日帰り?宿泊、テント泊?登山のパターン5つを紹介
登山には「日帰り登山」、「山小屋で宿泊する登山」、「テントで宿泊する登山」などいくつかのパターンがありますが、登山初心者にはどのパターンが適しているでしょうか?経験が少ないとなかなかイメージが持てなくて計画も立てづらいかもしれません。
そこでこのページではそれぞれの登山パターンを具体的に、スケジュール例やメリット・デメリットとあわせて解説していきます。
装備の準備の面で手軽な順番から紹介しています。自分はどんな登山がしたいのか、どれが可能か、などのイメージを持って頂けたらと思います。
日帰り登山
朝早くに家を出て日中歩き、山で宿泊せずに日が落ちる前に下山する登山です。ハイキング、と呼ぶのかどうか、その区分はあいまいです。
とある、日帰り登山のイメージ
具体的なスケジュールを追ってイメージをふくらませてみましょう。
5時に起床、前日用意しておいたリュックサックをもって、運動靴を履いて6時に家を出る。途中のコンビニで朝ご飯のおにぎりと昼食用のカップラーメンとペットボトル飲料、行動食のお菓子を買って、車で登山口へ。
8時に登山口を出発。お目当てのツツジの花を愛でながら、コースタイム5時間の道をゆっくり登る。ちょうどお昼頃山頂へ着いたので、1時間の大休止をとることに。登山用コンロとコッヘルでお湯を沸かして、景色を眺めながらカップラーメンを食べる。
13時に下山を開始して、16時には駐車場へ到着。あらかじめ車に積んでおいた温泉セットをもって、近くの温泉へ。途中のサービスエリアで名物のソフトクリームを食べてから帰宅。
日帰り登山のメリット
- 休日が1日しか取れなくても自然を楽しめる。
- 早朝に天気を見て行くかどうか決められるため、荒天にみまわれる可能性が少ない。
- 荷物が少なく、手持ちの装備で行けることが多い。
- 新緑、お花、紅葉など目的をしぼって手軽に自然を楽しめる。
- ちょっとした運動に良く、初心者も行きやすく、登山装備を持っていない仲間も誘いやすい。
日帰り登山のデメリット
- 電車の場合は始発に乗るなど、早起きをしないといけないし慌ただしさがある。
- 日没前には下山するため、短いコースしか選べない。
- 地味な樹林帯の低山になる事も多い。
- 非日常感を感じるほどまでには山に浸れない。
- 手軽さゆえの充実感不足を感じる場合もある。
つまり、手軽なので「やってみよう!」と思ったらすぐにはじめられるのが、日帰り登山の良いところ。
しかし登山では基本的に日没前に下山していることが遭難を防ぐために重要なため、短いコースしか選べません。登山の奥深さを知るにはこれだけではもったいない、と言いたくなってしまいます。なので、日帰り登山に慣れたら、次のステップへ進むのもおすすめです。
前夜発、日帰り登山
- 前日に車やテントで仮眠、翌朝出発 -
山の上には泊まらないけれども一気に活動範囲を広げられるのがこのスタイルです。仕事が終わったら頑張って登山口近くの駐車場まで移動しておき、車中やテントで仮眠をとり、翌朝日の出とともに登山を開始。
夜行バス・夜行列車を利用して移動中に仮眠をとるパターンで費用を安く上げる方法もあります。連休はなかなか取れないけど山には行きたい、というベテランが好むスタイルです。かつては“ステーション・ビバーク”と言って、電車の駅構内で寝袋を出して仮眠を取る登山者たちの風景が見られました。最終電車で来て、登山口まで行く始発バスを待ちながら仮眠を取るのです。
最近では安全の面から許されているのかわかりませんが、かつては、登山者がこのように仮眠をとる姿は大目に見てもらっていたところがあるように思います。
とある、前夜発日帰り登山のイメージ
たとえばこんなパターンです。
金曜日、仕事が終わったら予め荷物を積んでおいた車に乗り込んで、富士スバルライン五合目へ向かいました。途中のコンビニで夜ご飯と朝食、行動食を購入。まだマイカー規制が始まっていないので五合目駐車場まで行き、車中泊をしました。
たっぷり6時間睡眠をとって、翌朝の4時には出発。ご来光を眺めながらゆっくり歩き、お昼頃、山頂へ到着。
お鉢周りはやめておいて下山開始、3時には駐車場へ到着。富士吉田で温泉に入り汗を流した後、休憩室で1時間仮眠をしてから、帰路へ。
前夜発日帰り登山のメリット
- 前日に移動してしまうことで、自宅から遠方の山も選ぶことができる。
- 明け方から歩き出せるので、コースタイムが長いルートが選べたり、行動に余裕が持てる。
- 早めに帰宅できれば、翌日の仕事の前に気持ちの余裕が持てる。
- 車中泊などで熟睡できれば宿泊費も節約できる。
- 寝袋など寝具を車中などに置いて登れば軽い荷物で登山できる。
前夜発日帰り登山のデメリット
- 特に 夜行列車や夜行バス利用の場合、睡眠を十分に取れず翌日の登山に疲れを残すことがある。
- 仕事終了後の長距離運転は交通事故、過労、強行軍のリスクがあるので休みを取るなどの自己管理が重要。
「えぇ~仕事終わりに移動して現地で仮眠?!」と思うかもしれませんが、こういう人、ふつうにいっぱいいます。会社の更衣室からザックを背負って登山靴を履いて出かける方もいらっしゃいます。前夜発にすると登山する時間が長く取れるだけでなく、夜を家じゃないところで迎えるということで、「遠出した感」も一気に高まります。
早起きして早朝に移動するよりも、夜のうちに移動しておいちゃったほうが気分がラク、という人には向いていると思います。
山小屋泊の登山
- 山小屋利用で体力を温存、歩く距離や時間を優先できる -
スタッフがいて営業している山小屋に宿泊する登山です。山の中に泊まることで、山の夕暮れも、夜の星空も、明け方のご来光も清涼な空気感も体験することができ、一気に非日常感が高まります。
ここで登山パターンとしての特徴を挙げるならば「背負う荷物を最小限にして体力を温存し、歩く距離や時間を優先できる」というメリットでしょう。その分宿泊費はかかってきますが、初心者の方にはそれでも余りあるほどのメリットがあると思います。
とある、山小屋泊登山のイメージ
たとえばこんなかんじです。
早春に北八ヶ岳を登山することになりました。夏用のテントではまだ寒いと思い、山小屋を予約。個室もあって、部屋にあったコタツがとてもうれしい。
食事もキャベツの千切りがのったハンバーグが出てとてもおいしく、濡れた衣類を乾かす乾燥室までありました。
リビングにはたくさんの漫画本や過去の登山雑誌があり、ゆっくりできた。翌日は下山だけだったので山小屋のご主人といろいろお話ができて楽しかった。
山小屋泊登山のメリット
- 軽い荷物で体力に余裕を持たせることで、長いコースを選択できたり、北アルプスなど第一級の山に行ける。
- 家を出る前の食料買い出し、現地での食事作り、テント設営、下山後の片付けなど、手間や時間を省ける。
- 安全な寝床と安定した食事が得られることで、体を休められる。
- 登山客とのコミュニケーション、山の情報を得られる。
- 寝袋や大きなリュックを持っていない仲間などを誘った登山もしやすい。
山小屋泊登山のデメリット
- お金がかかる。
- 他人のイビキ、話し声、混雑、挙動に煩わされ、選ぶ山小屋と時期によっては山を楽しめずに他人の動向に煩わされる可能性もある。
- テントや寝袋の宿泊道具を背負っていないので、疲れていても行程が遅れても、なにがなんでもどこかの山小屋にはたどり着かないといけない。
- 山小屋利用に慣れてしまうと、登山技術がおざなりになるリスクがある。
上に紹介した山小屋のページにも書いてありますが、「山小屋」と一口に言っても、設備も環境も本当に千差万別です。町のホテルと比べて設備の不便さが気になる人もいれば、付随してくる「人間の世界」が気になる人もいるかもしれません。でも、なるべく混雑を避け、うまく利用すれば、すばらしい山の世界を広げてくれるはずです。
避難小屋泊の登山
- 荷物も軽くなるし利用料も無料 -
避難小屋とは山中にある避難用建物で、無人で、建物だけがあって内部に泊まることができるようになっているものです(緊急時のみに使用が限定されているものもあります)。
登山のパターンとして考えるときの一番の特徴は、「寝床がテントではなく建物であることからの、装備の手軽さ」です。山岳用テントはなかなか高価です。まだ持っていないけれど、山小屋利用では宿泊費がかさむなあ~というときにも利用価値があります。
また、テントを背負わないことで荷物も軽くなるし、テントよりもかなり開放的で日常に近い空間での山中の滞在ができ、かつ大雨や大風の時には不安も不快さも軽減されます。
とある、避難小屋泊登山のイメージ
3人用のテントしかもっていなかったのですが参加希望者が増えて5人になったので、ためしに避難小屋泊をしてみることにしました。
奥多摩の雲取山は東京都の最高地点で、この山頂というぜいたくな場所にキレイな避難小屋があることを知っていて、いつか泊まってみたいと思っていました。みんな月曜日に有給が取れたので、日曜に泊まる事に。土曜日じゃなくて日曜日の泊まりなら、人気の場所でも5人くらいは余裕で泊まれるだろうと考えました。
着いた時は誰もいなくて、このまま貸し切りだったら最高だと話していましたが、残念ながら夕方になって1組の登山客がやってきました。でもきさくな人だったので仲良くなり、食べ物を交換したりと楽しい交流が出来ました。
置いてあったノートにはいろんなところから登りに来た人のコメントが書いてあって、みんなが大事に使っていることを知りました。置いてあったホウキで掃除をして出発しました。
避難小屋泊登山メリット
- テントを担がずに、安全な建物の中で、無料(まれに有料)で泊まれる。
- テントの定員を気にせず山行が組める。
- 雨の時や雪の時、テントよりも快適。
- 他の登山者とコミュニケーションが楽しめる場合もある。
- 貸し切りであれば別荘のようにのびのびと快適に楽しめる。
- 山小屋より、ややワイルドな宿泊体験ができる。
避難小屋泊登山のデメリット
- 混雑具合が予測不可能、すし詰めのリスクがあるが、出たとこ勝負で対応するしかない。
- 食事や寝る時間は、ある程度周囲の空気を読んで動く必要がある。
- 山奥にあるので、一人での利用は、やはり不安も残る。
避難小屋利用は、「無料」っていうメリットの他にも、ちょっと冒険的な要素が加わるので、グループで行くなら楽しめる要素になりますね。寡黙な仲間と二人っきりとか自分だけだったりしたら、漆黒の闇に動物の鳴き声が鳴り響きスリルさえ味わえます。
普通の山小屋泊よりももっと自由と野性味が欲しかったら、試す価値はあります。
テント泊の登山
- これぞ登山、というカッコよさが醍醐味 -
山岳用のテントなどすべての荷物を担いで歩き、キャンプ指定地にお金を払ってテントを張って泊まる登山です。
テント泊のいちばんの特徴は、やはり「自由さ」といえるでしょう。テント場を点と点をつなぐように自由に歩くルートを決められるし、予約をするわけではないので予定の変更もOKです。
そしてもっとも価値があるのは、”これぞ登山”というカッコよさ。これが醍醐味ではないでしょうか。最低限に絞った荷物を自分で担いで、せまい空間の中で食事や睡眠など生活のすべてを行い、たった1、2枚の布で囲まれた空間で過ごすというワイルドな生き方。地面の冷たさを背中に感じつつ、風の音や動物の鳴き声を聞きながら、慣れない大自然や宇宙の神秘に心をかき乱されつつも眠ろうとする時間。
この特別な体験ができるのがテント泊であり、また、誰でもができるわけでもなく、自分で背負って自分で歩いた人だけができるという自負。日常生活のありがたさを実感するひとときでもあります。
とある、テント泊のイメージ
これは学生のときですが、たとえばこんなふうです。
夏休みに1週間、テントを背負って北アルプスを縦走しました。縦走なのでテント場にテントをたて、翌朝にはテントをたたんでまた背負い、歩いて次のテント場に移動、の繰り返しです。
朝の3時に起床し、朝食・撤収して5時に出発、の繰り返しです。毎朝日の出を見て歩き、重かった荷物もだんだん軽くなり、大雨の日は、一日せまい中テントの中でトランプしたりと、あとから思い出すと、なかなか出来ない経験ができました。
何日も同じメンバーで過ごすので険悪な雰囲気のときもありましたが、食事を作ったりロウソクの火を囲んでおしゃべりしたりと濃厚な思い出ができました。
テント泊のメリット
- ダイレクトに自然を感じることができる。
- 宿泊費が安いため、体力次第では長期間の登山も計画できる。
- 予約がいらないので荒天時などにキャンプ予定地の変更ができる。
- 目的地までたどり着けない場合、緊急でテントを張ってやり過ごせる。
- 生活道具一式を背負っているので、緊急時にはテント場じゃない場所にでもテントを張り対応することで遭難を回避できる可能性がある。
テント泊のデメリット
- テント、寝袋、食料などの装備が重い。
- グループで1つのテントに泊まる場合、狭い空間なので気疲れをする人も。
- 寝心地が悪いとか寒いとか狭いとかで熟睡できない可能性もある。
- 大雨、暴風の時は浸水したりテントが破れたりと気が気でない。
- 山岳テントが高価、保管の場所をとる。
- 下山後にテントを干したりの片付けが、かなりめんどう。
やはり、手間もかかって大変だけれども、可能ならば試してみてほしい登山の最終パターンはテント泊ですね。同じ自然の中を歩くのでも、よりいろんな自然の一面を体感できるからです。
このメージでは「登山って、どんな感じでやるのかな?」と漠然とギモンに思った初心者むけに、山で泊まるのか、泊まらないのか、泊まるならどんな場所に泊まるのか、というポイントで具体的なイメージを紹介してみました。
日帰りハイキングから始まってやがてテント泊へと、ハマっていってもらえたら嬉しいなと思います。