富士登山のリュック・ザックの選び方
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始めての富士登山で買うか迷うのがザック(リュック)だと思います。高価なものも多く、また30リットルもある大きなザックを買っても富士登山後の出番も少ないと考えてしまうかもしれません。
しかし良いザックを買えば旅行などでも活躍しますし、日本にはまだまだ素敵な山が沢山あるので、この際思い切って購入してしまうのもありでしょう。
ということで、このページではまず富士登山に必要なザックのサイズを考え、そして登山用ザックのメリット、30リットルのザックのメリットを書いてみたいと思います。
富士登山に必要なザックの容量は?
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私の富士登山の装備を紹介します で紹介した装備の中から、富士登山を想定した装備を選んでみました。これらを30リットルのザックにパッキングしてどんな感じになるか見てみようと思います。 (※モデルにしたザックは姉のもので私は使った事がありませんが、ちょうど30リットルなので使ってみました。)
富士登山に”車で行くこと”を想定した装備の一覧
私が普段登山で使用する装備や持ち物はおおよそ下記の様なものになります。富士登山や登山が初めての方はここまで用意する必要は無いと思いますが、ザックにどれくらいの荷物が入るのかを確認したかったので、参考として用意しました。
■ ギア
- ザック、セロトーレのオリオール
- プラティパス2リットル ソフトボトル
- 山と高原地図 富士山 御坂・愛鷹山
- エマージェンシーシート
- トイレットペーパー
- モバイル充電器
- ザックカバー
- 細引き
- ナルゲンボトル500ml
- トレッキングポール
- 携帯灰皿
- 速乾タオル
- コンパス
- カラビナ
- 予備のライターと電池
- 多機能ツール
- 救急セット
- 防水バッグ2つ
- ゲーター
- レインウェア
■ ウェア
- 予備の長袖シャツ
- ソックス
- インナーダウン
- フリース
- フリースの手袋とネックウォーマー
- ニット帽
■ ザックに入れずに身に着けていくもの
- トレッキングシューズ
- ワコールのスポーツタイツ
- 長袖シャツ
- ソックス
- ズボン
30リットルのザックに荷物をパッキングをする
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
写真は上記の装備リストのパッキングが終わり背負える状態にしたものです。水は入れていませんが容量にはまだまだ余裕がありザックの6~7割り程度しか使用していません。
ここに2日分の食料を足してもいいっぱいになることはないでしょう。厚めのフリースをもう1,2枚入れても問題は無さそうです
30リットルのザックにはかなり入る事がわかります。
25リットルに同じ荷物を入れるとどうなるか
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試しに普段使っているグレゴリーのデイパック(約25リットル)に上と同じ装備を入れてみました。ギリギリの様にも見えますがまだスペースは作れます。
ゲーターは家に置いていき、ドリンクボトルはドリンクホルダーなどで外につければかなりのスペースが作れます。さらにザックカバーも使わずに、ザックの荷物全てをゴミ袋やジップロックに入れ防水対策をする、という方法をとれば荷物も減りますし出費も抑えられます。
デイパックは登山用のザックとは異なりますが、このようにして富士登山に使う事も可能です。 しかし登山用のザックにはメリットが沢山あります。このページの下の方で詳しく機能を紹介します。
実際にパッキングをしてみて思ったこと
かさばる荷物が多い時は30リットル前後のザック
上記の様に考えると30リットルもいらない様に思いますが、やはり登山が初めての方は30リットル前後のザックが適していると感じました。
と言うのも、装備や防寒着などが登山用のコンパクトなものであれば良いのですが、登山をはじめたばかりの人は代用品を使うことも多いかも知れないと考えたからです。
例えば冬用のダウンジャケットやフリース、かさばるカッパ、大きなペットボトルなどを持って行くと30リットル近い荷物になると想像できます。
公共機関で移動する場合も30リットル
また車で富士山に来る場合、必要の無い荷物は車内に置いて登山ができますが、公共機関で移動する場合は下山後の替えの服、温泉に行くならタオルなども必要になります。お土産を買ったりするかもしれません。
と言う様な理由で、富士登山に使うザックの容量は30リットルはあった方がいいかなと思います。逆に、コンパクトで軽い装備を持っている人は30リットルに満たないザックでも問題ないように思います。
30リットルのザックは旅行にも便利
30リットル前後の容量のザックは富士登山以外の登山にも最適なサイズで、日帰り登山から山小屋で宿泊する登山まで使えます。例えば夏に北アルプスの山小屋に2泊する登山の場合30リットルあれば間に合います。
また規模にもよりますが、旅行でも30リットルサイズのザックは非常に扱いやすいです。これ以上大きなザックになるとバスや電車での移動の際に邪魔になり、移動が鬱陶しく感じます。
また30リットルのサイズだと飛行機の手荷物として持ち込むこともできます。
登山用ザックの機能と特徴
登山用のザックは頑丈、背負いやすく疲れにくいなどの特徴がありますが、それ以外にも様々な機能があるので紹介します。
ドリンクホルダー
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上の写真:厳密に言うとドリンクホルダーではありませんが、登山用のザックには小物の出し入れをしやすいメッシュのポケットが用意されていることが多いです。
下の写真:グレゴリーの60リットルのザックのドリンクホルダーです。登山中は頻繁に水を飲みますので、このように手の届く位置にドリンクホルダーがあると便利です。
雨蓋(あまぶた)
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ザックの蓋の部分を雨蓋と言いますが、使用頻度の高いものをここに入れます。
この雨蓋には小物を入れることが多くなりますが、防水袋などにまとめてから入れると管理しやすくなります。
ウエストベルトのポケット
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ウエストベルトにポケットがあるとポーチ代わりになり便利です。携帯やカメラ、行動食や地図などの良く使う小物をしまっておけます。
ザック下部から内部へのアクセス(2気室)
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仕切りにより、ザックの内部が上下に分けられています。この様な構造を2気室といいます。そのため、下部についているジッパーからザックの奥にある荷物を取り出す事ができます。
通常は寝袋を入れることが多い場所ですが、富士登山などでは雨具を入れておいても良いかも知れません。
フロントポケット
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ザックのフロント部分にポケットがあるモデルもあります。ポケットが多いと便利ですが、多すぎるとうまく活用できないこともあります。
ザックカバー(付属)
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こちらのセロトーレのザックにはザックカバーが付属しています。ザックの底部にジッパーがあり、そこからザックカバーが出て来ました。ザックカバーを別途購入する必要もなくなります。
雨蓋のバンジーコード
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雨蓋の上部にゴムがあり、ここに荷物を括ることができます。
以上の様にザックには様々な便利な機能がありましたが、機能が多すぎると逆に使い勝手が悪いと感じる人もいますし、また機能が増えればザックの重量は増えます。どこに何を入れるかをイメージしながらザックを選ぶと、自分にあったちょうど良いものが見つけられるかもしれません。
その他、動くウエストベルト
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富士登山のザックにはこの機能は必要ないかも知れませんが面白いので紹介しておきます。
岩場歩きを意識して作られたザックには、ウエストベルトが体の動きに合わせて動くモデルもあります。ウエストベルトが動くと肩が上げやすくなるので、岩場でもストレスなく手をのばす事ができます。
細くてもウエストベルトのあるザックを
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ザックの容量が増えるとウエストベルトがごつくなる
左から約25リットル、30リットル、35リットル、60リットル、76リットルの順に並んでいます。
ザックの容量が変わると背負える荷物の量が変わるのは当然ですが、それと同時にザックの体に当たる部分、肩、腰に当たるパーツの作りが変わってきます。ザックの容量が増えれば重い荷物を背負うと考えられますので、サイズが大きくなればショルダーハーネスやウエストベルトがしっかりとしたものになっていきます。簡単に壊れないよう、重い荷物を背負っても体が疲れない様に設計されています。
ウエストベルトだけを見てみると、一番左のグレゴリーのデイパックは細い紐が一本あるだけで、水色の30リッターはやや太くてパット入り。35リットルの黄色ではそれよりもしっかりと作られていて、隣の60リットルになるとかなり太く頑丈に作られていることがわかります。
(※一番右のザックは76リッターですが、超軽量を目的に作られているので水色のザックほどのウエストベルトになっています。)
ザックは腰で背負うくらいのイメージで
登山のザックは肩だけではなく腰、背中全体で背負います。通勤や通学の時間だけなら肩のみで荷物を背負っても問題はないと思いますが、長時間の、それも重い荷物を背負った富士登山では、肩だけでザックを背負うとすぐに疲れてしまいまし、肩こりや頭痛の原因にもなります。そういう理由で、肩の負担を減らすためにザックにはウエストベルトが不可欠です。
ザックの背負い方は、基本的に腰で背負うくらいのイメージで良いと思います。腰でしっかりと荷物を受け止め、肩のショルダーハーネスで体に密着させる、という感じです。子供をおんぶする様な、そんな感じで背負えるのが理想的です。
少なくともウエストベルトのあるザックを
もし小さなデイパック、リュックサックを富士登山で使用する場合は、グレゴリーのデイパック(上の写真の一番左)の様に細くてもウエストベルトがあるものを選んで下さい。これがあるだけで肩だけで背負うよりも遥かに楽に荷物を担げます。
このページは「富士登山用にザックを選ぶなら」をテーマにページを作っていますが、もっと登山用のザックについて詳しく知りたい、という方は下記のリンク先を参考にしてください。
おすすめの30リットル前後のザック
ノースフェイス「テルス35」
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以前アウトドアショップをハシゴして30リットル前後のザックをたくさん試しました。その中でもノースフェイスのテルスの背負い心地は自分には抜群にフィットしました。荷物を入れなくても、また5キロほどの重しを入れてみても背負い心地は変わらず良かったです。
ポケット類も揃っているので使いやすく、またザックカバーも標準装備で値段も手頃。買うならこれだなと思いました。
しかし最終的には別のものを選びました。やめた理由は、これは絶対に大ヒットするザックになるだろうと思ったからです。ノースフェイスはブランドだしカラーも豊富だしデザインもいいので絶対にみんな買うだろうなと思ったのです。 (実際に山でテルスを背負っている人を度々みかけます。)
そう言った理由で、ちょっと人とは違うザックが欲しかったのでテルスは購入しませんでした。ですがテルスは間違いなくおすすめなので、ザックを選びが面倒だったり迷った人はぜひ試してみてください。
あると便利なサブザック(ポケッタブルバッグ)

メインのザック以外におすすめしたいのが、軽くてかさ張らない「ポケッタブルバッグ」です。使用しない時はコンパクトにできます。休憩時や山小屋で貴重品を入れて側に置いておく「サブザック」としての利用もおすすめですし、お鉢巡りでは特に役立ちます。
お鉢巡りではメインのザックは持たず、サブサックだけにすれば体が楽になります。
サブザックに貴重品や水、ちょっとした食料などを入れて持ち運べば体力の消耗を抑えることができます。
グループでの登山の場合でも、メンバーの貴重品を一人がまとめて運べば、残りのメンバーに手ぶらのお鉢巡りを楽しませてあげることができます。
それ以外では下山後の着替えや、温泉に入る際の荷物入れとしても役立ちます。
ザックの背負い方
一般的なザックの背負い方の手順と調節方法を紹介します。実際に富士登山をする時と同じ重さの荷物を入れてやってみてください。
1.ザックを膝に乗せて肩を通す
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全てのストラップやベルトをある程度ゆるめておきます。そしてザックの背面上部にあるホールドを持ちザック膝の上に乗せ、それからゆっくりと肩をハーネスに通して背負います。
ザックが軽い場合はここまでする必要はありませんが、ザックが重い場合は腰を痛めたりもしますのでこの様な手順で背負うのが安全です。
2.ウエストベルトを締める
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ウエストベルトを締める位置はメーカーによって若干の差があったり個人差もありますが、腰骨の一番出っ張ったところを包む様なイメージで締めると良いと思います。左右均一の力でストラップを締めましょう。
3.ショルダーストラップを締めザックを背中に近づける
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ショルダーハーネスの下にぶら下がっているストラップを引っ張ります。緩すぎずまた肩が苦しくない程度にひっぱりザックを背中に近づけます。
4.トップストラップを締め密着させる
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ショルダーハーネスの上部にあるトップストラップを前方に引っ張ります。このストラップを引くことで少し後傾していたザックが背中に密着します。
あまり引き過ぎないように、ほどほどのところまで引きます。この瞬間、ザックが軽くなった!と感じる人もいるかもしれません。
5.チェストストラップを締めます
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ショルダーハーネスの胸の位置にあるチェストストラップを締めます。位置は鎖骨から10センチほど下が適切なので、チェストストラップの位置を移動できるザックの場合は調節してください。
軽くフィットさせる程度に締めましょう。
6.背負い心地を確認します
歩いて背負い心地に違和感が無いかを確認します。肩が苦しければショルダーストラップを少しゆるめたりして調節します。また足が上げられるかも確認しましょう。足があげにくければウエストベルトの位置が低いことになります。
以上がザックの背負方の手順になりますが、それでも肩が痛くなったり腰が痛くなったりすることは登山中によくあります。面倒ではありますが、その時は各ストラップをこまめに調節して最適な状態になるようにしてください。