初心者のための登山とキャンプ入門

登山初日は豪華にすき焼きもオススメ

山の料理 すき焼き

「今回の登山は行程もラクだし、1日目の夜は豪華ディナーにしよう!」という時にオススメのメニューです。もはや山ご飯でもなく普通のごはんですが、実際に私が登山で料理する時はこうやっているよ、というのをご紹介したいと思います。

いつも似通ったものを食べるよりかは「一日目は豪華にしてその他は粗食」などと(値段的にも重量的にも)緩急つけた献立にするっていうのも良いですよね。

すきやきの食材

すきやきの食材
  • 牛肉・豚肉 一人計120g
  • 牛脂(無料) 1個
  • 長ネギ 1本
  • しいたけ 1パック
  • しめじ 1パック
  • はくさい 1/4個
  • 生卵 4個
  • 割り下 250ml位
  • マロニー 一袋

すき焼きの内容は好きな食材を持って行きましょう。「日持ち」とかは今回一切考えないでやるのでなんでも良いのです。今回なんとなく焼き豆腐としらたきは「さすがに重い」と思って代わりにマロニーにしてみました。しかしやっぱり、焼き豆腐としらたきは欲しかったなぁと思いましたし、マロニーは要らなかったな、と。

肉の分量は迷うと思いますが、150gはあって欲しいかもですね。レストランのレギュラーサイズのハンバーグがだいたい180~200gあたりだそうですので参考にしてみて下さい。せっかくすき焼きをするのにお肉を遠慮しながら食べるのはイヤですもんね。

すきやきの割り下

割り下をどうするかは悩みますよね。写真にあるものはスーパーで売っていた中で一番小さくペットボトル入りだったので購入しました。割り下ってなぜかガラスの瓶に入って売っているものが多いのですね。330ml入りで168円。容器を入れると441gもあります。私が以前使った時も同様に余分な量を容器に移し替えて置いていくべきか迷いましたが、結局切干大根などのメニューを持ってきて使いまわしました。

生肉の持って行き方

すきやきのお肉の持って行き方1

まず、食べるサイズに切ります。山で生肉を切るのは衛生上の観点からも絶対に避けたいですよね。私はこのように肉の種類ごとにビニールに入れ、空気を抜いてボールのようにして冷凍庫で凍らせています。平らより、まんまるのほうが溶けにくいかな、と思っています。

また、スーパーのお肉コーナーで無料でもらえる牛脂は登山の料理に便利です。これも一緒に、ビニールに入れて大きなボールにして凍らせます。

すきやきのお肉の持って行き方2

登山に出発の直前に冷凍庫から取り出し、下山後の温泉で使う用のタオルで包み、さらにビニールに入れて空気もなるべく抜いて持っていきます。

ここで注意したいのが冷蔵庫に入れたものをパッキングし忘れることです。自分が朝起きたら絶対手に触れるもの、たとえばメガネとか携帯電話とかに「お肉」と書いたフセンを貼っておくと良いですよ。

すきやきのお肉の持って行き方3

このようになります。ある年の8月中旬に持って行った時は、前日夜22時に家を出て次の日17時くらいに調理しました。実に19時間後ですね。この時は肉も完全に溶けて生ぬるくなっていましたが腐ってもおらずおいしくいただけました。

別の年の11月に朝5時まで冷凍庫に入れておいたお肉を夕方17時に調理にかかった時は、全く解けていなくって溶かすのに苦労しました。冬場はこういったことがあるので休憩中にちょっと取り出してチェックしてみると良いですね。 日が当たるようにザックにぶら下げて歩くなどするといい具合に溶けるかもしれないし、それでも固い場合はテント場に着き次第早くに火のそばに置いておいて自然解凍を待つなどが出来ます。
とにかく調理するその時まで放っておくのではなくたまに様子を見ておくと良いかと思います。

生卵の持って行き方

生卵の持って行き方

パックごと切り、そのままちょうどいいサイズのコッヘルの中に入れます。パックが動かさないように前後左右にキッチン用の軍手や雑巾などで隙間を埋め、フタをしてセロテープでフタが外れないように固定します。もちろんザックを下ろす時に乱暴にドスンとしないように気を遣いますが、これで割れたことは無いです。

しょっちゅう卵を持って行きたい人は、専用のケースも売っています。エバニューのものはケースごとお湯に入れてゆで卵も出来るようです。こちらは以前山岳部の備品として所有していましたが思った以上に使わなかったということで現在はこのやり方でやっています。

すきやきの持っていく食材

4人分です。食材1586g+割り下441gで計2027g。やっぱり重いですね!

生野菜は「新聞に包む」という方法もありますが面倒ですのでそのまま持って行っています。このままビニール袋にガサっと入れてザックの一番上にそっとしまいます。休憩中にその上に座らないことだけ注意が必要です。

すき焼きの作り方

1. 牛脂を溶かし、ネギを焼く

牛脂を溶かし、ネギを焼く

材料は予め全部切っておき、生卵を各自の器にセットしておきましょう。 作り方は、地方によっていろいろあるようなので好きなようにやってください。割り下のパッケージには、まずナベを火にかけて牛脂を溶かしてネギを軽く焼くと書いてあります。

2. 割り下と食材をいれて煮る

割り下と食材を入れて煮る

本当は割り下を入れる前に肉を焼くそうなんですが、鍋底のスペースも狭いので一気に割り下と材料を入れて煮ることにしました。

3. 材料を追加しつつ食べる

割り下と食材を入れて煮る

火が通ったものから順次ナベを囲んで食べます。コンロの背が高くナベが不安定な場合はコンロからナベを下ろして食べるか順番にナベを抑えながら食べるなどして、テントの中でナベがひっくり返ることだけは避けましょう。

すき焼きと生卵

山で食べる生卵って、本当~においしいですよね!

すきやきのごみのまとめ方

すきやきで出たゴミ

今回出たゴミは、119gです。かさばるのは卵としめじとしいたけのプラスチックトレー、重いのは白菜の根本、生卵のカラ、しめじの石づきなど、イヤなのは肉の血がついたビニール袋です。これを漏れずに、臭わないゴミにして持って帰ります。

  1. まず使えそうなきれいなビニール袋はよけてたたみ、他で再利用します。
  2. プラスチック類を可能な限り小さくたたみ、靴底で踏みつけて潰したらセロテープでグルグル巻にして小さくします。
  3. 生卵のカラを要らないビニールで簡単にくるみ、上から握りつぶします。
  4. すべてのゴミを一番丈夫そうなマロニーの袋に詰め、握りつぶして中の空気を出します。
  5. セロテープでグルグル巻きにして硬いボール状になるようにします。
すきやきで出たゴミ

これで、臭わないし登山でこのあと10日くらい持ち歩いても気にならないくらいのごみになりました。

今回のお料理グッズ 「大きいナベ」

大きいナベ

私が普段メインで使っているのは角型クッカーですが、これだと女子3人分だといけるんですが、4人分の調理は出来ません。かといって、4人でそんなにしょっちゅう行くかと言えばそうでもないので、改めて大きなアウトドア用コッヘルを買うのも躊躇してしまいますよね。

そんな時に迷って買ったのが、コレ。アルミで軽くて、仮にキャンプなどをやった場合に丸焦げにしても悔いがないような安いものを、と探してスーパーで買いました。

昔ながらのシンプルな必要最小限といった機能で値段も1000円以下だったと思います。重さも359gと、持ち運ぶのに許せる範囲ですよね。なんだかんだで使い勝手がよく、もう10数年日常の料理で活躍中です。

IH対応とかセラミックとか高機能ナベが人気な風潮ですが、ぜひみなさんのおうちにこういった昔ながらのシンプルアルミ鍋が買い替えの危機に瀕することがあれば、ぜひ捨てずに一つとっておいたらどうでしょうか。予想外の大人数登山の時に役に立つかもしれませんよ。

余談 ~コッヘルを失った登山隊~

コッヘルと言えば思い出す話があります。私が大学生の時の山岳部では集合登山というのをしていて、数人ずつに別れた隊が集合地に向かって各々決めたコースを縦走して集う、というのをしていました。

その年の集合地は北アルプスの涸沢カール。途中の槍ヶ岳の殺生ヒュッテで会ったある男子隊は言葉も少なに疲れきっていました。各々のコースは知っているといえども、各隊が悪天にそなえ3日くらい持っている予備日を消化しながらの縦走なためどの登山道上で会うかはわからず、いわば本当に偶然の、感動の再会な訳です。
と、寡黙に米を炊くその手には見慣れないナベが。おばあちゃんが昔使っていた、煮魚をする時なんかに使う金色の平らなナベです。聞いてみると、なんと事件は15日も前のことでした。

夏合宿初日に黒部ダムから入山したその隊は、初日に平の小屋まで行こうとしたところ荷物が重すぎてなかなかたどりつかなかった。20時になってしまい、あえなく黒部湖沿いでビバークすることにした。
暗闇の中ヘッドランプをはめて設営の準備をしている最中、何かがカサカサと音を立てて転がっていき「ポチャン」という音を立てて黒部湖に落ちた。やがてそれがこれから20日間あまり使うコッヘルセットであることがわかった。

持っていたザイルを駆使し暗闇の中捜索を試みたものの、登山道から黒部湖水面まではかなり距離もあり、そもそも真っ暗な中見えるはずもなく諦めて寝た。
翌朝明るくなってから数時間探したけどやっぱり見つけられなかった。諦めて歩みを進めるが悪天だったのか数時間歩いて行動は中止。その翌日の3日目、平の渡し船に乗ったあとに出会ったどこかの小屋で事情を説明し(頼み込み)この金色のナベを一つめぐんで頂いたのだ、という。
その後15日間、まずこのナベで米を炊き、米が炊けたらどかしておかずを作り、おかずを食べたらお湯を入れて紅茶を作り・・・と朝も夜もやってきたのだ、という。

リーダーであった彼はその話を池に落とした金の斧と銀の斧のお伽話に例えてなんだかおもしろおかしく話してくれたが、横で米を炊く数カ月前に入部した1年生の顔には表情はなかった。早く帰りたいと思っていたのか、来るという選択をした自分を責めていたのか、辛すぎて何も考えないようにしていたのか、それは分からない。
ただそんな彼も最後までクラブをやり遂げ今は子供もいて教員として活躍をしているから、きっとこの時のことはなんらかの人生の肥やしになったんだろうなぁと思います。