初心者のための登山とキャンプ入門

拭き漆仕上げに挑戦。木製の食器やカトラリーの塗装に。

拭き漆で仕上げた木製のカップククサ

先日、木製のマグカップ(ククサ)の仕上げに「蜜蝋ワックス」を使用したけれど、どうも微妙。使うとすぐに蜜蝋ワックスが取れてしまう気がする。寝かせる時間が少ないのかもしれない。理由は良くわからない。

その後たまたま「手作りの木製カトラリー」的な本を読んでみると、ほとんどの箸やスプーンは「拭き漆」で仕上げされているとわかった。漆の食器やカトラリーであれば、蜜蝋ワックスみたいにメンテナンスを気にせずガシガシ使えそうだ。
ということで、今回その拭き漆仕上げに挑戦することにした。

結果、初めての拭き漆はムラだらけの仕上がりになった。こんなに出来の悪いものをアップするのはどうか、と思ったけれど、何かの参考にはなるかも知れないと手順を乗せることにしました。

拭き漆仕上げの作業工程のパターン

ネットでは拭き漆仕上げの手順をいくつか見つけることができるけれど、作業行程のパターンには様々ある。シンプルなものから複雑なものまでありどれを参考にしたら良いかわからない。どれでも良いのだろうが、仕上げのクオリティに差がでるのかもしれないし、塗るものによって変わってくるのかも知れない。
とりあえず、何もわからないので一番簡単なものでやってみよう。ということで下記の手順で作業をすすめることにした。

  1. ヤスリがけ
  2. 木地固めをする
  3. 乾燥
  4. ヤスリがけ
  5. 拭き漆
  6. 乾燥
  7. ヤスリがけ
  8. 拭き漆
  9. 乾燥
  10. フィニッシュ的な行程

という感じで考えていたけれど、結果は全然違ったものになった。

漆の乾燥の温度と湿度

漆を乾燥させるために「漆風呂」「室」と言われるものを用意するというのはどのサイトでも共通していることだけれど、温度と湿度、乾燥時間に違いがある。

  • A:温度20℃、湿度70%を維持、約1~2日かけて乾燥
  • B:温度24~28℃、湿度70%から85%、約1~2日かけて乾燥
  • C:温度20℃、湿度70%を目安、数時間~10時間かけて乾燥

A,B,Cどれにするか迷うところではあったけれど、どれも守ることはできなさそうだし面倒なので「高温多湿であれば良い」ことにした。なお作業中はちょうど夏で、何もしなくても「B」と同じような環境下だった。

その他の違い

木地固めに使用するテレピンの量が違ったり、木地固めを2回やったり、漆のふき取りには「ケーク紙」がいいとか、仕上げに耐水ペーパーで研くとか、サイトによって作業行程が違うけれど、何がベストなのかわからないのでとりあえずやってみることにした。

拭き漆に用意したもの

拭漆に必要なもの

左から木製のマグカップ、テレピン油、タンポ、生漆(きうるし)、器とゴム手袋。

テレピン油

テレピン油は木地固めの時に、漆を希釈するために使用する。ホームセンターで購入することができた。

タンポ

タンポは、というかタンポというものを未だに理解していないんだけれど、イメージ的にウエスをまとめて丸くしたものだと思っている。これを使い漆を木に擦り込むらしいけれど、面倒で途中から使わなくなった。ウェスでダイレクトに塗るようになった。

ちなみにウエスを使うならば、他の人もおすすめしていたけれど「ワイプオール」がおすすめ。「キムタオル」などの安物を使うと細かい毛がたくさんつくけれど、ワイプオールは全然つかないし破れない。少し高価だけれど洗って再利用することもできるので、かなり大事に使っている(もちろん漆の場合は再利用しません)。

ワイプオール X70
ワイプオール X70

生漆(きうるし)

カシューなどはホームセンターで売っているけれど、生漆はなかったのでネットで購入した。楽天の東急ハンズで購入したので、実店舗でも購入できると思う。

ゴム手袋

漆はかぶれるので手袋をしなければならない、ということで用意したゴム手袋だけれど、毎回変えるならもったいないので100均のビニールの手袋で良いと思うし、僕は2回めからはそうしている。
けどそれすらもったいないので、最低2回はビニール手袋を使ってから交換する様にしている。漆は乾いてしまえば手がかぶれることはないらしい。体質にもよるらしいが、僕はかぶれない方だと思うのでそれでも問題ない。

ちなみに手をぬらしたりハンドクリームでベタベタにしてビニール手袋をつけると脱げにくくなります。

その他

写真には写っていないけど、刷毛や筆があったほうがいいと思う。下にも書いているけれど、テレピン油で希釈した漆を塗るために必要だと思う。

もともとの塗装を剥がす

ヤスリで磨いた木製のカップ

先日、修復をして蜜蝋ワックスを塗ったククサ。そのワックスを240番のサンドペーパーを使って剥がす。しっかりと剥がさないと漆をはじくらしいけれど、ちゃんと取れたかどうかわからない。

木地固め

テンパッていたので写真を撮ることができなかった。
漆はテレピン油と目分量で1対1で割った。
漆は独特の、醤油を煮詰めた様な匂いがした。そして白髪染めみたいに、はじめ白っぽかった漆は時間と共にどんどんと黒く変色した。

木地固めの漆塗り直後の様子

木地固め後の木製のカップ

「木ベラやゴムベラで漆を落としてからタンポで塗りこむ」的なことがネットにはあったから、手製の木ベラでシャバシャバの漆をコツコツと塗っていたらあれよあれよと言うまに染みこんで行き焦った。なので途中からタンポで漆を塗りこんだ。 そしてものすごいムラができた。

今回の拭き漆の作業で、一番の失敗があったとすればここだと思っている。ここでの正解は、刷毛を使って希釈された漆をバンバン吸い込ませることだったと思う。
オイルステインを塗ることになれていたので、木が液体を吸い瞬間的に黒くなってしまったことに焦ってしまったのだ。なので前半のものすごく吸ってしまったところと、後半のタンポを使って塗ったところで激しいムラができてしまった。

漆専用の刷毛が売られているが、ここでは面相筆やDIY用の刷毛でも良い様な気がする。とにかく全体的にしっかりと漆を染みこませてムラを作らない。それが大事なんだと思う。

乾燥させる

漆を漆風呂で乾燥させる

漆の乾燥には環境が大事らしい。その乾燥の環境はサイトによって若干の違いがあるが、とりあえず高温多湿が望ましいのだと考えている。作業時は夏、湿度は70%前後、部屋の温度もエアコンを入れなければ28度前後。ということで、夏は漆の作業に向いているのではないだろうか。

漆風呂、または室と呼ばれるもので漆を乾燥させるらしい。とりあえず上の写真の様なものを作ってみた。小さい湿度計と温度計を持っていないのでこの中の湿度と温度がどうなっているのか調べようもないが、とりあえず格好だけはつけてみた。
この箱ごと風呂場に置いたり、湿度が低いなって時は箱の中に濡れタオルを入れたりした。

乾燥終了後サンドペーパーをかける

拭漆の木地固め後にヤスリがけをする

1日と半日ほど乾燥させ600番の紙やすりをかけたあとの状態。
乾燥させたことによってコンガリした様な気がする。しかしムラがひどい。やりなおしたいけれど、面倒なので先に進むことに。

そして二度塗りに突入。
今度は漆はテレピン油で薄めず、そのままダイレクトにワイプオールで漆を塗り込んだ。そしてその後丁寧に漆を拭きとって乾燥。

拭き漆1回目

拭き漆1度塗り

1日ほど乾燥さえ、1回めと同様に600番のサンドペーパーで磨いたあとウエスでぐいぐいと拭ってツヤを出した状態。色はやや濃くなったとは思うが相変わらずムラがひどい。

そして2回めの拭漆に突入。

拭き漆2回目

拭き漆2度塗り

1回めと同じく、600番のペーパーで磨きウエスでツヤを出した状態。また少し色が濃くなった気がする。

しかしここで疑問がでてきた。
乾燥後にサンドペーパーで削る作業は必要なのだろうか?漆の乾燥後は色も濃くてツヤもあって、カブトムシみたいですごく素敵だと思う。けれどヤスリをかけることによって色も薄くなるしツヤもなくなってしまうのだ。600番のペーパーが粗いのかもしれないし、僕が削り過ぎなのかもしれない。

ということで、次はもっと細かい耐水ペーパーにしてみよう。

拭き漆3回目

拭き漆3度塗り

漆の乾燥後、1000番や2000番の耐水ペーパーを使って磨いた。細かいペーパーを使うことで色が薄くなるのは避けられた。けれどやっぱりツヤがなくなってしまうし、なんだか水を吸い込んでいる気もする。

というか、漆の乾燥後にペーパーがけする必要はあるのだろうか、という疑問もでてきた。なくてもいいんじゃないだろうか?そんな気がしたので、次で拭漆をフィニッシュさせることにした。

拭き漆4回目

拭き漆4度塗り

これで終了!っていう風にしたかったけれど、漆の拭い方が適当だったせいか表面がどうも汚いし、それにツヤがまったくでていないエリアがある。
漆塗りにも飽きてきたのでこのまま終わらせたかった。けれどシャクだったので試しに超精密研磨フィルムという8000番のペーパーで研いてみることにした。

超精密研磨フィルム #8000 耐水ペーパーで磨く

超精密研磨フィルムで拭漆を磨く

するとこんな感じの、信じられないくらいの光沢がでてしまった。鏡面仕上とまではいかないけれど、自分の顔も映るし部屋の様子までもわかる。
でもどうなんだろうか。拭き漆ってこんなにも光沢を出すものなのだろうか。ウレタン塗装とかそういったたぐいのコーティングを施した様な仕上がりで、手作り感は全くなくなってしまった。

けれど、塗りムラは別にして仕上がりは良いと思う。いきなり8000番で磨いたので光にあてれば微細な凹凸は見えるが、普通に見て、売り物レベルの光沢はあるんじゃないだろうか(売り物レベルの光沢を目指していたわけではないけれど)。

ちなみに、超精密研磨フィルムで磨いた時間は半日くらい。ヒジが壊れるかと思ったので、今後この方法はないだろうと思う。

まとめ

今回はじめての拭き漆仕上げに挑戦し、出来上がったものにはそこそこ満足はいったけれど得ることは少なかった。何が正解で不正解かよくわからなかった。まあでもこれはトライアンドエラーを繰り返していけばそのうちに自分なりの方法が見つかるのかもしれない、と思う。

それよりも今回は拭き漆の面白さを知った。DIYでは色々な塗装方法があると思うけれど、なかでも拭き漆はかなりエキサイティングだと思う。それに、作ったものが間違いなく食器やカトラリーとして使えるのが嬉しい。 今後は皿やお箸やスプーンなど、自分が使用するものを全部作ってみたいと思った。