熱中症の原因と症状。予防と対処法
このページでは、意外に侮れない「熱中症」の予防と対処法について書いています。
2019年の夏(5月~9月)では全国で約71,000人が熱中症により救急車で運ばれ、そのうち126人が亡くなりました。
スポーツでは野球に次いで熱中症の発生件数が多のは、実は登山ということです。
熱中症とは。熱中症の原因と症状。
体の中に熱がこもってしまって起こる異常の総称です。
初期段階は頭痛やめまい程度で、普通の疲労や睡眠不足とあまり変わらないので、気づかずにムリをして悪化させてしまうケースが多いことがコワイところです。
20才の知り合いが熱中症で下山を余儀なくされたのは、約10日間ほどの夏合宿の初日の行程でした。 梅雨が開けて暑さが本格化してきた時期に、重い荷物を担いで蒸し暑く標高の低い樹林帯を歩いていた時のことです。
荷物の重さだけでも体は経験したことの無いくらいのしんどさのはずですから、これがふつうの疲労なのか熱中症なのかなんて考える余地もなかっただろうと思います。
しかしこのような状況って登山ではふつうにあるので人ごととは思わないことが重要です。
熱中症になりやすい人
- 体力の弱い人
- 肥満の人
- 体調不良の人
- 暑さに慣れていない人
- 我慢強く引込み思案な人
- 高齢者
- 心疾患・高血圧・糖尿病の人
- 一度熱中症にかかったことのある人
熱中症になりやすい環境
- 蒸し暑い(湿度80%以上)、梅雨明けすぐ
- 前日に比べ気温が急上昇した時
- 蒸し暑い低山の長い登り
- 森林限界を超えた、直射日光が当たる登山道
- レインウェアなどを着込んでムシムシしている時
原因と症状のパターン
- 高温により血管拡張し血圧が低下→ めまい・しっしん(熱失神)
- 水分だけを飲んで塩分が不足した→ 手足や腹筋のけいれん(熱けいれん)
- 水分も塩分も不足した→ めまい・頭痛・吐き気・倦怠感(熱疲労)
- 水分も塩分も不足して体温調節ができなくなった→ 上に加え意識障害・錯乱・昏睡(熱射病)
放置すると死に至る危険性も高いので気をつけましょう。
熱中症の予防と対策
登山者は体に熱がこもっていないかをかなり意識的に気をつける必要があります。
衣類の着脱で体温調節
- 蒸し暑い樹林帯では半袖になるか、長袖なら袖まくりやシャツの前を開けるなどして体温を逃がす(休憩時は体を冷やさないように保温)
- 直射日光の当たる道では帽子をかぶり、通気性の良い長袖を着るか日焼け止めを頻繁に塗る
水分を取る
汗は体温を下げてくれます。また、血液の循環が悪くなると疲労を起こしますし、血がドロドロしてくると心筋梗塞や脳梗塞の原因にもなります。
塩分不足を防ぐため、スポーツドリンクか塩飴、梅干しなどを摂りましょう。
1時間の水分摂取量と持参する水の計画
これは1時間あたりに飲むべき水の量を体重別に示した表です。登山でどれくらいの水を担いでいったら良いのかを考えるときに参考になります(出典:登山医学入門 (ヤマケイ・テクニカルブック 登山技術全書) )。
また、登山前後にも200~400ml飲むと良いです。
体重 | 1時間 | 2時間 | 3時間 | 4時間 | 5時間 | 6時間 |
---|---|---|---|---|---|---|
40kg | 200 | 400 | 600 | 800 | 1000 | 1200 |
50kg | 250 | 500 | 750 | 1000 | 1250 | 1500 |
60kg | 300 | 600 | 900 | 1200 | 1500 | 1800 |
70kg | 350 | 700 | 1050 | 1400 | 1750 | 2100 |
80kg | 400 | 800 | 1200 | 1600 | 2000 | 2400 |
90kg | 450 | 900 | 1350 | 1800 | 2250 | 2700 |
熱中症になってしまったら
休息・体温低下・水分補給 が基本です。
- 風通しの良い日陰で休息をとる。うちわなどで仰いで体温を下げる。
- 水で濡らしたタオルなどで手足を先から中心へマッサージすると皮膚血管が広がって放熱効果がある。
- キツイ衣服をゆるめて血液の流れを良くしてあげる。
- 数秒失神した場合は横に寝かせ、手足を心臓より高くし心臓へ血流が行くようにする。
- 意識があればスポーツドリンクや塩分を摂る。一気に大量に飲むと嘔吐の原因になるのでゆっくり飲む。
下山の目安
症状の項の3になったら重症と言え、一刻も早い下山と医療機関への搬送が必要と言われています。
より具体的には次のとおりです。
- 話しかけて、意味不明の受け答えをするなら重症(意識障害)。
- 歩いてふらつく時は重症(運動失調)
- 体温が高い時は重症(症状の項の3以上では体温が高くなる)
- 高体温なのに汗が全く出ない時は重症(体温調節の破綻)
暑さへのトレーニング
暑熱順応といい、繰り返し暑い環境にさらされると次第に耐えられる体になってきます。
一日に1~2時間のトレーニングを7日~14日行うと、個人差はあるが数日で発汗量・皮膚血流量が増大し体温上昇や心拍数の増加が小さくなります。
夏山へ行く前にはエアコンを切ったり暑い環境に身をおいたりすることで、暑さに強い体づくりを心がけると山で暑さから受けるダメージがだいぶ違ってきます。
帽子はかぶったほうがいいの?
サンシールドつき。またメッシュ素材を配した通気性の良いハット
炎天下に頭や首を直射日光にさらした場合などに、皮膚や筋肉への血流が増加して、脳へ行く血流が低下することから立ちくらみやめまいが起こります。
この理由から、樹林帯を抜けた直射日光の当たる道では頭と首を覆い、さらにつばがあって日陰を作ってくれる帽子をかぶると良いでしょう。
生地が通気性が良いとベターです。
はやりのレインハットは?
雨の時にレインウェアを着ているとレインウェアの中が体温と湿度が高くなります。
そういった時にレインウェアに付いているフードではなく、レインハットをかぶると快適です。こもった熱を首から逃がすことができますし、音も聞こえやすくなるため安全度も増します。
しかし、晴れた日の蒸し暑い樹林帯で頭の暑さを感じつつもファッションでかぶり続けるのは考えものです。
体に熱がこもっているなら帽子を頻繁に着脱し、頭からもどんどん放熱しましょう。