富士山のトイレと携帯トイレのススメ(使い方とレビュー)
富士山にはバイオトイレが完備されていると聞きますが、それはどういうことなのかを知っておくと、よりマナーよく使用しようという気持ちになれます。
また「混んでいたらどうしよう」「途中で行きたくなったらどうしよう」と不安は尽きないかもしれません。そこで、積極的に携帯トイレの練習をしておくことは不安を無くしてくれますし、災害時にも役ちます。
このページでは携帯トイレの使い方と3つの携帯トイレのレビューを紹介しています。
富士山のトイレについて
現在の富士山では「環境に配慮したトイレ」「環境型トイレ」が完備されていると聞きますが、それってどういうことなんでしょうか。
実は、以前の富士山では開山期間に貯めこんでおいたし尿を、閉山後に放流するという方式を多くの山小屋で取っていました。
しかし現在では国の補助もあってすべてのトイレがし尿を放流しないタイプのトイレに変わりました。これが「環境に配慮したトイレ」で「自己完結型トイレ」とか「バイオトイレ」などと呼ばれています。
処理方式のいろいろ
主に富士山では3つのタイプがあります。おがくずを使って微生物に分解させるタイプ、浄化槽で浄化し水を再利用するタイプ(一過程でカキの貝殻を使用)、バーナーで燃焼するタイプです。
注意したいのは、使ったトイレの種類によって少しルールが異なることです。トイレ内に張り紙がしてあるので従いましょう。特に「カキ殻浄化循環」タイプではトイレットペーパーを便器の中に入れてはダメで、横の箱に入れます。普段の流れでうっかりやってしまわないように気をつける必要があります。
携帯トイレは実際に登山で使われているの?
登山では一般的にトイレが少ないので、トイレに行けるチャンスには気を配ったりします。駅や登山口の公衆トイレ、そして山小屋のトイレ。べつに今行きたいわけじゃないないけれど、この後いつトイレがあるかわからないので行っておくか、という感じです。
それでも急をもよおした時、樹林帯などに隠れて済ますのが伝統的でした。男性なら「キジを撃つ」女性なら「お花摘み」という隠語があったくらいです。
排泄物は穴をほったり岩の下に埋めたりなどしてティッシュは持ち帰るのですが、現在でも他の登山者にほとんど会わないような人けのない山ではそのようにされているのかもしれません。
一方、多くの登山者で賑わう人気の山では携帯トイレの普及を急がれているという現状があります。
富士山では
前述のように富士山には環境に良いトイレが整っていますが、それでもたまには急にもよおす時もあります。しかし年間20万人が登る山となると影響は大きいので、そのようなときは携帯トイレを使うのが当然のマナーだろうと思います。
2014年では、吉田ルートの開山後、雪で山頂のトイレが使えない状態の時に富士スバルライン五合目で携帯トイレが配られたということがありました。例年開山直後は雪が残っており、山頂のトイレが使えないことがあります。このようなとき、山頂に汚物が捨ててあったり他のトイレが激混みしてしまった、という背景があったようです。
そこで、吉田ルートを管理する山梨県とメーカーの社会貢献事業の一環として、本来約500円する商品を無償配布したそうです。この時は汚物の回収も行ったそうです。何人が携帯トイレを使用したのかはわかりませんが、この活動は確かに”富士登山には携帯トイレを”という考え方を普及させたのではと思います。
屋久島でも
人気のある屋久島の縄文杉トレッキングでも携帯トイレの利用は推奨されています。こちらも富士山に先駆けて1993年に世界遺産に登録されています。
日本百名山の宮之浦岳や縄文杉のトレッキングコースには仮設トイレの数よりももっと多く、木造のトイレブースと写真のようなテントのトイレブースがあり、下山口やバスの乗換えの基点となる場所には回収箱が設置してあります。
登山者は、登山用品店だけでなく、ホテルや観光案内所、おみやげ屋などで携帯トイレを買い、この囲いの中で用を足し、自分で持ち帰って下山後に回収箱で捨てることが出来ます。
ここのブースの中には、足のついた便座が置いてあり、そこに各自が持参した携帯トイレをはめて便座に座って用を足すスタイルとなっていました。
この仕組みにより、野外で用を足す環境への悪影響をなくすだけでなく、汲み取り式トイレのヘビーユースによる故障や悪臭や混雑といった利用者の不快さ、また、し尿を運び下ろす費用削減につなげようということです。
H26年度ではし尿処理に2,372万円掛かっており1人500円の保全金の募金額ではまかないきれなかったようです。その殆どが搬出費用ですから登山者が自分で持ち帰る事により軽減できるということです。
他には、立山などのように人気のある山も2003年頃よりブースの設置や回収が行われているようです。
携帯トイレのレビュー
「携帯用ミニトイレ」 16g/108円で購入
何も考えず100円ショップで買ったものをザックに入れて予備にとずっと持ち運んでいましたが、開けてみたらビックリ。とても小さいのです。「え?!おしっことうんち、順番にこの入口に入れるの?ムリでしょ?!」としばらくの間、疑問に包まれました。
パッケージを見ると「オシッコを素早く固め…」と書いてありました。
ハッキリ記載がありませんがおしっこのみを対象とした商品のようです。「ミニ」というのがそれを暗に表しているのでしょうか。
使うことは無いだろう、と思って買っていましたのできちんと見ていませんでしたが、いざ大をもよおした時にこれを取り出したらあせっただろうと思います。登山での万が一の予備用に1つ、と考えると、大小兼用を購入すべきでしょう。
容量は300ccで、水分を固める粉末が入っており、入り口はジップで閉めるようになっています。ちなみに大人の一回のおしっこの平均量は150~200ccだそうです。
登山にオススメ1 「ほっ!トイレ」171g/540円で購入
これは過去に吉田ルートで無償配布されたものと一緒で、これの一番のオススメポイントはポンチョがセットになっていて別に買う必要のないところです。富士山のように隠れるところが無い山では、現実的にはポンチョなど隠れるものが無いと厳しいと思います。ツエルトを常に携帯する人はそれでよいでしょう。
ポンチョは透明ではダメ。そしてしゃがめる用にやや太めに作られている必要があり、そして万が一の予備なので軽くてかさ張らないものが良い・・・と考えると、意外とありそうで身近に売っていなかったりもするのでこれを買ってしまうのが早そうです。
固めるものはタブレット(錠剤)になっており、水分でジェル状になります。そしてこの石灰を主成分とした錠剤それ自体がうんちを包んで除菌するため、悪臭をなくすんだそうです。なのでビニール袋は特別なものではありません。
そして持ち帰った後、うんちを便器に流すこともせずにまるごと可燃ごみに捨てて良いのだそうです。
1回分の、ポケットティッシュ・型紙・排泄物を入れる袋・錠剤・ポンチョ・巾着袋 の6点セット。171g。ポンチョなどのない”ミニ”バージョンだと値段もお安く、重さも87gとなるようです。
171gなので第一印象は「重いな」と感じますが、このうち錠剤が55g、ポンチョが61gです。なにげにポンチョが重いんですよね。
セットの仕方
型紙を写真のように組み立てます。一か所を差し込むだけです。高さは6.5cmあります。
次に小さいビニール袋を被せ、オケのような状態にします。風に飛ばされないように周りのビニールを石で抑えるとか靴で踏んでおくとかした方が良いでしょう。
この中に、パッケージを開封して錠剤を入れ、用を足します。
付属のポンチョの素材は黒いゴミ袋とまったく一緒で、袋の底にあたる部分に頭を出す穴が開いているだけです。
サイズは、ヨコ100cm☓タテ120cm。市販の120Lゴミ袋と同じサイズです。しかしゴミ袋も、買おうとするとサイズが手に入りにくいだけでなく一枚約90円してしまいますから、このポンチョは良心的な値段と言えると思います。
しゃがむと狭すぎず広すぎず、体が大きい人でなければ問題ない大きさだと思います。
ハタから見ればトイレ中だとバレそうですが、富士山で人目を避けるのはかなり難しいので、もう諦めるしかありません。帽子を被るなりすれば少しは安心できます。
あとは風にあおられてめくれ上がるとかも気をつけたいところです。
その後、ビニールの口を縛って、付属の巾着袋に入れてもって帰ります。巾着袋は、温泉で歯ブラシが入っていたりするようなふつうのものです。
この錠剤により、”うんち自体が臭わない”、これが事実だとするとスゴイことです。多くの商品はパッケージなどでニオイを防ぐ仕組みになっており、これは疑わしいという実感がありました。以前、子供のウンチ入りオムツを持ち帰るためにそのような消臭袋を利用していた事もありますが、ものすごく臭かったのです。
さらに、これだと錠剤だけを買い増して、ポンチョと型紙は再利用しビニールは安いものを使う、ということで何回も使う場合に良い気がします。もちろん便座に被せて使えるタイプです。5年間が備蓄期限となっています。
登山にオススメ2「ハイマウント 携帯トイレ」86g/385円で購入
こちらは屋久島山岳部利用対策協議会で用いているものと同様です。立山などでも推奨され、自治体の災害用備蓄などにも使われているようです。先のタイプに比べて値段は安くなっていますが、ポンチョは付いていません。
本体の袋は結構大きく、”キリトリ”線に沿って袋の上部を開封します。袋はガサガサして固めなので形を保つことが出来ます。
屋久島のようにトイレブースに便座だけが設置してある場合は便座にはめ、便座がない場合は下の写真のように和式便所のような形を作って使います。
袋の外形は四角ですが、両端にカーブがつけられているので簡単にこのような形を作れ、おしっこがパッドを無視して袋の端っこに溜まるようなことはありません。大きさは和式便所と同じくらいになり、このサイズは使いやすいだろうと思います。
ただ、袋が大きいため登山用のゴミとしてはかさばりがやや気になります。
中に貼られているパッドはオムツのようなもので、おそらくこれは水分を固めるだけの機能だと思います。上に乗っかったうんちなどはそのままですが、この袋自体にも防臭の効果があると説明書きがあります。
ハイマウントの場合、この外袋”超防臭チャック袋”がウリのようです。なかなか丈夫そうなチャックが付いていますし、袋が分厚いので破れて中身が出るということはなさそうです。ここに何個も入れられ、繰り返し使えるとのことなのでもし使用した場合は袋は捨てずに再利用するとよいでしょう。
登山にオススメかも?「万能トイレくん」26g/280円で購入
この商品の魅力は前出の2つに比べて手軽な点です。小さく、軽く、値段も安くなっています。大丈夫なのかと思うくらい外袋も薄いです。でもパッケージには”臭いません!”と元気よく書いてあります。
白い小袋が吸水ポリマーと言うらしく、小さいながら1000ccまで使用可能と書いてあります。単にこの袋に1000cc入るという意味なのか、この小さいポリマーが1000ccをジェル状に出来るのか、どちらの意味かわかりません。
これを購入した理由は、この青い輪っかの部分が平たく頑丈に作られているという形と、この取っ手部分の切り込みです。
穴はのサイズは写真の手と比べて分かる通り、けして大きくないのです。
しかし私が以前スーパーのレジ袋を使って試した経験によると、いざ使うときは地面に置くよりもビニールの前後をもって肌に密着させ、立って、もしくは中腰でするほうが安定するのではないかと思うのです。そう、下のパッケージの絵のように、です。
仮にそうだとすると、この平に作られた青い面と前後の取っ手は使い勝手が良いのではと推察されます。
まとめ。自作するのもアリ
私がザックに一つ入れておくなら、やはり人目のある富士登山ではポンチョの携帯トイレだと思います。
しかしうんち1回に540円はどうしても高いです。しかも富士登山の多くは一泊2日で、2日目夜には家で捨てられるので1ヶ月近く臭わないという錠剤はもったいない気がしますし、一回の錠剤55gは少し登山には重いということもあります。
なのでポンチョは捨てずに、2回目はハイマウントを使用すると思います。そして高機能の外袋はとっておき、さらにリピートするなら万能トイレくんのように比較的安価でライトなものを使うと思います。
もしくは”ほっ!トイレ”のタブレット1回分200円のみを購入し、防臭袋にオムツの余りを両面テープで貼り、またポンチョは別売りの物を用意するなどして自作するのもアリかなと思ったりもします。これは災害用にも使えそうですね。
富士登山でのトイレのマナーと使い方
協力金を払おう
これらのシステムを維持するために使用者は協力金(チップ)という形で支払うことになっています。なぜ「使用料」にしないのかわかりませんが、利用者は必ず払いましょう。
そのためには100円玉が必要です。金額は100円~300円程度なので1500円分くらいを100円玉で用意しておくとよいでしょう。
ティッシュはトイレットペーパーで
普通のポケットティッシュは水に溶けにくく、特に燃焼式トイレではポンプを詰まらせてしまう危険がありますから使用してはいけません。
代わりに、トイレットペーパーを持参しましょう。少しづつ巻いてポーチなどに入れておきます。最近では「水に流せるポケットティッシュ」なども販売されています。
トイレットペーパーを持って行く場合はビニール袋や、ビニール製の巾着などに入れていきます。濡れると水を吸って合体して使えなくなり、ただの重いゴミを持ち運ぶことになってしまうので特に雨の日は注意しましょう。
グループで行く場合は2-3人で1つなどの共同装備にするのもよいでしょう。芯の所にヒモを通して首に掛けれるようにしておくと、両手が空いて便利です。
あると便利なポーチ
富士山のトイレ使用料はチップ制となっているので、トイレに行く時には小銭を持って行くのが必須。そんなときに大活躍なのがショルダーポーチです。小銭やティッシュだけでなく、携帯電話など行動中いつでもサッと取り出したいものを入れるのに大活躍です。
丈夫なシルナイロンを採用し、ジッパーなので中身が落ちることがありませんし、掛けているのも忘れるくらいの軽さ。ストラップを短めにすれば体にフィットするのでブラブラせず歩行中も邪魔になりません。
ゴミは捨てない
当然の事ですが、ゴミを便器に入れてはいけません。うっかりポケットにしまっていたウェットティッシュを間違って捨てたり、なんてことがないよう気をつけましょう。「自分のせいで20万人のトイレが詰まってしまった!」なんていう大事件が起きてしまったらと想像するとコワイですよね。
節水しよう
使用後にウォーターガンで流すタイプがありますが、富士山での水はとても貴重です。水は節約して使用します。
大量のトイレットペーパーはダメ
特に燃焼式では、ポンプで送る際にトイレットペーパーが詰まってしまうおそれがあるそうです。できれば最低限での使用に協力しましょう。
他のタイプのトイレに関してもトイレットペーパーゴミが少ないように一人ひとりが心がければ処理量も減ります。
トイレ内での休憩や仮眠はダメ
夜間や雨の時、トイレを長時間占領して休憩や仮眠をとる人がいて問題になっているそうです。眠さや寒さ。公衆トイレで寝るまでいってしまうなんて、想像するだけで辛いのもわかります。
「他の人の迷惑になるからダメ」なんてことは言わずもがなですが、自分がこうならないようにするには少なからず弾丸登山をやめるのが良さそうです。
混雑する時間
山頂のトイレは、ご来光直後の朝5時~8時の間、トイレ混雑のピークとなります。人が少ない時を見計らって行っておく、などの心がけをしておくといいでしょう。
混雑するトイレ
登山者の6割が利用する吉田ルートの下山時のトイレは要注意です。八合目の分岐を過ぎた後、下山道には山小屋はありません。公衆トイレは七合目と六合目にありますが、久しぶりのトイレなため七合目は大変混雑します。そのため、早めに山頂や本八合目の山小屋で済ませるか六合目安全指導センター横のトイレを利用しましょう。
トイレがないロング区間
御殿場ルートでは、五合目を出発した後七合目まで、休憩を含まないコースタイムでも約5時間半の間トイレも山小屋もありません。
登山の、特に登りの行程では汗をかくこともあり5-6時間もトイレに行かないことはザラにありますのでそんなに心配することはないと思いますが、五合目できちんと済ませてから登るようにしましょう。