富士登山のマナーや山小屋の評判
富士登山で忘れていけない要素は、大自然の厳しさだけではなく同時に登る大勢の人です。自然の中だけど、やはり富士登山は人間の世界です。みんなが、富士山を末永く美しくあり続けられるようにという思いを持って、また、一生懸命登るまわりの人達のことも尊重しようと心がけることで、いろんな不満は乗り越えて気持ちのよい登山が出来るのではと思います。
これはやめたい!悪いマナー
「キレイ事は置いといて」と言われてしまいそうですが、現実の富士山は多くの人でごった返し、いろんな人がいます。マナーの良い人もいれば、良くない人もいます。
ここでは、実際に富士登山中で遭遇したり目撃したりした悪いマナーをあえて挙げてみたいと思います。「人の振り見て我が振り直せ」とのことわざがありますが、うっかりとやってしまわないように少しだけあたまの片隅に置いておいてください。
登山編 NG!
- 登山道にどかっと座って休む、ザックで道を塞ぐ
- 自分の後ろが長く詰まっていても道を譲らない
- 道の端を歩いて落石を起こす
- 追い抜くために登山道以外を歩く
- くま鈴やラジオを鳴らして歩く
- 歩きながらタバコを吸う
- アメの包み紙などを落とす
- 道標、記念碑に登る、壊す
- 草花を採る
- 洗面所で体を拭くなどして占領する
- トイレで休憩して長く占領する
- トイレを汚しても拭かない
- トイレットペーパーを盗む
- トイレ以外で排泄し、持ち帰らない
山小屋編 NG!
- 大声で話す、喧嘩する、子供を大声で叱る、団体が大騒ぎする
- 他のお客さんともめる
- 周りの人が寝ているのに人の顔にライトを当てたりガサガサと音を立てる
- イヤフォンからの音が漏れていてうるさい
- 荷物を他人の領域にはみ出させる
- 濡れた服で寝床に入る
- ザックや衣類の砂を寝床に持ち込む
- 夜中にアラームや携帯電話をならす
しかし万が一このようなシーンを目撃した場合ですが、イライラしてはもったいないと思います。「怒りで眠れなかった」なんて事になったら翌日大変です。「みんな疲れているんだ、しかたない」と許すくらいの気心でいることが防御策だと思います。
富士山カントリーコードって?
”富士山カントリーコード”っていうものがあるの、知っていましたか?最近出来たわけではなく平成10年には制定されていたそうです。カントリーコードとは、もとはイギリスで作られ始めたものらしく、田園地帯を訪問する人々が守るべきルールやマナーを定めたものとのことです。
富士山カントリーコードは以下の10条です。
- 美しい富士山を構成に引き継ぐ
- ゴミは絶対捨てずに、すべて持ち帰る
- ゴミになるようなものを最初から持っていかない
- 登山道を外れて歩かない
- 登頂記念の落書きをしない
- 車道外へ車両等を乗入れない
- 溶岩樹型等の特殊地形を壊さない
- 駐車場ではアイドリングをしない
- 動植物を採らない
- トイレなどの公共施設をきれいに使う
(富士箱根伊豆国立公園富士山地域環境保全対策協議会 制定)
さらに、”富士山憲章”というものもあるようです。
- 富士山の自然を学び、親しみ、豊かな恵みに感謝しよう。
- 富士山の美しい自然を大切に守り、豊かな文化を育もう。
- 富士山の自然環境への負荷を減らし、人との共生を図ろう。
- 富士山の環境保全のために、一人ひとりが積極的に行動しよう。
- 富士山の自然、景観、歴史・文化を後世に末長く継承しよう。
(静岡県・山梨県 制定)
こちらも策定は平成10年。世界遺産登録されたのが平成25年ですから、それよりもはるか前です。実は富士山を世界遺産に、という流れは平成4年の「富士山を世界遺産とする連絡協議会」の設置あたりから行われていたんですね。
一泊二日でパッと行って帰ってしまう私達には伝わり辛いところではありますが、むかしから富士山を大切にしたいと思う人達の気持ちに少しくらい思いを馳せつつ、富士山を大切にしていこうという気持ちを持って山に行きたいものです。
富士山の山小屋は最悪?
上に挙げたのは他の登山者についてのものですが、残念ながら他によく耳にするのが山小屋の従業員についてや受けたサービスに対する不快・不満です。
チョットおかしな話しかもしれませんが、富士登山を気分よく満足で終えるためには、ある意味で事前に”覚悟”しておくのが防御策だろうと思います。山小屋が不快だからといってテントを張って外で寝るわけには行きませんし、すべての人が日帰り登山できる体力を持ち合わせているわけではありません。
不思議なことに下山後に「特に問題が無かった」と感じる人は、事前に楽しみと同時に悪い情報も得ていた人のようです。
「最悪だった!」という派の意見
- 従業員の態度が悪い(横柄、タメ口、他の客の悪口を言う、怒鳴る、声が大きい、冷たい)
- 従業員を叱り飛ばしている
- 体調不良の人に対し冷たい、何もしない、追い出す
- 悪天候時でも困った人に親切にしない
- 人間扱いされない(吐いている人にも食事を勧める、食事中に布団引く、寝ているのに布団を剥ぎ取る)
- 夜中に従業員が空きスペースを探して布団の間を歩きまわる、声がうるさい
- 団体客の扱いやスケジュールを優先し、個人客は後回し
- 食事の量が少ない
- 寝床が狭い(一つの布団に3人)、汚い、空気が悪い
擁護派の意見
- 態度は個人によるものなので仕方がない
- マナーの悪い客もいるので態度が荒れるのもわかる
- 高所で何日も働いているから過酷なんだろう
- 高所でホテルのようなサービスを求めるのが間違い
- 登山は自己責任なので 「助けてもらって当然」 と思ってはいけない
- 富士山は混雑が酷いので「特殊」と割切るべき
- 混雑していない日取りと山小屋を自分で選ぶべき
- 金額を町中のホテルと比べるのは間違い
- 不満をいう人は装備不足や登山ルールを知らない人な気がする
- 入山制限が無いのだからキャパオーバーは仕方ない
両方の意見を読んで、どう思われたでしょうか。
もちろんこれらはほんの一部の意見ですし、これらを読んでせっかく富士山に登ろうと思った気持ちを萎えさせないでいただければと思います。
改善の余地はまだまだあるのだろうと思いますが、大切なことは、万が一このようなことに遭遇しても、それでイヤな気持ちになってしまってはせっかくの富士登山が台無しになってしまう、ということです。
なるべく不快を避けるには
- 混雑する週末・お盆・連休は絶対に避ける
- 混雑する山小屋は避ける(八合目)
- 五合目、御殿場ルート、などの穴場の山小屋を利用する
- インナーシーツを持っていく
- 団体客と同じようなスケジュールで行動する(起こされてしまうので)
- カロリーメイトなど夕食の補助を用意しておく
- 耳栓、アイマスクなど睡眠補助具を完ぺきにする
- ここは仮眠施設である、避難所であると思い込んでみる
- 怒りを抑える音楽や小説を持っていく
混雑がすべての元凶?
たとえば、同じく世界遺産登録されているマレーシアのキナバル山では入山制限をしており、ベットの数しか登山者を受け入れません。約10年前の情報になりますが、一日たった130人でした。現在でもそこまで大きくは変わっていないだろうと思われます。同時に、必ず山岳ガイドを雇わなければいけないなどの制約もあります。もちろん十分な食事などのサービスを受ける事が出来ますが、その分登山出来る人数も少ないので入山するための予約を取ることが、まず第一関門となります。
一方富士山では一日4000人以上の計算です。もしこのような少人数で富士登山できたら快適でしょうが、設備や登山道の維持にお金がかかり、とても高額な入山料が必要になると思います。
これらをまとめてみると、やはり元凶は混雑であると思われてきます。極端なことを言えば、人身事故でごった返した新宿駅のホームの空気はとても殺伐としています。高速道路も渋滞になると一気にイライラしてきます。これは富士山でなくても言えることで、例えばお盆の涸沢カールの山小屋などもかなり殺伐としています。これは観光地化している山の宿命なのかもしれません。
しかし、観光地化した山以外の日本の山小屋は、本当にすてきなところばかりです。退屈なお客さんのために漫画をいっぱい置いてくれている山小屋、刺し身や牡蠣鍋などお客さんをびっくりさせようと豪華料理を出す山小屋、ハーモニカを聴かせてくれた山小屋・・・。食事だけでなく、そのご主人の人柄に惚れ込んで泊まりに来るような登山者、他の登山者との語らいが楽しみで泊まりに来る人。そういうところがいっぱいあります。
富士山でもしがっかりされたとしても、これは特別だったのだ、と割りきってぜひ素朴な山小屋へ足を運んでみて欲しいと思います。