登山をはじめる 1 -仲間・学校・ツアー・サークル-
実際に「登山始めたい」と思ったとき、まず何をしたら良いのでしょうか。
このページでは、その入り口として登山仲間を見つけるパターンを具体的に説明しています。登山がまったくわからない初心者の方向けに、いろんなギモンに答えられるような内容を書いています。
身近に経験者がいなくても大丈夫です。いろんなパターンがあるので、自分に合う方法があるはずです。また仲間を作らずに一人で登りたい場合にも触れています。
身近で経験者をさがす
なんだかんだ言っても、経験者を探して一緒に行くことが一番てっとり早いです。そして、まれに独り歩きをモットーとしている人もいますが、多くの登山者はいっしょに楽しめる仲間がほしいと思っているものです。好奇心に満ちた目で見るもの聞くものを楽しんでくれる同行者は、言葉だけでなく本当に喜びを2倍にしてくれる存在です。
なので、経験者が身近にいたら遠慮せずに「山に連れてってください」と頼んでみましょう。
もし「いいよ」と前向きな答えが返ってきたとしても、ぼんやり連絡を待っていてはいけません。たいがいの人は、行きたいと言った言葉を社交辞令と捉えるはずなので、何度かメールを送るなり「登山靴を買おうと思いますが、オススメはありますか?」とか「この日とこの日が空いていますが、どこでも良いので山に行きたいです」という具合に伝えて、「具体的に考えてます」ということを重ねて示す方が良いでしょう。
装備はまかせっきりにしませんよ、という意思表示を
そのとき、大切なポイントがあります。実は、初心者を登山に連れて行こうというときに一番やっかいなことは「装備を用意してあげる必要があるかどうか」という問題です。装備の中でも、レインウェアだけはどうしても一人に一つ必要で、傘とか300円のビニールカッパというわけにはいきません。
経験者が自分だけで行く場合ならば、当日の朝の天気によって「今日は快晴だ」と思ったら、レインウェアをもたずに2~3時間のハイキングを突然することもあるかもしれません。
でも誰かと「○日に行きましょう」と約束するならばその日が快晴になるかどうかはわかりませんし、二人の都合がある訳ですから、「天気が良さそうで山に行く気分になったときに電話しますから」という約束をしていたら、予定と天気が合うのがいつになるかわかりません。
やはり雨天が確実でない限りは計画実行となるでしょうし、そもそもを言うと、どんな快晴であってもレインウェアを持参するのは登山者のマナーです。
たとえば、途中で足をくじいて助けが来るまで待機することになったとき、雨が降ってきたら体が冷えてすぐに命の危険につながります。
こんなふうに、いつなにがあるかがわからないのでそれに備えておくことが必須だからです。
なので「すぐに自分の分の登山用のレインウェアを用意します」ということを伝えるべきです。もしくは「新聞配達で使っていた上下に分かれたレインウェアをもっています」というように、自分が準備できる装備を知らせましょう。
登山ではゴアテックスなど体のムレを逃がす素材のレインウェアを着るのが基本ですが、季節とコースの長さや天気等の条件によっては通気性のないレインウェアでも大丈夫です。
もし出費をいやがって300円のビニールガッパでやり過ごせば良いや、と思うのであれば、あなたには「では山へ行きましょう」というお誘いは来ないかもしれないし、お誘いがあってもそれ相応の、短くて手軽なハイキング的な山になるかもしれません。
もしくは、登山用品を宅配でレンタルすることもできるので「こういう店があるので、レンタルするつもりですので準備万端です」と伝えておくのも良いでしょう。
もちろん登山靴もあったほうが良いのは確かですが、たとえば富士山に運動靴で登っても-人によりますが-不可能なことは無いのです。
それに引換えレインウェアは必須ですし、たとえ借りたとしても破いたり汚したりメンテナンスにも気を使います。
めんどう見のよい経験者だったら自分のお古のレインウェアを貸してくれたり、登山仲間から借りてきてくれるかもしれませんが、借りる側は相手がしてくれる準備の手間と、本来はとても高価なものであることを汲み取りたいところです。
経験者に計画を見てもらう
もし「連れて行ってください」なんてずうずうしく言い出せないときや「そこまでの人間関係ではない」という場合、それから、頼んだけど「ぜひ行きましょう」とならなかった場合でも、アドバイスを受けて計画を見てもらうのも良いでしょう。
または、「いついつに、だれだれと日帰りできる山に電車で行きたいんですが、おすすめコースはありませんか?」と言った具合にです。
しょっちゅう山に行っている人なら「その時期なら…」と、頭の中の引き出しからサッと出てくるでしょう。基本、人は自分のもっている知識や経験は聞かれてうれしいし、可能であれば人に役立てて活かしたいものです。
それに、興味のある人には自分の経験を授けたいものです。
なので勇気をもって聞いてみて、教えてくれたらしっかりメモして帰り、自宅で調べます。
そして別のページで詳しく説明していますが、登山計画書を埋めていくように作成していくと必要な情報がどんどん埋まっていきますので、完成したら見てもらうのが良いでしょう。
そのときにわからないことなども聞いてみると良いでしょう。
不思議なもので、やる気があるのかないのかわからない人や、他人任せにしている人には、教える方もそれなりの対応になるものです。
どこまで手を貸すか、協力をするべきかを図っていることがあります。あまり押し付けるのもうっとしいと思われてしまうかも、という遠慮もあるでしょう。
でも知りたい側が自ら時間をかけて手足を動かして努力しているならば、そのうちに心が動いて協力しようと思うものです。
そのうちに、「○○さんを紹介してあげるよ」「この装備、いらなけど使う?」なんて言ってくれるかもしれません。
登山学校に行く
最近では「登山学校」という、単に登山をするだけではなく学ぶことを目的とした登山ツアー・講習会がたくさん行われるようになりました。
「ずっと通い続けるお金はない」と思うかもしれませんが、1回2回参加するうちに大体の様子がつかめ、次は自分で計画できるようになりますから、ずっとそこで登山を続けていくわけではありません。
できるならばそこで友人を作り、「次回は自分たちだけで行ってみませんか」となりたいところです。
やはり教えてもらう登山は有意義ですが、自分で組み立てて実行することにこそ登山の醍醐味があります。
また同じ講習会に出ているということは同じくらいの初心者という可能性も大きいですから、スタートを同じくする者たちが自分たちで勉強しあって切磋琢磨していくことは、実は経験者に連れられて行くよりも充実感があるともいえます。
登山学校は、登山用品店やツアー会社が行っていることが多いです。日本全国で開催しているものもあります。
机上講習などは店舗で行われ、無料か格安で参加でき、とても勉強になるのでおすすめです。
無料の机上講習会に出て、ガイドさんの人柄や会社の雰囲気を知ってから登山学校に申し込むこともできます。
- 石井スポーツの登山学校(登山用品店)
- モンベルの山歩き講習会(登山用品店)
- 好日山荘の登山学校(登山用品店)
- アドベンチャーガイズの登山教室(山岳ツアー・ガイド会社)
- クラブツーリズムの学べる登山(山岳含む旅行会社)
- 毎日新聞旅行の安全登山教室(山岳含む旅行会社)
このほか「登山教室」というコンテンツを掲げていなくても、登山ツアーを催行する旅行会社が単発でさまざまな講習会を企画しています。
登山ツアーに参加する
登山ツアーは旅行のツアーと同様に、何人かの参加者を募り、添乗員と時には山岳ガイドとともに登山をします。「教える」というよりも「そのコースを歩く」ことが基本の目的なので、登山についてのイロハを教えてもらうチャンスはなかなか無いかもしれません。
添乗員さんはもちろん個人でも登山をされているか、少なくとも自分の登山をしつつお客さんのお世話ができるくらい最低限の技術や知識を備えている人が付くはずです。
しかし点呼とかスケジューリングなどで忙しい可能性もあります。富士山の登山ツアーなどでは、添乗員は登山に関しては何も関与せず、五合目から自由行動で集合時間までに帰ってくるというパターンもあります。
山岳ガイドはつくか
山岳ガイドは付くことも、付かないこともあります。
山岳ガイド・登山ガイドとは”公益社団法人日本山岳ガイド協会”が作った試験に合格し、資格をもっている人のことを指します。
ガイドできる内容のレベルは細かく分かれており、中級以上のツアーなどで同行するときは「日本山岳ガイド協会の認定ガイドが同行します」などと書いてあります。
この資格は民間の資格なので必ずしも持っている必要はないし、レベルの高い資格や海外登山経験を持っている人が自分にとって良いガイドということにはなりません。
しかし「山岳ガイドを職業としている人と登りたい」に「プロに質問したい」という希望がある場合は、山岳ガイドが同行するのか、レベルはどのくらいなのかを事前に確認すると良いでしょう。
登山ツアーのメリット
このように登山ツアーの基本的な性格は旅行であるため、何かを教えてもらうというものではありませんが、それでも数回参加していけば登山のやり方が大まかにわかってくるというメリットがあります。
服装、装備、持ち物、食べ物など参加者の様子や会話からダイレクトに知れますし、登山では一日中行動を共にしておしゃべりする機会も多いので気の合う仲間を見つけるきっかけにもなります。
また、登山ツアーの最大の利用価値は移動の便利さでしょう。
通常、入山口と下山口が異なるルートを歩くときは、電車やバスを駆使して行きます。
これはこれで楽しいことなのですが、いかんせん、下調べにも時間がかかりますしバスの待ち時間など時間的ロスもあります。
さらにバスが入っていない登山口へは、タクシーを利用していかざるを得ないので、一人だと高く付きます。
しかし登山ツアーなら「新宿駅に○時集合」だけで、あとは効率よく入山口まで運んでくれ、登り終わったら反対側の下山口にバスが待機して家へと連れて帰ってくれます。
自分で電車を利用して行くより交通費が安く済むことも多いし、おまけに温泉にも寄ってくれたり仮眠も取れたりして、ニーズが合えばとても便利に使えます。
登山ツアーのデメリット
デメリットとしては、やはり団体行動ですのでペースの問題があるでしょう。
登山では体のペースを保つために50分歩いて5分休憩とか60分歩いて10分休憩などのリズムで歩きますが、疲れたからといって勝手に座り込むことは出来ません。ムリをすると具合が悪くなったり事故の元になるので、選ぶ際は初心者向けのゆとりのあるプランから選びましょう。
仮に、登山ツアーが肌に合ったとしても、そこに安住するのはおすすめしません。「連れて行ってもらう」スタイルでヨシとしてしまう危険性があります。
やはり基本は自分が主体となって計画し、知識を付けて一人ひとりが自立して登るのが登山の醍醐味であり、安全のために必要な前提です。 他の人の立てた計画にいっしょに参加する立場だとしても、その内容を把握しているのか、なにも落とし込まずにみんなに付いていっているのかでは大きな違いです。
ぜひ自立した登山者を目指し、ブラッシュアップする意識を持つことをおすすめします。
山岳会・山岳サークルに入る
思い切って山岳会や山岳サークルの扉を叩いてみることも、手っ取り早く登山を進める一つの方法です。「初心者歓迎!」と掲げている所も多いですし、体験会や、まずは机上講習などに参加して雰囲気を知るのも良い方法です。
通常、大勢会員がいる山岳会やサークルの中では、いくつも同時進行で山行計画が進んでいます。
いつも全員で1つの山行に行くわけではないので、初心者だから「ついていけるかどうか」を心配する必要はそんなにありません。会の中でもハイキングや自然観察を中心とした計画に参加すればよいのです。
自分には厳しいかなと思ったら、その山行への参加を見送ることもできます。 中学校の体育会系の部活ではないので、一律に強制ということはありません。皆、仕事や家庭の事情がある中で活動しているのが社会人山岳会・山岳サークルなので自分で決めていけばよいので、心配しないで話を聞きに行ってみましょう。
メンバー構成も見よう
ただ、居心地の良さを考えると、メンバー構成は大事です。
たとえばシルバー世代の方がまったりとした登山を希望しているなら、そういう趣旨をはじめからうたっている山岳会か、そういった登山をしているグループが実際にある会に入ったほうがスムーズです。
逆に若い人で、「いろんな技術を覚えて、ゆくゆくは岩登りやアイスクライミングなんかもやってみたい」と思っているなら、そういったこじんまりとしたシルバーメインの会に入ってしまうと物足りなくなるでしょう。
その場合は、ある程度中堅の世代がいて、精鋭的な登山もしているグループがあるような山岳会を選んだほうが、次のステップの楽しみが見えます。やる気次第ではもっともっと先かなと思っていたようなハードな山行にお声がかかって、一気に登山の世界が広がることもあるかも知れません。
通いやすさも気にかけよう
ほかに、会を選ぶときの注意点としては、会の拠点に自宅や職場から行きやすいところが良いでしょう。
多くの社会人山岳会は、平日の夜、月に1回とか2回とか定例会をもち、山行の計画などを練ったり勉強会をしたりします。このときに職場や自宅からあまりに遠いと負担になります。
地元で探すには、「山 サークル ○○(地元の地名)」などでインターネット検索すると、たくさん情報が出てきます。公民館などに登録している山岳会やサークル、近くの登山用品店においてあるチラシなども参考になります。
下記にリンクを貼った日本山岳会や東京都山岳連盟などは大きな組織ですが、個人会員も入れます。地元で見つからない場合はこういった大きな組織の門を叩いてみると、意外と近所の人がいて良い登山仲間になるかも知れません。
他には
会に入らずにいっしょに山に行く個人を探そうとなると、インターネットやフリーペーパーを見て探す方法もあります。
趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)や、流行はすたれましたがちょっと前に流行ったmixiやジモティーなどのような「コミュニケーションサイト」がそういったものになります。
どんどん変わっていくので最新ではどんなものが一番栄えているのかわかりませんが、登山を始めたばかりの人が集まってワイワイ話し合っているコミュニティもありますし、登山経験者が「登山を一緒にしませんか?初心者歓迎」などのように仲間を探していることもあります。
しかし、特にインターネット上で不特定多数の人が集まる場所では、どんな悪意を持った人がいるとも限りません。信頼のおけそうな人を探し、十分に連絡を取り合うよう心がけましょう。
この点、地元の掲示板やフリーペーパーなどの場合は、ある程度住んでいる場所が分かる点で少し安心感があり、また近所である可能性が高いので良い仲間が見つかれば、この先近くの山に行くときなどの計画もしやすくなるというメリットもあります。
一人で登山を始めたい
登山に求めるものは人様々ですが、一人で気軽に歩く登山がしたいという人もいるかと思います。
これは性格に由来するところも大きいと思うので、どちらが性に合っているかというところで仕方のないことだと思います。
実際に、山に行くと、多くの人が一人でマイペースで歩き、一人でテントを張っているのを見かけます。自由度や気楽さが大切という人もいれば、仕事が忙しい日々の中で山に行こうとするとそうならざるを得ないという人もいると思います。
このように気楽に見える単独行・単独登山なのですが、実は「単独行はやめましょう」と避けるべき行動とされている現実があります。
最大の理由は遭難です。登山では人がほとんど通らない場所で不測の事態に見舞われる可能性もあるレジャーですから、そのときに知恵を出し合って助け合える人が必要になります。二人同時に足をくじく可能性は少ないですから、一人が負傷したら一人が代わりに荷物を背負うなり肩を貸すなり助けを呼びに行くなりの方法が取れます。
むしろそういった危険のある場所に自ら行くのに、一人で行くというのはその対策としていかがなものか、という風潮もあります。こういったことは、単独登山者が遭難した場合によく見られます。
このように、基本は「単独行はやめよう」なのですが、どうしても一人で登山をしたいと思う人は、こういった前提を知りつつ、より慎重に安全確保に務めることが必要でしょう。
たとえば、家族や登山口に登山計画書を提出すること、ファーストエイドやレスキューシートなど万が一の備えをしっかりすること、道迷いや緊急時の対応の仕方を学んでおくことなどです。
なので、将来的には一人で登山をしたいと思ったら、まずは登山学校などに行って知識や技術をある程度学んでからでも遅くないのではないかと思います。
また書物から遭難のパターンなどを学んでおくこともためになると思います。こういったドキュメンタリーもリアルで「絶対無事故」の意識を引き締めるのに役立ちます。