登山用テントの選び方
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軽い山岳テントを買いましょう
登山でテント泊をしようとなると、テント以外にも寝袋やマット、料理道具や食材なども持ち運ぶことが多くなります。そうやってあれこれと必要なものが増えるとザックの総重量が増えていくので、テントは極力軽いものがおすすめです。
もちろんテントだけでなく全ての装備を軽くすることが大切ですが、テントは買い直しもなかなかできないので失敗の無い買い物をしたいところです。
体力やパワーのある方はあまり重さのことを気にしなくても良いかもしれません。しかし荷物が軽ければ体力も温存できますし、コースの選択肢を増やせたり長期縦走も計画しやすくなります。何より疲れが少なければ登山はより楽しくなるでしょう。
しかし「軽いテント」と言ってもワンタッチテントの様なものではなく、雨風に強くなおかつ軽い「山岳テント」でなければなりません。 このページではその山岳テントの特徴やおすすめのテントを紹介したいと思います。
登山用のテントとは
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登山用テントの特徴
一般的に登山用のテントは雨風に非常に強く設計されています。山の上では天気が荒れることも多く、立っているのがやっとなほどの風雨にテントが一晩中さらされることもあります。
そんな状況でも壊れずに身を守ってくれるのが登山用のテント「山岳テント」と呼ばれているものです。そのため、シンプルな構造で強いフレームを持ち、形状は風を受け流す様にデザインされ、なおかつ持ち運びが苦にならないよう軽くコンパクトにもなります。
また夜や雨風の強い時でも簡単に設営できる様組み立て安い構造をしているのも特徴です。居住性は重視せず、軽さと強さにポイントを絞ったストイックなテントが山岳テントと言えます。
山岳テントの特徴まとめ
- 軽くてコンパクトになる
- 風に強い
- 設営が簡単
- 荷物を置くスペースがある。
- ほとんどの地形で利用できる。
- 完全防水ではない。
最後の「完全防水」ではないという項目の補足ですが、テントに使われている素材のことを指しています。人間は呼吸し一晩で大量の水分を出します。仮にテントが完全防水だとすると、その水分は逃げる場所がなくなりテント内に留まり、寝袋を濡らし床に水たまりを作ってしまいます。
なのでテントは完全防水ではなく下で解説している「ダブルウォール」という構造を用いたり、また「シングルウォール」では防水透湿性の素材を使用したりしています。
キャンプ用のテントとは
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一方キャンプ用のテントは、快適に過ごせるよう居住性を重視した作りのものが多いです。
テント内の一人分のスペースも広く割り当てられ天井も高く設計されています。
そのため風には山岳テントほど強くなく、そして重く嵩張るのでザックに入れての持ち運びに向きません。
車(もしくは自転車、バイク)で持ち運ぶ、と言うのがキャンプテントの使い方になります。
テントの構造と特徴
ダブルウォールのテント
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登山用のテントに関わらず、キャンプ用のほとんどのテントは「ダブルウォール」という構造をしています。
ダブルウォールのテントは、アウター(レインフライ)とインナーの2重構造になっていて、外側のアウターは防水素材で雨を通さず、インナーには防水ではない素材を使用しています。アウターとインナーの間には隙間がありそこから蒸気を逃しています。
この様な構造で雨を完全にシャットアウトしつつもテント内に結露を発生しにくくしています。
またダブルウォールのテントは「全室」という空間を作れることがポイントです。全室は玄関の様なイメージで、そこに登山靴を置いたり簡単な調理をすることができます。
シングルウォールのテント
一方シングルウォールは1つの壁で雨風を防ぎテント内の蒸気を逃がします。そのためテントには防水透湿性の素材が使われています。
防水透湿性の素材で代表的なものはレインウェアにも使用されているゴアテックスです。ゴアテックスは例えば、3つのそれぞれ特徴の違うメンブレン(膜)を一つにあわせた素材になっていて、外部からの水の侵入を防ぎつつも内部の水蒸気を逃すという特殊な性格があります。
シングルウォールの良い点は軽いテントが多いこと、設営がやや早くできること、風が強い日にアウターがバサバサと音を立てないので静かなことなどがあげられます。
欠点はダブルウォールのテントに比べてやや価格が高いこと、また暖かい場所や雨の日に使用すると蒸気を逃しづらくなりテント内部が結露しやすくなります。
防水透湿性の素材はテント内部の温度より外部の温度が低い方がより機能し、その温度差がテント内部の蒸気を外に押し出すという様な仕組みになっています。
自立式テント
「自立式テント」と言うのは、地面にペグを打ったりロープを張ったりしなくても、ポールのテンションだけで自然にテントの形になるテントのことをいいます。
いわゆる一般的な「テント」というのはこの自立式で、「自立式でダブルウォール」のテントが登山でもキャンプでもほとんどのテントがこの構造になっています。
安全のためにはもちろんペグを打ったり張り網みをしなければなりませんが、それらをしなくてもテントとして機能します。
非自立式テント
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1kg以下の超軽量テントに多いのが「非自立式」のテントです。
自立式のテントとの違いはポールを通しただけではテントの形にならないことです。ペグや張り網、またはトレッキングポールを使用することで初めてテントとしての形になります。そのぶん自立式のテントに比べ設営に手間がかかります。
今まで登山をしていてこの「非自立式」のテントを使用している人をみた記憶がないので、ほとんどの人は選んでいないのだと思います。
理由はやはり設営の手間でしょう。テント場が常にフラットで広くてペグが地面に刺しやすい、もしくは手頃な石が転がっている環境であるなら非自立式のテントも良いかと思いますが、テント場の環境は様々でそんなに都合の良い場所が多いわけではありません。
もちろん工夫をすれば非自立式のテントを張ることもできますが、初心者の方には扱いづらいので慣れてから、さらに荷物の軽量化を計る目的で利用するのが適していると思います。
初心者におすすめの代表的な軽量テント
登山者に選ばれている代表的な山岳テント、テント場に行けば必ずと言っていいほど見かけるテントを紹介します。
紹介している4つのテントは全て日本のメーカーのもので、自立式でダブルウォールのテントです。
また紹介しているテントにはそれぞれ数サイズのテントがありますが、ここではその中の1番小さな一人用のテントを紹介しています。
アライ / エアライズ1
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山岳テントの大定番はライペン(アライテント)のエアライズでしょうか。テント場でみないことはありません。
春夏秋の3シーズン用テントですが、オプションの外張りを使用すれば冬季にも利用することができます。、アウターをバックルで取り付けることができるので素早く設営することができます。(エアライズ2のレビューはこちら)
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- 総重量:1.5kg
モンベル / ステラリッジ テント1型
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モンベルの山岳テント、ステラリッジテント1です。価格も比較的安めなので出費を抑えたい方によいかもしれません。
オプションも豊富でより快適な空間を作ることができます。
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- 総重量:1.44kg
プロモンテ / VL16
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昔から山岳用のテントとして人気の高いプロモンテのVLシリーズのテントです。
このプロモンテのテントは他と少し違い、インナーテントをポールに吊り下げる「吊り下げ式」という方法でテントを組み立てます。吊り下げ式のメリットは強風でもテントが飛ばされることなく設営できることです(テントを張る前にペグを打てる)。
また入り口は長辺にあるので入りやすく、全室は広いので調理スペースとして有効に使えます。
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- 総重量:1.5kg
エスパース / エスパースソロ
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室内空間が広く居住性に優れています。また入り口が広いだけでなく入り口の反対側にも小さな窓があるので風通しが良く、暑い夏でも過ごしやすい作りになっています。
エスパースのテントもエアライズと同じくテント場でみかけることが多く、長い間使用しているファンの多いテントです。
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- 重量:1.50kg(ペグは別:0.1kg)