オーディオテクニカのヘッドフォンの修理とリケーブルに挑戦
オーディオテクニカのヘッドフォンの右から音が聴こえなくなったので、修理とリケーブルをやってみました。購入したもの、費用、手順などを書いています。参考になれば幸いです。
プロローグ「リケーブルを決意」
おおよそ20年は使って来たオーディオテクニカのヘッドフォンが壊れた。プラグの付け根辺りの断線か、音がでたりでなかったり繰り返し、ついには片一方から全く聴こえなくなった。
壊れたのは初めてではない。7年前にもケーブルやパッドの修理をしてもらっているし、15年過ぎた辺りからはプラスチックが劣化し破損。数カ所を接着剤でくっつけている状態だった。
既に新しいヘッドフォンは持っていたので、このまま、今までありがとう、ということでお陀仏させてしまえばよかったのだけれど、せっかくここまで生きたのなら、どこまで行けるのかみてみたくなった。延命させようと思った。
そしてこのザマである。 1000円のはんだこて一本で接続を試みたが無理だった。
はんだをつけようとすると小さなプラグは逃げてしまうし、失敗したハンダを吸い取ることもできない。こて台の代わりに木の板の上に置いていたのでコテ先には焦げが付着。
しまいには変なところにハンダがつき、プラグを差し込むこともできない。
そしていざ差し込めても音は聴こえてこない。
もう諦めてヘッドフォンを捨ててしまおうかと思った。でもくやしかった。俺はこのまま負けて逃げていいのか。この先の人生、電子機器のケーブルが断線をする度にそれらを捨てていのか。真空管アンプキットとか、組み立てられなくていいのか。電気系は弱いから~、とか言って逃げたままでいいのか。
そして覚悟を決めた。
金を使い、万全な装備でもう一度挑むのだ。ヘッドフォンのケーブルも古いからまるっきり取り替えてしまおう。リケーブルをするのだ!
買った道具と合計金額
万力・ベンチバイス
プラグを固定するために購入。
複数のアームとクリップで固定するタイプと悩んだが、ベンチバイスをもっていないので今後に役立つと踏んだ。作業中、アームタイプにすべきだったかと少し後悔。
機能的には問題なし。プラグしか挟んでないけれど。
ハンダこて&こて台
アマゾンで人気があった商品をチョイス。
今まで木の板にハンダこてを置いていたので、こて台がいかに便利かと学んだ。この二つがそろうとかっこよくて、なんかの技術者みたいになった気分で、やたらはんだ付けをしたくなる。
評判の良いこて先も試しに買ってみた。使った感じは、というかまだまだハンダ経験が浅すぎるため、良し悪しの判別はできない。
なくさない様に磁石につけている。
音響用はんだ、はんだ吸取り線、結束バンド
結束バンドはヘッドフォン内部で使われていたので購入。
グルーガン
スタンドがあり、なおかつグルースティック付属のものを購入。いくつも選択肢があったけれど、黄色がかわいいのでは、と思い購入。問題なし。
ケーブル、プラグ
こちらは全てオヤイデ電気オンラインショップから購入したもの。色々と丁寧で嬉しい。
■内部配線財 3398-22 オーディオ機器用内部配線材
白いケーブルはヘッドフォンのLとRをつなぐケーブルとして購入。何を買っていいのかさっぱりわからなかったので「内部配線材」と書いてあったものを選んだ。
■ケーブル 銀メッキOFC 0.08SQ
青黒赤のケーブルはヘッドフォンからプラグまでのケーブルで、これまた何を選んだらよいかわからなかったが、評価が良かったので買ってみた。
■プラグ P-3.5G(穴径6.0mm)
なぜこのプラグを選んだのか忘れたが、高からず安からず、という感じだったに違いない。
■プラグ アンフェノール製KS3PC-AU
再び失敗してしまうことを恐れて予備として購入。ブーツつきで安かった。
■ブーツ アンフェノール製 カラーブーツミニ 穴径6mm用
コードが折れ曲がらないと期待して。
絶縁テープ
ビニールタイプも考えたけれど、布タイプの方がべたべたもなく扱いやすいとあった。手で切れるので便利だが、端っこからほつれていくのがちょっと嫌です。
収縮チューブ
収縮チューブは購入予定にはなかったが必要になり追加購入した。
調べると「スミチューブ」が人気あり欲しかったが、オヤイデから買うと送料がかかるのでアマゾンから類似品を選んだ。
のちに詳しく書くが、この収縮チューブは自分には使えなかった。
スミチューブV
アマゾンから買ったオーム電機のチューブが使えなかったので、なくなくオヤイデから注文することになった。送料がかかってしまった、とてもくやしい。
合計金額
万力 回転式 ベンチバイス | ¥ 1,980 |
白光 / はんだこて FX600A No.Y163 | ¥ 4,054 |
白光 / こて台 633-01 | ¥ 1,680 |
白光 / こて先 2C型 T18-C2 | ¥ 478 |
Oyaide / SS-47 音響専用ハンダ:1M | ¥ 350 |
goot / はんだ吸取り線 CP-3015 | ¥ 348 |
TRUSCO / ナイロン結束バンド | ¥ 218 |
Anesty / グルーガン | ¥ 1,680 |
3398-22 オーディオ機器用内部配線材 | ¥ 352 |
銀メッキOFC 0.08SQ | ¥ 1,980 |
P-3.5G(穴径6.0mm) | ¥ 704 |
アンフェノール製 ブーツミニ 穴径6mm用 | ¥ 88 |
アンフェノール製KS3PC-AU | ¥ 506 |
日東アセテート布絶縁テープ#5 | ¥ 408 |
収縮チューブφ3.0mm 2m透明 | ¥ 480 |
スミチューブV 3.0mm | ¥ 308 |
送料 | ¥ 1,780 |
合計 | ¥ 17,394 |
以上の結果となった。(2019年12月の価格)
1万5,000円程度で納めるつもりがオーバーしてしまった。オヤイデの送料が痛かった。
ちなみに、以前このヘッドフォン「ATH-AD10」をオーディオテクニカで修理をしてもらったところ、修理代はイヤーパッドを交換、ケーブル交換、頭のパッド交換で1万円ほどだった。
なので今回1万7000円もかかったけれど、決して高くないと思う。道具も増え、知識も増え、そしてとても楽しい時間を過ごさせてもらった。
修理、リケーブル作業の様子
ヘッドフォンの左側を分解
左側のヘッドフォンユニット?を分解。あまりにも汚かったので掃除後に撮影。
そしてこの丸い金属のパーツが核心部分。黄色、赤、黒の3本はプラグから、黒と黄色は右のユニットから来ている。
理屈はわからないけれど、同じようにつければいいのだ。簡単だぜ、と思ったが・・・
ふと気になって、絶着剤で固定したジョイント部分をルーターで削って取り外す。するとその辺りのケーブルが断線しかけているのを発見してしまった・・・。
できれば右だけリケーブルして終わらせたかったが、全部分解しなければならなくなった。
ジョイント部分を開けてみるとこんな状態。プラスチックが劣化して、触るとポロポロと落ちてくる。とりあえずグルーガンで固定しておく。
ケーブルが通っているバンドのチューブを外してみると、緑色でベタベタに。
ヘッドフォンの右側のケーブルを交換
こちらは右側のユニットの中身。
左からの2本のケーブルがここにくっついている。2本のケーブルは1本のチューブ内でコンパクトにまとまり左側へ。
右側のケーブルを買ったものと交換。
もともとの細いケーブルを、オヤイデから購入した太い内部配線用ケーブルに。
もともとの右のジョイント部分の様子。
細いケーブルが溝を通り、その後バンドのチューブ内を通り抜けていく。
もちろんそんな細いところには入らなかったので、ルーターでプラスチックを削り道をつくる。
ケーブルはチューブには入らないのでむき出しのねじねじに。
かっこよかろう、と思いやってみたがそこそこダサイ感じになった。しかしこれ以上のアイデアもなく先にすすむ。
ケーブルのはんだ付け&収縮チューブ
そして、ついに長い旅を終えて帰ってきた右側からの2本のケーブルとプラグの3本が再会。
はんだ付けは割とうまくいったと思う。
しかし、ケーブルをハンダ付けする角度を誤り、白のケーブルがこの蓋に干渉してしまうことが発覚。うまく行ったはんだ付けを再度するのも嫌なので、別途、白ケーブル用の穴をルーターで削り作成。
3本のケーブルは三編みに。
2メートルあるので結構時間がかかった。そして、おおよその検討はついていたが、ケーブルの強度が全くない事実を突き付けられる。
自分の完成イメージでは、ベルデンの白黒のスピーカーケーブルだったが、ぜんぜん違った。購入したケーブルがあまりにも細かったので、三編みにしてもペにゃにゃに。
というか、三編みのシェイプは丸いと思いこんでいたが、平ぺったいのであった。
これはなんとかせねばなるまいということで、保護用の伸縮チューブを買った。
「薄くて入れづらい」とのコメントも見ていたが、なんとかなるだろうと決め込んだ。3mmもあるし十分だろうと。
ぜんぜん入らない!ぜんぜん!がんばってチューブを広げてみたが、どれだけがんばっても30cmくらいしか入らない。何度も何度も挑戦したが、無理だった。
今回の作業で、ここが一番しんどかった。どうにもならない。
丸いシェイブのスミチューブVを買うしかないか、と考えたが送料800円はきつい。なにより自分が間違った物を買ったという事実を認めたくない。
そういうわけで、薄いチューブを広げるためにセロテーブで机に貼り付ける。チューブを違う方向に広げる。これで一晩寝かしてみる。
翌日、チューブ貼り付け作戦が功を奏し、なんと1メートル20センチはケーブルを入れることができた。しかしやはり、それ以上はチューブの中を通すことができない。
進めば進むほど摩擦が強くなり、細いケーブルでは押し切ることができない。
そして諦めてオヤイデからスミチューブVを買った。
同じ3mmなのにスルスルと入る。送料がかかり泣きそうだった。
なかなか収縮しないスミチューブV
その後ドライヤーでチューブを収縮させる。
しかしドライヤーを目一杯あてても、グツグツをと沸いた熱湯につけようともスミチューブVはあまり収縮しない。
なので最後は蝋燭の火で炙った。
火の威力は強烈だった。なんというか、チューブが収縮しすぎて薄皮が1枚張り付いているみたいな仕上がりになった。強度はあまり期待できなさそう。ないよりはぜんぜんいいけれど。
ちなみになぜここまで収縮させてしまったか。それはテストでオーム電機のチューブを収縮させた時、いい感じの硬さと強度になったからだ。
その仕上がりに近づけようとスミチューブVを収縮させ過ぎてしまったのだ。
まとめ
- オーム電機の薄い方のチューブ:仕上がり硬い。半透明。
- スミチューブV:仕上がり柔らかい。透明。
今回用意した3本のケーブルは細かったので、どちらかと言うと硬い仕上がりを望んでいたがそうはならなかった。すごく柔らかい。
でも外でイヤフォンケーブル等に使う人は、たぶんスミチューブVの方が柔らかく取り回ししやすいんじゃないだろうか。薄い方のチューブは硬すぎる気がする。
それと、スミチューブVを収縮させすぎるとペラペラになるので、強度を出したい時はある程度のところでやめた方がよいと思った。
プラグのはんだ付け、そして完成
プラグに3本のケーブルをはんだ付けする。ついに、前回のリベンジポイントまできた。
うまくいったと思う。でも実はカバー部分を予めセッティングするのを忘れて、再度はんだをつけなおしている。
音がでるのを確認したらグルーガンで固めて、
完成\(^o^)/
音が途切れずに、普通に聴こえることが嬉しい。
正直いい感じでダサくなってしまったが、家用なのでまあいいのです。デザイン云々より、自分がなおして、音が出てくるという事実がとても嬉しい。
けれど、リケーブルをしたことで音がどう変わったか、ということは全くわからない。
壊れてどうにもならないジョイント部分は、とりあえず中にグルーガンでボンドを入れてみた。けれどやっぱり落ちてきてしまう。やっぱり以前の様に、アロンアルファでガチガチに固めてしまうのが良いのかもしれない。
以上で作業が終了。
収縮チューブが入らない時は嫌気がさしましたが、とりあえずヘッドフォンのリケーブルを終えることができました。
嬉しいことは、道具も揃ったので、またリケーブルをやってみたい、壊れた機械やケーブルを直してみたい、と思える自分がいることです。
時間とお金がかかりましたが、挑戦した甲斐がありました。