初心者のための登山とキャンプ入門

登山靴の履き方とならし・靴ヒモの結び方

登山靴の履き方 イラスト

目的に合った靴選びも大事ですが、靴ずれをしないで歩くためには履き方がとても重要です。

高価なトレッキングシューズをいくつも買って試すわけには行かないですから、店員さんに相談して自分のしたい登山に適した登山靴を買ったなら、あとは靴下での調整と正しい履き方、ヒモの調整、こまめなチェックなどで合わせて行きましょう。

登山靴のちょうど良いサイズとは

登山靴の適切なサイズは人差し指一本入る、というイラスト

登山靴(トレッキングシューズなどもふくめ)は、普段履いている靴のサイズより1センチ大きなものを選びます。
足を入れてつま先を靴の先端につけると、かかとには指1本分入るくらいのスペースが出来ます。これが、一般的に丁度良い登山靴のサイズと言われています。

理由は、つま先に空間を残すためです。指の先が靴の内側に当たるようなぴったりサイズの靴だと、下山時に指先がどんどんぶつかって靴ずれやツメの損傷を起こしてしてしまうのです。

登山靴の履き方

もしできればこれを読んでから登山用品店に行ければ、理想的だと思います。登山用品店で登山靴を選ぶときは店員さんが必ず履かせてくれますが、なにげなく結んでくれるそのやり方にとっても重要なコツがあることがわかると思います。

登山靴はかかとを叩いて履く、というイラスト

1.ヒモは全体をゆるめる

ふだんはしないと思いますが、登山靴を履くときはまず靴ヒモ全体をゆるめてベロ(甲に乗る部分)を広げてから、足を入れましょう。

店員さんがこれをするのは、お客さんの足を入れ易くするためではありません。こうすることでベロのクセも取って理想の状態で甲をフィットさせるためです。

2.カカトをコツコツ

足を入れたらイラストのようにカカトで地面をコツコツと打ち付け、かかとをしっかりと収めます。
つま先に余裕ができて指を動かせることを確認して下さい。

足はイラストのような角度になっているかと思いますが、この角度は結び終わるまで変えません。というのは、動かして靴底を地面に着けようとすると、おそらくカカトが前にズレてしまいます。
カカトがずれないということは一番大事です。

3.ヒモは靴先からひとつづつ締める

靴ヒモは、ヒモの先端を引っ張ってキツくしようとしてはいけません。靴の先の方から丁寧にキュッキュと一つづつ上まで締めていきます。

ポイントは甲と足首部分をベロでどの程度フィットさせるか、です。ここは血が止まらない程度に、しかししっかりと抑えます。この部分で、足が靴の中でズレるのを防ぐのです。

甲と足首(特に曲がるあたり)がホールドされたと感じたら、それより上のヒモはゆる目に結んでも構いません。

4.屈伸をして靴のフチのスペースを確保

上部をゆる目に結んだら2-3回屈伸運動をする要領でしゃがんで足首周りを広げます。スネと靴の縁の間には空間があるくらいで十分です。
むしろスケート靴の様にきっちりとスネに沿わせるように結んであると、歩いて足首が曲がる度に靴の縁が当たって痛くなってしまうことがあります。

スペースを作っても靴のフチが足に当たるのが気になる場合は、靴下の上部を2重折りにするなどしてクッションを作ります。

正しく履けているかチェックしてみよう

以下の2つのイラストを元に、自分の履け具合がどうかチェックしてみましょう。実際の登山中もたまに思い出して見ると良いですね。

登山靴の履き方 チェックポイント

① 靴下は靴より長いものを履きましょう。靴のフチがスネに当たるのが気になる場合は靴下を折り返してクッションにしましょう

② カカトをしっかりはめたら、斜線の部分の甲とくるぶし当たりまでを、靴ヒモをしめることで靴にフィットさせます。足のこの部分は靴の内部に密着し、動かないようにしましょう。

③ 指先には空間ができ、内部のどこにも当たらないことを確認しましょう。指先は動いてOKです。

靴ヒモの結び方

靴ヒモの結び方は、実はいろいろあります。結び方で履き心地も変わってくるのでいろいろと試してみてください。

①下から靴ヒモを通す(ふつうの結び方)

靴紐を下から通す方法

一般的な靴ヒモの結び方です。Dリングの下から上へと靴ヒモをかけて行き、Dリングが終わったところで靴ヒモを再度締め上げます。
その後はその力を維持したままフックに靴ヒモをかけていきます。

靴ヒモが結びやすく締めやすく簡単に調節ができる結び方ですが、緩みやすいのでこまめに調節する必要があります。

②上から靴ヒモを通す(解けにくい結び方)

靴紐を上から通す方法

①の結び方とは逆にDリングの上から靴ヒモを通し、フックは上から下へとまわしてかける方法です。靴ヒモ同士が交差して押さえつけているので緩むのを防止する効果がある結び方です。
また万が一靴ヒモがほどけたときも、靴ヒモ全体がパラパラと緩んでしまうことも少なくなります。

馴れが必要な結び方ですので、登山前に結ぶ練習をしておきましょう。

結び方をミックスさせる

上記の方法以外には①と②をミックスして使う方法もあります。

私の場合は基本的には①の方法で靴ヒモを結んでいますが、一番下のフックと一番上のフックだけ②の上から靴ヒモを通すやり方で結んでいます。
フック全部を②の結び方にしないのは、靴ヒモがしっかりと固定されすぎると足首のあたりが窮屈に感じることがあるからです。

なので足首の良く動く部分だけは少し遊びをもたせるように①の結び方にしたりと、いろいろ変えることがあります。
私は登山靴を買って実際の登山に行くまでの間、通勤で履いて靴ヒモの結び方をあれこれ試したものです。

靴ヒモ その他のポイント

余分な靴ヒモを切る

靴ヒモの余った部分が長すぎるとじゃまになり木の根っこに引っかかって転倒の原因になります。長過ぎたら適当な長さに切りましょう。

靴ヒモ紐の切った先端を火であぶると、ほつれにくくなります。

さらにもう一度結ぶ

結び方はふつうの蝶結びになりますが、さらにその蝶全体もしくは蝶の輪っか部分だけをもう一回結ぶと、歩いている途中でほどける心配が減ります。

靴ヒモを交換する

靴ヒモが結びにくかったり力が入れにくかったりする場合には靴ヒモを交換してみるのも1つの方法です。
登山用の靴ヒモも登山用品店に用意されているので、いくつか試してみるのも良いでしょう。

また靴ヒモを違う色にすることで、山小屋で間違って靴を履いていかれるのを防ぐことも出来ます。

予備靴ヒモを一本は必ず持っていく

靴ヒモは摩耗や岩でこすれたりして切れることがあります。そんな時にスペアがないと大変です。1本は常にザックにしますようにしましょう。

また靴ヒモは長いヒモとしてたまに役に立つ時があります。例えばザックに入りきらなくなったゴミをザックに固定するとき、などいろいろです。

靴ヒモの調整

登るとき

登るときは上に書いた履き方で良いのですが、注意したい点は「上り坂で踏ん張るときに靴の中で足がズレないか」です。
足が少しでも動くようだと、足の裏、カカトなどにやがて水ぶくれができてしまいます。

このようなときはもう一度きちんと脱いで、靴下を整えてからシッカリとカカトを入れて丁寧に結びなおして下さい。

下るとき

山頂での休憩が終わって下り始める直前、必ず靴ヒモを締め直すようにしましょう。
登るときに履いた時よりも、ちょっとキツメに靴ヒモを結ぶことによって、足が靴の中で前にズレて指先がぶつかって痛めるのを防ぎます。

そして靴の上の方まで靴ヒモを結ぶ事が重要です。スキー靴とまでは行きませんが、それくらいしっかり足首がホールドされていると下るときにかかる太ももへの負担がかなり軽くなります。
また石など凸凹を踏んだ時の足首への負担がだいぶ軽減されます。

休憩時にこまめに調整を

登山では靴ヒモが解けると転倒の原因になり危険なだけでなく、せっかくいいペースで歩いる最中にしゃがんで靴ヒモを結び直したりするというのは以外に体に負担です。
とくに大人数だとそれが他のメンバーのペースを乱すことになりますから、休憩時に各自でキチンとチェックしておくことが大切です。

歩き続けると靴ヒモは徐々にゆるみますし、また逆に足が膨張してなんだかきつくなってくることもあります。
汗で靴下がヨレて足の裏にシワができれば必ず水ぶくれができてしまいます。入ってしまった小石を無視して歩いていると後になってすごくいたくなったりします。

痛い足で歩くのは本当に辛いですから、「休憩ごとに気を配って靴下と靴を整える」という習慣をつけるとよいでしょう。

事前の準備と早めの対処

靴下は登山用を

靴下は登山靴と足との間の重要なクッションです。ある程度厚みがあって衝撃を吸収してくれ、なおかつ汗をすぐに乾かしてくれる登山用の物を履きましょう。
内側が柔らかいトレッキングシューズならば厚めの1枚履きで良いでしょうし、硬い皮の重登山靴なら2枚履きをしたりというように調整をします。

ツメを切っておこう

ツメが長く靴の内側に当たるようであるとツメを痛めるだけでなく靴下も破れてしまったりします。放っておくと血豆ができたりします。

靴を履き直すことでとりあえず解決すれば良いですが、解決しない場合は早めにツメを切ってしまいましょう。

早めに絆創膏を

少しでも「擦れてしまったな」と感じたら、早めに絆創膏かテーピングテープを貼りましょう。

その時貼って履き直した後も靴の中で足が動いてしまうようであれば元も子もなく、すぐに絆創膏は剥がれ、靴ずれを増幅させてしまいます。足が動かないように正しく履くことが大事です。
また絆創膏やテーピングテープを貼るときは、足の汗をしっかり拭き取ってから貼ります。

またカカトの真下など力が最も入る所にテープの端っこがあると剥がれやすく、丸まった段差は靴ずれの原因になります。
テープの端っこはカカトの両サイドとか土踏まずの方とか、力がダイレクトにかからない所にくるようにするとよいでしょう。

登山靴のならし

購入したばかりの新品の登山靴をいきなり本番の登山で、というのは避けたほうが良いでしょう。

特にグループでの登山で「全体のペースを乱すわけにはいかいない」、という場合などは靴のチェックをするような時間はあまり取れないでしょうから、事前に町で履いてみたり何度もヒモを結んでみたりと、ある程度の慣れと練習をしておくとよいでしょう。
何度か履いていると「これくらいがちょうどよい締め具合かな」というのも感覚でわかってくるものです。

もしいきなり山で使ってみようと言うのなら、靴の試し履き登山というつもりで短めの行程で行けるとよいでしょう。
靴の履き方やヒモの結び方にタップリと時間が取れ、スペアの靴下なども用意しておくと良いですね。

町中での靴の慣らし作業は平地を歩くだけではなく、坂道の登り降りや階段の登り折りを繰り返すのが良い方法です。
体のコンディションよって履いた感じも異なりますので、何日間に渡って慣らし作業をできると良いでしょう。
特に皮の重登山靴などは硬いので数回履いただけで慣れるまでには行きませんが、とくに靴下の調整や中敷きの調整をすることができるでしょう。

目標としている山の高低差が大きかったり長時間にわたる登山の場合には、長時間の登山で足が痛くなってしまうと大変苦痛ですので、短い登山でまず慣らしをして、本番の登山の不安を無くします。

足がきつかったり、擦れてしまったら

登山用品店で散々履き心地をチェックしても、家に帰って履いてみるとなんだか違う、ということがあります。
良くあるのが足の一部分が圧迫されて痛いということですが、そんな時はまず靴ヒモの結び方を調整してみて下さい。

今まで靴ヒモをきつくしすぎていたのを多少緩めたり、靴ヒモの部分ごとに締め方を変えたりします。
結んでは歩き、結んでは歩き、と言うようにテストを繰り返し、具合の良い結び方を見つけます。

靴の中で足が動いてしまい、足が擦れるというのも良くあることです。甲の高さや幅が自分の足より広いときに起きてしまいます。

こんな時は靴下を変えてみるのも一つの方法です。履いている靴下よりも厚い靴下を履いたり、二枚履きにしてみたりして調節します。
また、インソール(中敷き)を変えると言う方法もあります。より厚めのインソールに変えることで、空間を調節することができます。

一番良いのは、登山靴を買った店に登山靴と靴下を持って行き、店員さんに相談することです。「ここが当たって痛い」などと具体的に言えば相談に乗ってくれるはずです。
店員さんが不親切だったり納得できなかったら、別の登山用品店に行って意見をやアドバイスを受けると良いでしょう。