登山地図「地形図」の読み方と楽しみ
別のページで紹介している「山と高原地図」と並行して使いたいのが、地形図です。地形図にはその山がどんな形をしているのかが正確に詳細に表されています。
道迷いを防ぐだけでなく、地形を知りながら歩くことは、山歩きにたくさんの楽しみを与えてくれます。
地形図とは
地形図とは、国土地理院が発行している地図で、日本全国をカバーしています。4311枚あり、くっつけると日本が出来るというロマン溢れる地図です。
これは東京付近ですが、このように地形図には代表的な地理の名前が付けられています。
登山では25,000分の1の縮尺のものを利用します。
1/25,000では、1cm=250mです。この詳細な地図を持って登山をします。
一枚278円(税込)で、大きな書店で取り寄せたり日本地図センターホームページよりオンライン購入することができます。
地形図を買わないで入手する方法
昔はWeb情報がなかったのでいちいち書店で購入していましたが、現在では地形図情報をWebで入手することができます。
こちらで、目的の山を表示します。印刷機能を利用しても良いですし、画面コピーしてペイントやワードなどに貼り付けて印刷してもよいです。
ちょっと注意したいことは、貼り付けたり印刷したりと作業をする段階で画像の大きさをいじってしまうと実際に印刷した地形図の1cmは実際の250mでは無いかもしれません。ただ、水平に歩くわけではないのでそんなに気にならないかなと個人的には思います。
地形図と山と高原地図の違い
こちらは、山と高原地図40”木曽駒・空木岳 中央アルプス”の中の越百山の部分です。
そしてこれが、同じ部分の地形図です。地形図でもWebからコピーしたものは陰がつけられていて多少見やすいですが、それでもやはり立体的に見えてくるまでには慣れが必要かもしれません。
そして地名の記載もまばらで、もちろんコースタイムなどの情報も載っていません。
書き写して持ち歩く、がオススメ
そこで初心者におすすめなのは、この山と高原地図の情報を、印刷した地形図に書き写すことです。地名やコースタイムなど、歩くルートに関するもの全てです。その作業を通して、自分がどんなルートをどんな行程で歩くのかの把握ができますし、なぜか下山後も記憶に残るのです。
また、山と高原地図は大きいので歩きながらしょっちゅう出して広げるのは不便です。
また「コースタイム3時間」ならば、20分毎に山と高原地図を取り出してみてみても、そもそも縮尺が大きいのでどこを歩いているのかピンときません。しかし地形図なら、10mごとに等高線が引かれています。ちょこちょこと地図を取り出して注意して歩いていると「あ、これは地図のこの沢だな」「もう2ー30mで尾根に上がるんだな」と分かるのです。
初めは、グニャグニャの線だらけでなにがなんだかわからないと思います。しかし休憩のたびに「今は何m地点なんだろう」と地図とにらめっこしていると、だんだんと見えてくるものです。
地形図をもっと詳しく見てみよう
地形図が役立つシーンのひとつは、例えばこんな時です。
これはJR奥多摩駅から歩いて石尾根という長い尾根を登って、日本百名山であり東京都の最高地点である雲取山に登ろうとする計画です。
このような里山では地図に記載されている以外にもたくさんの仕事道があることが多く、また「登山口」の道標も無いことも多々あります。
そんな時に詳細な地形図は役立ちます。鳥居、建物などを目安に、車道を歩いたり山道を歩いたりしながら目的の尾根へと向かっていきます。これもまた、探検のようでたのしいことなのです。
また、登山前後のこの里山歩きは登山のひとつの楽しみでもあります。
単純に「おーこんな山奥で生活している人がいるんだ!」という驚きもあったり、絵葉書にしても良いくらいの田んぼの風景に心が癒やされたり、「こんな暮らしをいつかしてみたい」と思ったり。
また山里には無人の野菜売り場やしいたけ屋さん、お蕎麦屋さんやこんにゃく屋さんなどもよく見かけますね。思いがけずおいしい湧き水や循環していない天然温泉に出会ったりもします。ガイドブックや旅番組で紹介されるような似たり寄ったりな観光地ではない本物の癒される景色を味わえる、それも登山の魅力だと思います。
地形図の基本の読み方
薄茶色のグニャグニャの線は等高線といって、10mごとに引かれています。50mごとに少し太い線になっています。
地図の上部に「550」の数字があるのが見えますが、これをたどっていった所は全部標高550mという意味になります。では0mはどこか、というと日本の場合は東京湾の平均海面になります。
また、登山道に当たる部分は破線のところで、幅が1.5mない道、という規定です。実線は1.5mから2.5mの道路で、二重線にもいくつも種類がありますがどれも車が通れる道路になります。
青い実線は幅1.5m以上かつ長さ250m以上ある川を表しています。なので地図上に川はなくても、実際は流れていたりします。
沢は、雨が続けば現れたり晴天が続けば枯れたりもするので、山ではやはり青い線の長さではなく地形で沢を判別します。
等高線がくっついている所は傾斜が急ということになります。上の図では、やはり奥多摩駅のある部分には傾斜がありません。
地図表記豆知識
地形図には、等高線の他にたくさんの記号で表されています。地形図の
人工建造物で登山中に参考になるのは、鳥居、人の家、送電線、ダム、橋、林道、三角点などです。人も道標も少ない静かな山を歩く時はとても参考になります。
また、地形図にあるものを見つけながら歩くこともなかなかたのしいことです。
地形では、岩、崖、万年雪などがあります。これも、すべてが表示されるのではなくて基準が決まっています。たとえば万年雪というのは平年、夏にも溶けずに年を越す雪の事で、9月の時点で50m以上あるものが地形図上に記載されるんだそうです。
また、歩いていて特に変化があるのが植生です。「針葉樹林」のマークがあれば、奥多摩などの生活に近い山ではキレイにならんだ杉の植林が多かったりします。
歩きながら、松や杉の針葉樹が終わってグネグネといろんな木が出てきたなぁと思って地図を見ると「広葉樹林」マークになっていたりします。
一面に熊笹が生えているようなところは「しの地」マークになっていますし、標高が2500m付近になるとハイマツが現れて地図にも「はいまつ地」マークが書かれていたりします。
頂上付近が「荒地」マークで覆われていたら、樹木が無くて見晴らしがよく、お花畑があったり湿原になっていたりすることもあります。
入門本とマップケース
入門講座 2万5000分の1地図の読み方
地図や地形図を勉強したい、と思っている人に絶対におすすめしたいのがこちらの本です。ボリュームがある上に楽しく読み進められますし、何より「地図ってこんなに面白いんだ」と感じてもらえると思います。この本を読んだ後の登山は、きっといつも以上に楽しく感じますよ。
マップケース
地形図を雨から守るため、特にインクジェットでプリントした地形図は汗でも流れてしまうくらいなので保護が必要です。こういった水に強いマップケースの利用がおすすめです。
おまけ 立体で見る地形図
これは日本百名山である鳥取県の大山です。入山口である大山寺付近から、これから登ろうとする夏山登山道と大山を見上げています。
ほぼこれに該当する地形図がこちらです。
この地形図から上の山の形を想像するのはとってもむずかしいですね。 「カシミール」という無料ソフトをダウンロードすることでこのように立体的に地図を見ることができます。カシミールについては下記リンク先で詳しく解説しています。