初心者のための登山とキャンプ入門

登山のレインウェアとテントを、撥水加工で軽量化!

撥水加工ドロップルーフ ビフォーアフター

登山用のレインウェアは有名なゴアテックスを初め、「水は通さないけど、汗は逃がす」という特殊な素材で作られているため2-3万円ととても高価です。
しかし使うにつれハリも撥水も落ち、そのうち染みたり服まで濡れたりというふうになってきますので、どうしても定期的なメンテナンスが必要です。

しかし多くの方はそのうち撥水がなくなるのは仕方ないだろうとあきらめ、やがて買い換えてしまうことが少なくありません。
メンテナンスが面倒とか、正しいやり方がわからない、めんどくさそう、などの理由があると思いますが、撥水加工のプロに頼んで施工してもらうのもオススメです。

撥水?弾水!ドロップルーフ

今回利用したのはアウトドア用品レンタルの会社が開発したサービスで ”ドロップルーフ”と名付けられています。そしてこれを単なる「撥水」ではなく、「弾水」と呼んでいるほど、弾き具合に自信があるらしいのです。

かくいう私も実はちゃんとしたメンテナンスをしてこれたとは言えません。
登山用品店に行ったついでに時々撥水スプレー缶を買い、ムラを作りながら気まぐれにやるだけでしたのできちんと効果を実感したことはありませんでした。

雨が降るとレインウェアが冷たいなとは思っていたし、水滴がコロコロと流れるレインウェアを着ている人を見るとうらやましいと思いましたが、それは着古した洋服がヨレヨレになるのと同じように仕方の無いものかと思っていました。

なるべく雨の日には山に行かないとか、防寒には使わないで登場回数を減らしてしのぐとかしていました。

NIKWAX TX.ダイレクト
NIKWAX(ニクワックス) TX.ダイレクトWASH-IN EBE251

家で自分でメンテナンスをして効果を実感したとよく耳にするのは、こちらの製品です。スプレーを吹き付けるタイプではなく、浸すタイプです。
ついつい手軽そうなスプレー缶タイプばかり買っていましたが、ちゃんと手間ひまをかけてアイロンなどもしていけばそれなりに効果はあるようです。

届いた!新品のようなにおい。

今回はレインウェアと、2-3人用のテント(アライテントのエアライズ)を施工してもらいました。

こちらの会社はもともとは登山用品のレンタルをしている会社で、以前レンタルしたものが新品のようなにおいや手触りで、そしてとても丁寧な梱包で届いたことが印象的でした。メンテナンスに自信をもっていると言うだけあるな、と思ったものです。

そして今回届いたダンボールを開けてビックリ。ひとつひとつ、とても丁寧に梱包されていてテンションが上がってしまいます。自分の物が返送されてきただけなんですが、買ったものが届いた気分になってしまいました。

ドロップルーフ施工後 到着

ビニール袋を開けて手に取ると、新品のような清潔なにおいで、手触りも新品のようにハリがあります。出す前は古ぼけていたし長年の臭いが染み付いていた感じがしました。

私は、レインウェアもテントも、使用後は干すだけで、基本洗っていませんでした。洗ったほうが良いという話も聞きますが、洗剤の残りが良くないとか聞いたりしたのでめんどうくさかったのです。
なのでそこそこ古いザックのような臭いになっていたと思いますが、クリーニングに出したようになって返ってきました。もしかして撥水加工するまえにクリーニングしてくれているんでしょうか。この段階で感動です。

レビュー1 弾き具合の比較

いよいよ、ドロップルーフ施工前と、施工後の水の弾き方の実験をしてみました。

実験したレインウェアは古いゴアテックスのものですが、古いといってもデザインがダサいだけで現役で使っているものです。買い替えを避けるべく大事に使っています。
雨が降ると基本的に染みこんで冷たいですが、レインウェアの下に着ている服がフリースとかハイテク素材ならばそこまで服が濡れるほどではないかな、というレベルです。

濡れ具合の変化は、想定外でした

シャワーで水を1分間掛けてみました。一番変化の分かりやすかった背中の下の腰部分を比較してみます。ウェストベルトを使うことでこの部分には肩と同じかそれ以上というくらい圧力や摩擦力がかかりますよね。

こちらは、ドロップルーフ施工前。特に酷い場所ですが、使っていくうちにこうなるのは仕方ないかな~と思っていました。あとは腕のソデ部分、ズボンのスソ部分などが同じようにすぐに色が変わってガッシリ染みこんで行きました。

ためしにウィキペディアでゴアテックスを調べてみたら、”表面生地の撥水性が落ちたり完全に水没している時、表面に水の膜ができるので、水蒸気を通さなくなり蒸れてしまうので注意が必要”と書いてありました。

私はそれほど汗をかかない体質なので気づきませんでしたが、もしかしてこのような状態だとすでに水蒸気を逃がす穴は塞がれているのかもしれませんね。

ドロップルーフ施工前

こちらは、ドロップルーフ施工後。同じく1分間水を掛けた後の写真です。

ドロップルーフ施工後

この2つの写真を見比べてみると、「?」ってなりますよね。よーく見るととても小さな水滴の粒が付いているのですが。

そうなんです、いくら水を掛けても不思議と濡れないんです。

なので写真のビフォー&アフターだけではわかりづらいと思い、動画を撮ってみました。水がぶつかって弾き飛ばされる様子が分かりますでしょうか。

次にテント本体です。同じように1分間シャワーを掛け続けます。

こちらはドロップルーフ施工前です。

ドロップルーフ施工前 テント本体

繊維に沿ってタテにヨコに水が染み込んでいるのがわかります。

いくらフライシートをしていてもこういった下部には横から雨が入って濡れてしまうものですが、そのために登山者はテント内部の端にはシュラフや衣類を直接置かないように気を配ったり、大きいテントマットで下部を覆うように工夫したりしていますね。

こちらはドロップルーフ施工後です。

ドロップルーフ施工後 テント本体

壁面に着いた小さな水滴は、風などのわずかな振動で下に転がり落ちてしまい、無くなってしまいました。

次にフライシートです。

こちらはドロップルーフ施工前です。

ドロップルーフ施工前 フライシート

そしてこちらは、ドロップルーフ施工後です。

ドロップルーフ施工後 フライシート

水滴の形が明らかに違うのが、写真上でわかりますか?”弾水”と言っても良いほど、水滴が弾いています。

レビュー2 重さの比較

登山では荷物の重さがとても大事で、行動食をどれくらい持っていくか、水をどれくらい持っていくかなどで細かな軽量化をします。

笑い話ですが、高校の山岳部の時に軽量化のために歯ブラシの柄を切ってきた先輩が居ました。しかし長期の登山となるとそれくらい重要なのです。
これまで、確かに雨が降った後のテントを持つ担当になると重くなってイヤだなあとは思っていましたが、まさか撥水によってこんなに差がでるとは驚きでした。

レインウェアの上着で比較

こちらは濡らす前の重さです。363g。

濡らす前のレインウェアの重量

こちらは、ドロップルーフ施工前、濡らした後の重さ。535g。

バサバサと、かなり水滴を落としましたが、それでも172gの水が染み込んで、重くなりました。

ドロップルーフ施工前の濡らした後のレインウェアの重量

そしてこちらが、ドロップルーフ施工後、濡らした後の重さ。363g。

なんと、1gも増えていません。

ドロップルーフ施工後、濡らしたレインウェアの重量

そりゃあそうだろうなぁ、と途中から想像がつきました。だって2、3回パタパタしただけで水滴はほとんど無くなっていたのですから。

テントのフライシートで比較

こちらは濡らす前の重さ。391g。

フライシート 濡らす前

こちらは、ドロップルーフ施工前、濡らした後の重さ。607g。

こちらも通常登山でするように、バサバサとがんばって水滴を払い落としましたが、216gの増加です。

ドロップルーフ施工前、濡らしたフライシート

そしてこちらが、ドロップルーフ施工後、濡らした後の重さ。395g。

ドロップルーフ施工後、濡らしたフライシート

なんと、たった4gの増加でした。216gと4g。こんなに違うとは驚きです。

この結果を見ると、濡れた重~いテントを担いでいたこれまでの日々は何だったのだろうと思います。

また、ここまで乾いていれば家の中にも干せますし、片付けも楽ですよね。

撥水加工・まとめ

水が染みなければ冷たくならないだけでなく、重さがここまで違うとは驚きでした。2-3人用のテント一式とレインウェア一着でもおそらく800g近くの違いが出ると思います。

ドロップルーフ 水滴拡大

ある夏の合宿で北アルプスの折立から入って笠ヶ岳に登り笠新道を下った時は、5日間ずっと雨でした。

夕食の準備でお米を炊こうと、勢い良く破った袋が破れて米粒がテント内に飛び散りました。米粒が濡れたテントの内壁にくっついていて、さらにはテント内の濡れた床に誰かが倒した正露丸のビンから転がり出た正露丸が濡れてグニョグニョになり、あまりのひさんな状況にもう笑うしかなかったことを覚えています。

まだ夏の雨は良いとしても、春の立山での湿った雪山での雪上訓練では毎日ずぶ濡れでした。
春と言ってもまだまだ寒く、毎日眠るときには湿った衣類を脱いで予備の衣類を上に着てセーターを冷えやすい足に履いた上から湿った衣類を着て寝ながら体温で乾かしました。

下界でパソコンで見ている今なら「ひぇ~悲惨だなあ」と思うかもしれませんが、おそらくこれは装備が古い昔の話ではなく、今でもある、多くの登山者の現状だと思います。
それくらい、濡れるって登山者にとってカンタンには避けられない問題なんですよね。

先日も、紅葉まっさかりの10月頭に行った白山では小雨が降り、私の古いシミシミのレインウェアは本当に冷たかったです。
別の1人はエーグルのロゴの入ったカッコいいレインウェアを着ていましたが、もう服まで濡れるほどなので買い換えると決意していました。
別の1人はコロンビアの花柄の可愛らしいかなり高価なレインウェアを着ていましたが、透湿素材だけどやっぱりゴアテックスより蒸れて困ると言い、もう一人はモンベルの新品を着てきていて快適そうでした。

レインウェアって登山者にとって重要なアイテムなのに、一度買えば良いっていうわけでもなく、値段が高い割に消耗も激しくて、悩みが尽きないものだなあと実感したのでした。

もし撥水加工をすることで「ガマン」か「思い切って投資」だけじゃない別の道が開けたとしたら、それはすごく画期的なことだなあと思うのです。永久に効果が続くという訳にはいきませんがドロップルーフなら「1年に1回」を推奨されているようなので、それならば一度試してみる価値はあるかなあと思いました。