虫(ハチ・アブ・ヒル)刺されの予防と対策。刺された時の処置
私自身がハチに刺されたのは、北アルプスから日本海へとつながっている栂海新道というマイナーなルートを歩いていた時のことです。
標高も低くなると道は雑木林の様になってきました。
登山道上の葉っぱの下に落ちていた蜂の巣をトップを歩いていた子が左足で踏んでしまい、同じ場所に足を置いた私も踏んだようです。
「ハチだ!走れ~!」後ろで気づいたメンバーの一人が叫んで訳も分からず走りだしましたが、数匹のハチが踏んだ子と私の左足だけをグルグルととりまきながら追いかけてきました。
ついには走りながら2人の左足ふくらはぎを3箇所づつ刺してどこかへ行きました。何バチかは分かりませんが、刺されている時もその後もジンジンしてとても痛かったです。
その後刺された箇所はどんどん広がって合体して手のひらほどの大きさになり、熱くなった後カチカチに腫れ一ヶ月間くらい皮膚が硬く違和感がありました。
故意で踏んだ訳では無いのにと、散々な経験でした。
スズメバチの予防と対策
スズメバチがなぜ怖がられているかというと、御存知の通り刺されて死亡するケースがあるからです。
毎年平均20人の方が亡くなっています。
死亡に至るのは大体オオスズメバチかキイロスズメバチです。
しかし役所の発表によりますと駆除中や農作業、きのこ採りなどが多く、登山者が登山道を普通に歩いている時はメインではありません。
服装で出来る予防
- 白っぽい長袖長ズボンを着る
- 黒い髪には帽子を被る
- ひらひらした服を着ない
- 香水やヘアスプレーをつけない
- 黒いカメラなどをもたない
登山道上で出会った時の対策
ハチの攻撃性が高まる時期は7~10月です。登山では夏山、キノコ採りなどの時期に当てはまるので注意が必要になります。
ハチには刺すタイプと刺さないタイプが居て、刺すタイプはごく一部です。刺すタイプのハチも蚊のように人の血を吸って生きている訳ではないので基本的に人を刺す必要はありません。
しかし巣を守るために攻撃してきます。巣に近づくと攻撃してくるのです。近づく距離はハチの種類によって異なりますが大スズメバチだと10mです。
登山中にハチとバッタリ会い、なんとなく殺意を感じたら・・・
- 大きな声で刺激しないでそっと逃げる
- こちらに近づいてきて「ブンブン」と大きな羽音をさせたら威嚇されてると気付きそっと逃げる
- 「カチカチ」とアゴを慣らす威嚇音を聞いたらそっと逃げる
- 攻撃されてると受け取るので絶対に手で振り払わない
- 顔を伏せ(黒目を見せない)、低い姿勢になり(スズメバチは上下の動きが苦手)大きな動きをしない
- 万が一攻撃され出したら、ダッシュで逃げる
スズメバチに刺された場合の処置
1. 毒を吸い出す
2. 傷口を洗って冷やす
3. 抗ヒスタミン軟膏を塗る
毒を吸い出すには口では吸いださず、ポイズンリムーバーを使います。
特にスズメバチの毒は水溶性なため、唾液と共に飲み込むと刺されたと同じ事になってしまいます。(針を残すのはミツバチだけ)。
ポイズンリムーバーがない場合は指で絞り出しながら水で流します。
我が家に作られた巣の話
「ハチは5月ごろから飛び始め、7月に入ると巣ができる」と聞いたとおり、名古屋の住宅街の我が家の庭にもその頃からハチがフラフラとやってきます。
これまで関東に住んでいた時は見た事がなかったので本当に驚きました。アシナガバチのようです。庭で水遊びをしているとふらふら~っと近づいてきてグルグル旋回して帰っていきます。
あまりに頻繁にやって来るので、もしやと思って巣を探してみると、庭に置いたテーブルの下に巣を作られていました。
一つ一つの穴には小さな卵が入っていて、初めて見たときは息も止まるくらい驚きました。「これを捨てるところを見られたらやられる」ハチの巣に縁のない私は必要以上に警戒しながら巣を取って速攻捨てたのでした。
アナフィラキシー・ショックとは
アナフィラキシーとは急性で過剰・全身的なアレルギー反応の事で、命に及ぶ重症になることがあります。
一度目にアレルギー反応が形成され(ハチの場合はハチアレルギーという事になります)、2回目にアナフィラキシーが起こることが多いと言われています。
ハチの毒そのもので死ぬのではなく、体内で起こるアレルギー反応の程度によるのです。50~60%の人は1回目よりも症状は悪くなります。
アナフィラキシーはムカデやマムシやクラゲや食べ物でも起こります。
アナフィラキシーの典型的な症状としては、じんましん、紅斑、唇や下が膨張しての呼吸困難、喘息症状よる呼吸困難、めまい、腹痛、下痢、意識障害などです。
これに加え血圧が下がってショック状態に陥ったものをアナフィラキシー・ショックといいます。ショックを起こす可能性は3-12%です。
ハチに刺された場合は数分~10分で症状が出て、アナフィラキシーショックは30分以内に起こり、この時間内での死亡者が最も多いです。
遅延型といって翌日以降に現れるタイプも有ります。
アナフィラキシー・ショック対策
ハチアレルギーが認められた場合、エピペンという自分で刺す注射を携行することが有効です。
これは何かというと、エピネフリンという薬でアドレナリンのことです。
アナフィラキシーによるショック(血圧が低下し心臓に血液が行かなくなる)状態に対し、アドレナリンを注入します。アドレナリンは心臓の働きを強め、血管を縮めることで血圧を上昇させ、同時に気管支を広げ粘膜のむくみを抑える作用もあります。
使用方法は、キャップを外して太ももの外側に押し付けることで針が出て筋肉に注射されます。緊急時は服の上からでもOKです。
息苦しさやむくみ、しびれなどの異常な感覚があったら使います。
ショック状態になった後では自分で打てませんので、症状が出てから30分以内に打てるかどうかが命が助かるかどうかの分岐点と言われています。
この処置は一時的にショック状態を回避させるだけのものなので、使用後は必ず医療機関を受信します。
アナフィラキシーが起きたうちの20%は8-12時間後に再び症状が出ることがあるので半日程度医療機関で様子を見てもらえると良いです。
エピペン(商品名)はどこの病院でも処方できるわけではなく、登録された医師にって処方してもらうことができます。現在は保険適用があります。
ハチアレルギー検査
ハチに対するアレルギーの検査としては、血液中のハチ毒に対する特異的IgE抗体の検査やハチ毒を用いた皮膚テスト(プリックテストなど)があります。刺された後に体内で抗体ができる2-4週間後に受けます。
ただ正確にわかるものでも無いらしく、林業とか日常的にハチの危険がある人とかがするのが一般的なようです。
山で良く遭遇する「アブ・ブヨ」対策
アブは夏を中心に発生し、主に水があるところの近くに暮らしています。
牛や豚や馬などの血液を主食にしていますが、そういった動物の居ないところでは積極的に人間の血を吸いにやってきます。
外見は黄色と黒の縞模様が会ってハチの姿によく似ています。
ブヨは3-5mmの大きさで、見た目は小型のハエに似ており、こちらも動物の血を吸って生きています。
いずれも、肌を出さない長袖長ズボンなどを履くことと(特に足首に注意)、アブやブヨよけスプレーも効果的です。刺されたら水で洗い、抗ヒスタミン軟膏をぬります。
特にブヨに刺されるととてもかゆく赤く腫れたところが数ヶ月腫れることもありますので早くに皮膚科を受診すると良いです。
友人がアブに刺されたのは東北の朝日連峰で、やはり水の豊富な山でした。
肌は隠していたのに、首もとを刺されました。その後はかぶって他虫除けネットが効果を奏したようです。私は刺されませんでしたが、アブは追いかけてくるので山を歩いていても耳元で鳴るブーンという音は本当にストレスでした。
また、車にもめちゃくちゃたかってきます。温度の高いものに集まってくるという情報もあります。
また、渓流釣りをする知人からはハッカ油スプレーが有効だという話も聞きました。車内に入られた時は大きな音を出して動きまくるので本当に恐怖です。
山でよく遭遇する「ヒル」対策
ヒルも動物の血液を吸って生きています。
友人がヒルに刺されたのは、丹沢と屋久島です。一人は足で一人はお腹でした。どちらも出血はしていましたが、痛そうではありませんでした。
ヒルの唾液には麻酔成分が含まれるため、痛みはあまり感じないようです。特に丹沢では近年シカが人里に降りてきたことによるヒルの拡大が問題視されています。
ヒルが6-9月が活発な時期で、特に雨中や雨の後は活発になります。ヒルは足元から上がってくる事が多いです。市販の虫除けスプレーも短時間なら効果があります。長い靴下を履き、ズボンの裾を靴下に入れます。またシャツの裾もズボンの中に入れたほうが良いです。
ヒルが皮膚についていた時は、虫除けスプレー、アルコール(消毒綿なども)、塩、酢などを吹きかけたり火を近づけると簡単に取ることができます。
傷口を摘んで血液と同時にヒルの体液を出すように水で洗ってから抗ヒスタミン軟膏を塗ります。
血は2時間位止まらないこともありますが心配は要りません。出血が止まらない場合は絆創膏を貼っても大丈夫です。
とりあえずの抗ヒスタミン軟膏
よく「抗ヒスタミン軟膏」って見ますが、なぜ商品名をかかないのでしょうか。いざ買おうと思っても、どれを買えば良いのか分かりませんよね。
理由は、ムヒとかのほとんどの虫さされ系の薬は抗ヒスタミン軟膏だから、商品名をあげたらきりがないからです。