけど、まずは己が行けるところまで行こうと思った。
サドルとナットの溝をナットファイルでなんとなく整え、コンパウンドで軽く磨いて引っ掛かりを減らそうと思った。音の症状は「なんか詰まっている」という、気持よく弦が振動していない感じだった。なので原因はサドルかナットかと考えたけれど、手を加えても効果はない。しかしブリッジの別の場所に溝を切り、そこに弦を乗せると音の伸びは良くなった。けれど弦の間隔が離れてしまうので気持ちが悪い。
恐らく、音の詰まっている原因はサドルだろうと思う。溝が深すぎるかもしれないし、ブリッジが若干曲がっているのも原因しているかも知れない。
とりあえずサドルを交換してみる価値はありそうだ、ということで海外の「スチュワートマクドナルド(でいいのかな?)」で、安い交換用のサドルを購入した。もう、しばらくはギターを弄りたくないのでまだ使用していない。サイズはギブソンのオリジナルと若干違った様な気がするけれど合うのだろうか。そのうち試してみようと思う。
弦を張ったままテイルピースとブリッジの高さを調節するのはストレスがたまる。それに無理やりスタッドなんかを回しているとボディにキズをつけてしまう。というかすでに2箇所打痕をつけてしまって泣いている。
というわけで、テイルピースとブリッジを調節するマシーンとカード式のゲージ(ミリ)も購入した。高いくせに笑える様なシンプルな道具だけれど、あると無いとでは世界が違うのだ。
レスポール改造・まとめ
「労多くして功少なし」というのが今回のレスポール改造の結果に適したフレーズだと思う。というより、功が少ないよりもマイナスかも知れない。金も時間も使ったしギターも傷つけセッティングもおかしくなった。音の違いはわからない。
まあそれでも道具と経験と知識は残ったし、「やりたいことをやった」結果だから良しとしている。後悔はしているけれど。
そして、未だに音の感じには納得はいっていない。やはりブリッジ、サドル辺りが原因だろうと思う。まずはサドルを変えてみて、次にブリッジを変えてみて、そしてそれでもだめなら諦めて楽器屋に持って行こう。