子供と富士登山は何歳から?服装と持ち物、準備は何?
子どもと富士山に登りたい、と思った時に「何歳くらいから富士登山をして良いものなのだろうか?」と考えてしまいますよね。制限は無いし、だれも決めてはくれない。個人差もあるだろうということもわかるだけに、難しい問題だと思います。
さらには、実際に行ってみようと思った時に何が大事になってくるのでしょうか。いろいろと考えるとめんどうくさくなってしまうかもしれませんが、きちんと準備をし、登頂にこだわらずムリをせずに「また来年ね」と戻ってくる心構えさえあれば、”非常識”なことではありません。 お子さんの体力や体調を見ながら一緒に挑戦する2日間はかけがえのない思い出として深く刻まれることと思います。
何歳から登れるんだろう?
マナーの面で、泣きわめかないこと
子どもとの富士登山で日帰りは厳しいので、このページでは山小屋に泊まることを前提に話をすすめたいと思います。富士山の山小屋は大人にとっても慣れないことへの不快を我慢せざるを得ないシーンが多く、気を使う部分があります。狭い、眠れない、疲れている・・・そんな環境で他人への許容範囲も狭くなっている人もいたりします。山小屋の従業員も大忙しなので下界のようなサービスを期待することはできません。
そんな中、親の言うことを聞けずに騒ぐ、就寝時間なのに大きな声を出す、普段は問題ないのに眠れなかったり不快だったりするとぐずる、ゴハンがまずいと泣きわめく・・・。このような状況では、周りへの迷惑さることながら親も気疲れしてしまいます。
どうしたって今の富士登山は多くの人がごった返す人間の世界なので、これに適応できることは必須です。これらに我慢できない年齢、親が言っても聞き分けのできない年齢のときは、まだ早いと判断するのが無難でしょう。
体の不調を伝えられること
多くのガイドが言うのは「富士登山は最低でも小学生以上が望ましい」という基準です。その大きな理由は体の具合が悪い事を言えるということだと思います。ですので、無いとは思いますが、ベビーキャリーなどで幼児を連れて行くのは絶対にやめましょう。
富士山の標高では高山病という決定的な要因があり、それは年齢問わず襲いかかります。担がれた幼児は高山病で頭痛がするのにうまく言えず、泣いた挙句に寝てしまうかもしれません。元気な親は不調な幼児を担いで登り続けてしまう、などという恐ろしいことも考えられます。
富士登山は大人にとっても体調の不調と相談しながら登るようなところがあります。「ちょっと気持ち悪いけど、歩けないこともないかな」、「苦しいから、もっとペース落としてみようかな」と。
子供も一緒で、高度障害による疲れや体調不良は起こります。どこが苦しいのか、どれくらいならがんばれそうか、もっと登りたいか帰りたいか、吐き気がしてお腹が気持ち悪いのかただトイレに行きたいだけなのか。そういった事を伝えられずにただ不快だからと泣くだけでは、親もどのように対処したら良いのか困ってしまいます。年齢もありますが、そのへんの”しっかり具合”を我が子に当てはめて想像してみると良いでしょう。
基礎的な体力と普段の運動
小学生くらいになると昼寝をしないでも起きていられる体力がついたりと、幼稚園生だった1年前と比べるとだいぶ体が作られてきたような気がすると思います。そのような基礎的な体力のしっかり具合は、やはり登山には必須で、学年が上がれば上がるほどしっかりしてきます。
これが「いそがないでも、もう少し大きくなるのを待ってからにすれば?」という意見の根拠はだろうと思います。やはり歩くことによる疲れや気温変化からくる疲れ、慣れない環境からくるストレスなどに対する抵抗力は、1年生より2年生、2年生よりは3年生と強くなっていきます。だんだん守ってやらねばならない危うさが減ってくるに従って、親に必要とされる気遣いや体力も減ってきます。
また、老人や子供は体温調節機能が弱く風邪もひきやすいですが、大きくなってくるにしたがってこれも整ってきます。
しかしながら、ある幼稚園では伝統行事として長年富士登山を行っていたりもします。もちろんそれに備えて日頃の山歩きや体力づくりを意識したプログラムを組んでのことです。なので幼稚園児だから絶対にできない、というものでもありません。
これを逆に考えると、たとえ小学2年生であっても普段から外遊びをたくさんして運動もする子どもと、家の中で過ごすことが多く体を動かすことをあまりしない子供では全然違うでしょう。また、食が細い子かガッツリ食べられる子かどうかも、長時間歩く登山においては大きくスタミナに影響するでしょう。
疲れてしまうことは登れなくなるだけでなく、体調不良の誘引ともなります。年齢だけではなくその辺りも想像して子供に当てはめて想像してみましょう。
大人の登山経験と体力
親子での富士登山は素晴らしいのですが、実際、大人一人でもヒイヒイ言ってしまうのが富士登山です。そんななかで子供の世話まで焼かないといけないのは大変なことです。
しかしながら親が登山経験者ならば、登山の一般的な心得が自然とわかると思います。歩き方や休憩の取り方、水分や食事のとり方、体温調節の仕方などです。経験として身についていれば、同じように子供に対しても観察して適切なアドバイスをしてあげることができるでしょう。
しかし”親も子供も初富士登山”、となると何もかも手探りでやっていくことになります。自分も知らない世界に対処しながら人の世話まですることは重労働です。なのでこのような場合は、「お前も一人前になったなあ」と言えてしまうくらいの、たとえば小学校高学年あたりまで待つのが良いかと思います。このくらいの年齢になれば、自分の身の回りのことがある程度できるので安心です。
また、子供が歩き通せるか心配な年齢の時は親がすべての荷物を背負うパターンになるだろうと思いますが、高学年ともなれば”自分の荷物は自分で持ってもらう”、という選択肢も出てきますから、その点でも年齢が上がるほど親は楽になります。しかし子供の成長と同時に親も老いてきますので、体力維持には心がけたいところです。
まとめ
現実的には”○歳から富士登山はOK”と線引をすることはできません。悩みどころは年長さんから小学校3年生くらいだと思いますが、登山中のイメージと我が子の実態を想像して、考えてみましょう。
準備1. とりあえず始めてみよう
ムリのないところで試してみる
我が家では、妹が産まれたために姉は3歳から否応なく自分の足で山を歩き始めました。次の赤ちゃんは居なかったため妹は3歳半を過ぎても背負子に乗り続け、日常生活でも常にバギーに乗るというやや甘やかされた環境でした。
そのため、どれくらい歩けるのか未知数でした。先走って押し入れのスペースを占領していた背負子を手放してしまったのの、姉が3歳で歩いたのと同じように歩くことは期待できないだろうという疑念がありました。
それもあって、ある時、旧街道のハイキングコースを歩いてみることにしました。コースタイムは2時間10分、標高差は登りが200m、下りが370m、距離にすると7.5kmとなります。この街道歩きを選んだ点は、街道に併走するようにして一般道が走り、そこにバスが走っていたことです。自分が街道あるきを楽しむのと同時に子供の足慣らしトレーニングになったら良いし、途中で「おんぶ」とか言い出したら最寄りのバス停からバスで戻ればいいと思ったのでした。道は石畳の部分もあったり、土の部分ややや岩が出ている部分もありましたが、古くに使われていた街道ということもあって段差が少ないことからも歩きやすそうでした。
やはり6歳になった姉は楽勝そうでしたが、3歳7ヶ月の妹はやや不満をいってややダルそうな場面もありました。しかし2時間10分のコースタイムを休憩含めて4時間半掛けて歩き通すことができました。
この様子を見て「どの程度歩けるのか」が直感的にすごく分かったという収穫があったのです。姉がずいぶんと歩ける様になっていることを知ったこともそうですが、普段は車で移動ばかりで眠いとかおんぶとか言われると面倒なのでついついバギーに載せていたので、もっと早くに「帰りたい」と言われると思っていたのです。しかし、下る時の足運びなんかを見ても不安な感じは無いし、表情や元気度から、どの程度歩けるのかということが感覚で分かりました。
この直感を得て、次は旧街道ではなく低山ハイキングしてみよう、という気分にもなりました。
試してみれば、もんもんと「富士山に行けるかな?」と悩んだり周囲の意見を求めるよりもよっぽど早く結論をくれると思いますし、歩いたことそれ自体が経験として貯金されると思います。
コースの選び方
子供でも上り坂には抵抗があるらしいです。なので、よくある”駅からハイキング”とか、先に上げた旧街道や、”歴史散歩道”、”トレイル”などをキーワードに身近な高低差の少ないものを探してみると良いでしょう。それらは途中に展望が良い所を選んであったり、トイレや自動販売機、休憩所、嫌になった時のショートカットコースが紹介されていたりします。名物の団子屋や野菜の無人販売機などもあったりするかもしれません。ちょっとした観光名所として町おこしの対象になっていれば地図がもらえたりインフォメーションセンターがあったりします。
大人にも普段の運動不足を解消するにちょうど良いものもあります。また、登山で使う登山口付近には素朴な雰囲気を残した山里も多く、さほど歩けなかったとしても森林浴として満足できるのでおすすめです。
普段より長時間歩くということは”慣れ”の部分も多いので、いきなり登山に挑戦して挫折するよりは、リフレッシュ、運動、観光を兼ねて、気楽にやってみるのが良いと思います。大人も楽しみながら子供の脚力もつけていけたら一石二鳥です。
低山も登ってみよう、となった時に該当地域にお住いならばオススメしたい本は、山と渓谷社から出ている”○○周辺の山”シリーズです。東京、名古屋、関西版で出ていると思います。
ちょっと値段が高いですが結構マイナーな山から「周辺を超えてるよね」という範囲までカバーしたかなりのコース数が収められているお得な本です。県毎の本も発行されていたりしますが、それを別々に買わなくてもこれを買えば主なコースはカバーされていると思います。
まとめ
悩んでもわからなかったら、もしくは不安だったら、とりあえず簡単な週末ハイクを。何か答えが出るはずです。
準備2. 富士山周辺ハイキングのすすめ
簡単なハイキングや低山のハイキングで慣れてきたら、いよいよ、将来の富士登山を見込んでの富士山周辺のハイキングをおすすめします。
また、近くに住んでいなかったとしても子供を富士山に連れて行っていいのか不安であれば、「この夏は気分を高めるための準備登山」と決めて、富士山が眺められる山のトレッキングをするのもいいと思います。モチベーションアップに役立つはずです。
一発で登れる人も多いのでは?
富士登山は実際、天気がよく体調も良ければ行き当たりばったりで登頂できてしまいます。ジーパンやサンダルや、ノリでいきなり参加して登頂する人もいます。
しかし、登山の本来を考えれば、絶対に無事故で自分の足で帰ってこられるような備えをし「大丈夫だ」との確信を持って山に向かうのが基本です。無謀な登山でも準備万端な登山でも、単に「登頂した」という事実だけを見れば同じように見えますが、その内容はまったく違います。
仮に準備万端で臨んで高山病で山頂へ行けなかったとしても、そのプロセスを経た経験は登山スキルとして身につきます。
ですので「そんなことしなくても登れるでしょ」と言わずに、ぜひ富士山周辺のハイキングや富士山を眺めるハイキングをしてモチベーションとともに登山のスキルも上げていくことをおすすめします。
富士山自然保養林
須走口から富士宮あたりに存在する富士山自然休養林のなかの13のハイキングコースです。樹林のハイキングも素晴らしいですが、宝永山周辺の雄大な眺めの砂礫のハイクや砂走りを下って御殿場口五合目に下るコースなどもあり、”足慣らし”の範囲を超えて楽しめます。山頂までの道は夏のたった2ヶ月間しか歩けませんが、これらは春や秋にも歩けるのがメリットです。
マップはPDFでもダウンロードできますが、役所に依頼して郵送してもらうこともできます(静岡県 富士山世界遺産課 054-221-3747)。マップにはコースごとの管轄先の電話番号が書いてありますので、積雪や自然災害時の後の登山道への影響などについて不安だったら問い合わせてみるのもよいと思います。
ぐるり富士山トレイル
歩きながら世界構成遺産をめぐるというテーマで設定されたトレイルで、山道から舗装道路まで様々な道がありますが、1周できるルートも設定してあります。富士山の姿を眺めながら、歴史も学びながら足慣らしができたら、本番の登山をより深い思いで登ることが出来ると思います。
上のリンクでもコースを見ることができますが、こちらのガイドブックがわかりやすいようです。
まとめ
将来の富士山頂制覇をねらった周辺ハイクにはメリットがいっぱいです。また普通にハイキングとして楽しめる良いコースもいっぱいです。
子供の装備と服装、持ち物など
実際に富士登山中に見かけた子供の多くが、普段履きの運動靴だったりします。私自身の経験でも「富士山だから1回だけ登ってみたい」と頼まれて連れて行った友人には、毎回自前の運動靴を履いてきてもらいました。いずれも雨が降らなかったこともあってみんな登頂はしましたが、やはりアキレス腱が痛いとか、足がズルズル滑って辛いとか、下りの時に爪がぶつかって親指の爪が剥がれたりしていました。
さらに今回、上に書いた旧街道歩きをしたときに思ったことは”特に長距離歩きに挑戦しだした下の子供に、トレッキングシューズを履かてあげたい”ということでした。ふつうの運動靴と靴下を履いていったのですが、やはり下りが続くと親指に当たるらしく、マジックテープでは甲を抑えきれないようでしたし、足首の支えが全く無いのはさすがに子供でも大変そうだなあと思って見ていました。
「登山の後に楽しかったと思ってもらえるかどうかは、6割方、靴によってしまう」とガイドさんから聞いたことがあります。
登ることは出来るかもですが、より安全で楽しく、と考えるならばやはり大人と同様に専用の靴とレインウェアだけはしっかりしたものを用意したいところです。レインウェアは防寒着としての役割も大きく、低体温症を防ぐという点でもビニールポンチョと高機能のレインウェアでは歴然の差がでます。
サイズアウトが早い子供時代にはレンタルは大変便利です。登山用品専門のレンタルショップなら、本格的な装備がレンタルできるので安心です。
その他の服装は、下はジャージの長ズボンがあればベストです。Tシャツなどはコットンではなくスポーツ用の速乾性のものがあればよく、ニクロなどの化繊のスポーツ用で十分です。
靴下は、登山用のものが速乾性もありベストですが、なければなるべく厚みのある物を用意しましょう。その他の装備についてはほぼ大人と一緒ですので装備のリストをご参照ください。ヘッドランプなどは非常用のものですが一人に一つ持っていくのが基本です。
このリストでも紹介していますが、特にポーチは便利だと思います。歩きながらちょっとした時にラムネやチョコをあげて気分転換させたり、地図を見せて眼下に見える湖の名前を教えたり、携帯のGPSを使って現在地を見せながら励ましたりと子供を元気づけるためのアイテムをさっと取り出せます。
おしりに敷くマットも便利です。100円ショップで買えますがリュックを持たない子供は地べたに座ることになってしまうので、このようなアイテムはおすすめです。
また、夕飯の時に眠たかったり具合が悪かったりして食事が取れない可能性もありますから、フリーズドライの赤飯などややボリュームのあるものを非常食として持っていくこともおすすめです。
まとめ
不安の多い登山だからこそ、専用の装備で不安材料を減らしましょう。
計画時に注意したいこと
明るい間だけ歩く
夏期は24時間営業のような富士登山ですが、暗い間に歩くということは慣れないことへの疲れと転倒の危険を倍増させます。また、睡眠をコントロール出来ない子供にとっては、”睡魔”という避けがたい大きな敵がやってきて、ただでさえしんどい富士登山に睡魔との戦いが追い打ちをかけることになります。
ですので、明るいうちに歩き、どんなに遅くとも日没前には山小屋に入るようなスケジュールにしましょう。ご来光が見たければ山小屋の前で見て、明るくなって来てから歩き出せば寒さに耐えるという仕事も減りますし、防寒着も減らせます。
時間はたっぷり取る
とにかくのんびりのプランを立てることが重要です。五合目では準備や食事、トイレなどを含めて2時間の休憩を取り、高度に体を慣らします。”ペースを保って歩いて”といっても、子供にはなかなか難しく、結局、ちょっと歩いては座りちょっと歩いては座り、の繰り返しになることもよくあることです。
なので時間はコースタイムの2倍を見込んでおいて良いくらいでしょう。特に歩き始めにハイペースで歩くことは高度順応上良くないので、景色を見ながらのタラタラ歩きくらいがちょうど良いと思います。
しかし、長い休憩は体を冷やすため、よくありません。休憩は5分か10分にして体が冷えきってしまう前に出発するようにうまく声掛けをして誘導しましょう。
トイレ代をケチらないで水分を取ろう
高山病を防ぐために、水分補給をして排泄するという流れは重要です。ガブ飲みは良くありませんが、「そんなに飲んでばかりいるとトイレに行きたくなっちゃうよ!」なんて言わずに、水分補給はこまめに、しっかりさせましょう。ペットボトル代やトイレ代が多く掛かるかもしれませんが、それは必要経費として初めから考えておきましょう。
次のトイレまで持つかどうかが不安だったり急にもよおす心配に備えて、携帯トイレを持参すると良いでしょう。使わなければ災害用としても役立ちます。
登山道も山小屋も混雑を避けよう
富士山の山小屋や登山道での混雑は、大人にとっても大きなストレスになります。一般論ですが富士山の山小屋でのサービスに不満を感じる人が多いことも事実です。混雑した新宿駅を想像してみるとわかると思いますが、そのようなイライラしてしまう混雑の中で子供のケアをするのは疲れますし、混雑した登山道では落石や人なだれなどの危険もあります。トイレの順番待ちをせざるを得ないなども想定されます。
このような理由から、子どもと一緒ならできれば平日が良いでしょう。どうしても週末になってしまうなら、富士山が激混みする週末やルートなどは例年の人数統計からある程度わかっていますので比較的空いている日とルートを選択しましょう。
下山が心配なら
富士山の4つのルートはそれぞれ特徴がありますが、富士宮ルートが距離でも時間でも最も山頂に近い登山口です。出発地点である登山口が2400mと御殿場口五合目より1000mも高いため、高山病発症のリスクという点では高いといえますが、そこは五合目での十分な休憩とゆっくり登ることで対処するとして、登りを嫌がる子供には短い距離というのは魅力的です。
ただ、下山も同じ道を歩くため、段差をうんしょと下りることが多いので、背の低い子供にはなかなか大変と思われ、実際に転倒による事故が多いことも統計でわかっています。落石を発生させてしまう危険もあります。
なので、たとえば、下山には富士宮ルートを使わず、吉田ルートの下山道を取るなども良い手だと思います。吉田ルートの下山道はブルドーザーで均してあるので幅も広く、段差がないので転倒の危険は減ります。 親の中には「子供が登れたとしても、下れるのか心配」と思う方も多いと思います。実際普通の登山でも、疲労時の下山でのちょっとした場所での捻挫や転倒はとても多い事故ですが、吉田ルートの下山道はクタクタでも歩きやすいと言えると思います。
このように入山口と下山口を別にするためには電車とバスで富士登山に向かう必要があり普段自動車ばかりの人は不便に感じるかもしれませんが、登山と温泉のあとの長距離運転はとても危険なので、安全対策という捉え方もできます。
雨が降ったら諦める
これは、登山用のトレッキングシューズとレインウェアを持っていない場合になりますが、雨が降れば運動靴などは濡れてしまいます。防水のトレッキングシューズを履いていても、大雨の時などは中まで滲みてしまって気持ち悪いなあと思いながら歩くこともあります。
しかしトレッキングシュースなら足首の支えや靴底のグリップなどはしっかりしていますが、普段履きの運動靴はそれはありません。悪いコンディションの時にこそ大きな差がでてしまいます。
雨の時は富士山はとても寒く、晴れていても休憩時には体が冷えがちなのに、ビニールのカッパだとムシムシとこもりたくさんかいた汗が体を冷やします。さらに風が出れば体温も奪われ危険な状態になります。富士山では軽装備のために低体温症になってしまう人も多く、軽装備での雨天の富士登山はキケンです。
なので初心者こそ、弱い人こそ、ちゃんとした装備を準備したほうがよいです。そうでない場合はさっと諦めて「またのチャンスを狙えばいい」、という心構えで山に行きましょう。
あきらめが肝心
上にかいた雨天時のあきらめの他に、ご来光をあきらめる、お鉢巡りをあきらめる、剣ヶ峰をあきらめるということもポイントだと思います。どうしてもご来光をと思うと、混雑している吉田ルートを選びたくなってしまいます。 吉田ルートはルート上のどこからでもご来光が見えるというメリットが有り、登山者の6割がこのルートを選び、多くが八合目の山小屋に泊まり山頂で御来光を見ようとして大混雑します。なのでご来光をあきらめれば選択肢が広がるというわけです。
お鉢巡りも楽しいルートですが、道もズリズリとすべりアップダウンもあり、なかなか体力が必要とされるースです。山頂に立てればどこからでも雄大な火口が見下ろせますから、剣ヶ峰(事実上の最高峰)とかお鉢巡りは望まずに、ちょっとでも余裕を持たせたプランにしておくことも一案です。
まとめ
子供に合わせて計画を立てていけば、かなりの不安を事前に解消することができます。大人にも余裕が生まれることは登頂成功へのアドバンテージです。
その他のポイント
体温調節、靴の調節などのチェック
子供は大人のように、ちょっと暑いから1枚脱いだりとか、冷えそうだから1枚早めに着ておく、などという作業をあまりしません。暑くて頭からダラダラ汗を流しながらダウンを着て遊び続けたりします。
しかし登山では、重ね着、着脱による体温調節というのは必要なテクニックの一つです。ちょっと涼しいなと思っても歩き出す前は1枚脱いで汗をかき過ぎないように工夫し、休憩に入ったらまだ暑いと感じていてもとりあえず1枚羽織って体が冷えすぎるのを防ぎます。たった5分の休憩で着たり脱いだりととても面倒ですが、そのため取り出しやすい場所にしまっておき、意識的に体温調節をするのです。
子供はもちろんそなんなこと知りませんし、寒いとか暑いとかも言わないことが多いので、親がよくチェックして声掛けすることが必要です。
また、靴に関しても同じで、ちょうど快適な履きごこち、というのはわからないと思います。特に下山時は指が靴の内部にあたっていないか、足首をしっかりサポートしているか、甲はきつすぎないかなどを休憩のたびに聞いたり見たりするくらいでも良いと思います。そしてちょっとでも靴ずれ傾向が見られたら早めに絆創膏やテーピングテープを貼って保護しましょう。
観察とセーブ
実は富士山における病気の発症率が最も高いのは20歳代という驚くべきデータがあります。若いから体力に任せてハイペースで登って高山病になったり、若さを過信して軽装備で登って低体温症になったりするのです。
子供も同じように初めのうちは体力にまかせてずんずん進み、いっぱいしゃべって走ったり下ったり戻ったりなんかしてはしゃいでしまうかもしれません。後々まで体力が持つかどうかなんて考えて動かないものです。難しいことですが、そこをセーブさせるのも重要です。
上に書いてきたような注意事項の他に、特に食欲があるかどうかはよくよく観察しておいたほうが良いでしょう。疲れたり具合が悪くなってくるとまず口数が減り、好きなものも食べなくなります。そのまま食べないとシャリバテになってダウンしてまいますから、ゼリーなど少しづつでも食べるように促していきましょう。
また、私の経験ですが不調を訴えた同行者が吐いた途端見違えたように元気になったことが数回ありました。感覚から、高度障害から富士山で嘔吐したり吐き気を感じる人は多いように思います。
ビニール袋などをすぐに出るところに用意しておき、個人差もあると思いますが、”気持ち悪かったら早めに吐かせる(吐きたいか聞いてみる)”というのも頭の片隅に入れておいて下さい。汚物は漏れないように二重に包んで持ち帰りましょう。
モチベーションアップ
一回「イヤダ」となった子供をムリヤリがんばらせるというのはなかなか至難のワザです。体調不良にならないようにペース配分や快適な装備でなるべくスムーズに導く努力の他に、やはり特別な楽しみはあったほうが良いでしょう。
普段よりたくさんのとっておきのお菓子などは大きなモチベーションになるのではないでしょうか。「七合目についたら食べよう!」、「八合目で買おう!」などと盛り上げていくのです。そもそも登山中の行動食はおかしのようなものばかりですし、それでもカロリーも補いきれないほど消費するので、むしろお菓子祭りくらいのノリでも良いと思います。
あとは、焼き印をシール集めのような要領でコレクションしていくことがモチベーションUPになったという知人がいました。ただ長い金剛杖は子供には重く帰宅後も邪魔になりがちなので、短いタイプもおすすめです。ただ、全部集めようとするとかなりの出費になるというデメリットもあります。
あとは、富士宮ルート利用ならば”日本一高い山頂郵便局からハガキを出す”、というイベントはどうでしょうか。予め数枚書いてリュックに入れておけば「ハガキのために」と底力が出たりしないでしょうか。さらに予めハガキの送り主に、「山頂から送るからね!」と本人から電話を入れておくという小細工をしておくという手もあります。ここでしか押せない消印やオリジナル商品も販売されています。
ちなみに山頂郵便局は開山期間中はいつでも開いているという訳ではなく毎年変わるので、利用したい場合は日にちと時間を郵便局のHPからご確認下さい。
富士登山はどんなに楽しみにしていた大人であったとしても途中でイヤになる時がありますから、事前に富士山のTVを見る、富士山の絵葉書をトイレに貼っておく、当日までカウントダウンする、などこまめな盛り上げが功を奏することがあるかもしれません。
王道の、トレーニング
やはり大切なのは、王道のトレーニングだと思います。とはいっても、登山を長らくやって来て思うことは、普段からよく歩いたりよく階段を利用したり、子供だったら外遊びをたくさんする、という人なら夏期の富士登山なら特別なトレーニングは必要ないように思います。
やるべきなのは、普段の移動は車が中心、日中は机の前に座りっぱなし、という親や勉強中心の生活をしている子供などだと思います。そういう人が登山をすれば、当然のように疲労から体調不良になるでしょう。
なので、”体力”や”筋力”を付けるというイメージよりも、ウォーキングから始めて、スロージョギングやストレッチなどをしていって、”体が登るためのコンディションを整える、ウォーミングアップさせておく”というイメージで良いと思います。スロージョギングで肺の機能をイキイキさせておくことは高山病対策にもなりますし、体が運動する準備ができていることはケガの予防にも役立ちますので、親子ともにやるに越したことはありません。
子供の荷物はいずれ全部親が持つ前提で
子供がもう歩けないとダレてきたら「じゃあ、リュック持ってあげるから」となるのは必至です。これまで多くのそういう親子登山の方を目にしましたし、時には子供をおんぶしている方もいらっしゃいました。
なので、こうなることは必至と考え、まずは子供に余計な荷物を持たせないことです。荷物が軽いならばザックもナップサックのような簡易的なもので十分ですので(ショルダーベルトが落ちないように胸のベルトやヒモなどは有ったほうが良いです)、重くなくカサもないものが良いでしょう。
さらに親自身の荷物もできるだけ軽量化し、下から運ぶよりも山小屋で飲食したり水を購入するなどの利用をします。費用はかさみますが、この際”体力の温存が一番”と優先順位をはっきりさせてしまいましょう。
また、カードがいっぱい入った財布やジャラジャラとキーホルダーが付いたカギ、下山後の温泉グッズなど重い物は下界においてきて、電車の場合は駅や五合目のロッカーなども利用して軽量化に工夫しましょう。とにかく親にはいざというときに備えてちょっとでも余裕をもたせるようにしましょう。
まとめとエール
子供と一緒だといろんな配慮が必要なことは確かですが、原則は大人も子供も一緒です。つまりは装備やトレーニングを万端にして挑戦し、それでも状況が厳しければムリせずに帰ってくればいいだけのことです。パッとあきらめ、良い経験になった、と次回に目標を切り替えてられたなら、それはムダにはなりません。準備して望んだ登山は、やった分だけ経験値として上がります。山頂を踏んだかどうかはさほど問題ではないのです。
子供の体調や足取りを観察しパートナーとして挑む2日間はとても濃厚な思い出になると思います。家でゴロゴロすごす2日間よりもキャンプに行った2日間が記憶に残るように、キャンプに行った2日間よりも登山した2日間のほうが絶対に記憶に残ると言えます。親子で挑む富士登山は、親子で出来るとても有意義な取り組みだと思います。子供の成長も感じられ、絆も深まると思います。子供が自然から学ぶことの大きさはここで言うまでもありません。ぜひチャレンジして欲しいと思います。