石老山登山・バリエーションで下山
相模湖駅から歩いて石老山へ
2012年5月5日土曜日、おのぴーと完さん、そして僕を合わせた3人は、相模湖の石老山(せきろうざん)に登るべく中央線は相模湖駅に待ち合わせをした。朝の9時30分だ。
久しぶりに自分1人以外の登山。
おのびーと完さんについて説明させてもらうと、彼らとはボランティアで知り合った。僕は去年の年末あたりからボランティアに関わり続けているけれど、その活動の中で彼らと出会い仲良くなった。二人とも登山に興味があったので、よし山に登ろうじゃないかと言う事になったのです。
一応今日の石老山登山、名目はおのびーの登山靴の慣らし。先日おのぴーはザンバランの登山靴を買い、カリマーのクーガーと言う大型のザックも買った。そして我々は今月末にテント泊での登山を計画しているので、その本番のために、一度慣らしで登山をしようじゃないか、って事になったのです。
相模湖駅。昨日までの雨が嘘のように、空は晴れ渡っている。よくよく探せばあるかも知れないが、雲ひとつ無いと言っても問題なさそうな青空。素晴らしい天気だ。
相模湖駅から石老山の入り口までバスが出ている。石老山の登山口まで歩くと1時間以上はかかるけれども、僕らは歩いて行く事にした。なぜだかはあまり覚えていないけど、今日の山行時間が短いということもあるし、今回の登山は個人的にトレーニング的な要素もあった。あとはそうだなあ、青空が気持ちよくて歩きたかった。
石老山は相模湖の南側にある。僕らは相模湖を眺めながら南へ向け歩いた。
嬉しいことにみな上機嫌の様である。楽しくおしゃべりをしたり、まだ山にも到着していないのに写真を撮りまくっている。大人の遠足って感じ。これからすごくハッピーな事がまっているかの様に、みんな楽しそうだ。登山をプロデュースした人間としては、これだけリアクションが良いと嬉しくなる。
1時間ばかし歩いたところで、バス停「石老山入口」にたどり着いた。ここから本格的な登山道まではもうしばらくある。僕らは自販でコーヒーを買いタバコを吸い休憩をした。ゆったりと余裕のある登山。大人の休日って感じで悪くない。
休憩が終わるとそこから10分ほど一般道を登った。おそらく相模湖病院の駐車場だと思うが、その駐車場のわきの道を進むと登山道が始まった。
石老山を登る
樹林帯歩き。苔むした緑々した登山道を登る。石老山と言う名の通り、大きな石がゴロゴロとしている。小さな滝もあるし、寺もあるし、見るものも多いのでなかなか楽しめる。また連日の雨のせいだろうか、登山道が沢になっている所もあった。ハイキングコースなのでスニーカーで登りに来る人も多いと思うので、注意されたい。
僕と完さんは一緒にゆっくりとしたペースで登っているが、おのぴーはぐんぐんとマイペースで登っている。 おのぴーの言葉を使わせてもらうと「めちゃめちゃいい天気だし、坂があったら昇りたいし、変な段差を乗り越えたいし」という事だ。
子供のように山を楽しんでいるようなので、見ていると嬉しくなる。本格的な登山ならペースを気にしながら登りたいところだけれども、今日はハイキング。楽しく自由に登ってくれればそれが嬉しい。
登山口から15分も歩けば顕鏡寺に到着。トイレもあるので休憩に適している。
顕鏡寺で軽く息を整え、石老山の山頂目指して登山を再開。
僕と完さんは相変わらず写真をパシャパシャと撮りながら登った。完さんは最近写真の学校に通っていて、いくらのデジイチを買おうか迷っているようだ。完さんとも今後もこうやって写真を撮りながら一緒に登れると嬉しい。
そしておのぴーは視界からすぐに消えた。
30分ほど歩くと融合平見晴台に到着。融合平見晴台はこじんまりと開けて場所で、ベンチもあり休憩に適している。おっさん3人はここで一服し、再び歩を進めた。
融合平見晴台あたりからは、登山道は良くある樹林帯の尾根歩きになった。今度は完さんが先に登り、僕とおのぴーは一緒のペースで登った。と言っても、おのぴーは時折、道なき道を歩いた。登山道を歩くよりも、登山道を歩かない事に興味があるようだ。手にグローブを装着し、枯れ葉が積もる山をガサガサと音を立てて登って行った。そしてまたしばらくすると登山道に合流した。
おのぴーの文章を使わせてもらうと、「心の欲求を抑えずに、変な道ばっか選んで登ってました。」ということだ。
おのぴーの人生において、今回の登山は初の、ある意味本格的な登山になるだろう。初回がこれである。今後彼がどんな登山者になるのか楽しみだ。
樹林帯の尾根歩きは続き、30分経ったくらいで石老山の山頂に到着した。山頂はそこそこの広さはあるものの開けている箇所はわずかで、そこからは丹沢は大室山、蛭ヶ岳、そして富士山を見渡す事ができた。
おのぴーと完さんはビールで乾杯し、そして我々はあーだこーだ言いながら食事の準備にとりかかった。今日のお昼ごはんは、ご飯を炊いてマーボーナスを作る。そして相模湖駅のコンビニで買ってきたハムとウインナーを焼いて食べる。
普段1人なら絶対にご飯なんて作らないけど、やっぱりこうやって人数でご飯を作るのはとても楽しい。水とか米とか食材とかで荷物がかなり増えるけれど、それをやるだけの価値はある。おのぴーも完さんも楽しんで作ってくれたし、美味しいと言ってくれていた。
バリエーションルートで下山
石老山の山頂をゆっくりと時間をかけ楽しみ、そしてなんとなく下山をしようと言う時間になった。下山には「山と高原地図」の点線ルート、バリエーションルートを選んだ。
そうそう、今回石老山を選んだのは山頂からバリエーションルートがある、というのも一つの理由。おのぴーが道無き道を登山したがっていたので、状況によってはバリエーションルートを使える山を選んだ。そして皆バリエーションルートにノリノリである。
石老山の南東に高塚山があり、そこに向かう途中にバリエーションルートの分岐がある。その分岐には5分も歩けば辿り着くのだけれど、注意しないと見落としてしまうような非常にわかりづらい分岐だった。道標も地面に落ちている小さな板だった。僕は以前このような道標を見た経験があるので理解することはできたが、初めてなら見逃してしまう事だろうと思う。
その名も無きバリエーションルート。山と高原地図には「不明瞭」とあるが、本格的に不明瞭である。登山道らしき道がうっすらとあるかと思えば、途中でなくなってしまう。長いあいだ人が利用していないようで草もぼうぼうだ。
今までバリエーションルートはいくつか経験したことがあるが、不明瞭さでいったらこの石老山のバリエーションルートはナンバーワンだと思われた。「これはちょっと厳しいかなあ?」と心配するほどの登山道だったが、完さんとおのぴーはガサガサと音を立て、むしろ積極的に下り始めていた。
まあ良いのだ。携帯のGPSもあるし問題ないでしょう。みんな良い年頃のおじさんだし、完さんはしっかりものだし。僕がだめでもきっと彼らがなんとかしてくれるはず。
不明瞭なバリエーションルートを下る。名も無き尾根を南へ。
登山道は本当にわかりづらくて、正しい道を下っているのかどうかは確証が持てなかったが、ポイントポイントにテープがあったのでそれを頼りに進んだ。尾根を外さない様みんなで辺りを見回しながら慎重に下った。
完さんが先頭を進み、テープを見つけてはコースを作った。僕は一番後ろで、携帯と地図を交互に見ながら我々が正しい方向に進んでいるか、の確認をしていた。おのぴーは道なき道のさらに道が無い所をバキバキと歩いていた。
しばらく進むと、登山道は良く踏み固められた尾根道になった。
日当たりの良い、そして人の少ない尾根歩き。本当に気持ちが良い。広いスペースもあるのでテントでも持ってきて張りたいものだ。人もいないので楽器を持ってきて酒を飲んで騒ぎたい。という様な話をすると、「山は静かにするもんなんだよー」とおのぴーが言った。完さんはブルースハープの音色を山に響かせた。
そこからの尾根道は歩き易かったけれど、支尾根も多く慎重に判断して下った。3人いると広い範囲を見渡せるので間違いが少ないな、と思った。
標高が下がるにつれ車の音が大きくなる。近くに道路がある。楽しいバリエーションルート歩きももうすぐ終わってしまう。名残惜しむように、僕らは登山口付近で一服。石老山にお別れを告げる。
嬉しいことはと言えば、二人はこのバリエーションルートをすごく楽しんでくれたみたいだった。僕もそう思う。やっぱりある程度の緊張感があると面白い。石老山を普通に登って普通に降りてきたんじゃ、ちょっと物足りなかっただろう。それはそれで面白いんだろうけど、やっぱり冒険的要素があった方が断然に面白い。おのぴーは「幸せだ」とまで言った。これで幸せなら、今後もたくさんの幸せが待ってますよ!
そうそう、書いておかなければならない事が一つあります。この石老山のバリエーションルート。初心者の方はやめた方が良いかも知れません。僕はiPhoneのGPSアプリを使っていたので問題無く下りられましたが、そうでなければ途中で引き返していたかも知れません。GPSもしくは2万5千分の1の地形図とコンパスがあって、そしてその読み方がわかる人でないと、このバリエーションルートはわかりづらい様に思います。
名も無き尾根は、民家の裏側に出て終了した。そしてそこからしばらく歩くと一般道518号へと出た。
石老山の下山後 相模湖駅へ
石老山登山日記はこれで終えたいのだけれど、実はここからが大変だった。なのでもうちょっと書いてみようと思う。
石老山を縦断してしまった僕らは、最寄りの相模湖駅から遥かに遠ざかってしまっていた。南に下り道志川を越えればバス停があるし、バスがなければタクシーを呼ぼう。タクシーがなきゃ歩こう。まあなんとかなるだろうと甘い考えを持っていた。
石老山の下山口から40分ばかしかけて518号を東南に下った。硬いアスファルトの道をてくてくと。そして道志川沿いの大通りである413号にぶつかる。ここに「牧馬入口」のバス停があったが、案の定最終バスは終わっていた。完さんがタクシー会社に連絡をとってくれたが、タクシーはこちら方面には来れない様だった。
と言うことで我々は再び歩き始めた。相模湖へ向け。
日は完全に沈み、南にはまんまるの月が輝いていた。北には「相模湖プレジャーフォレスト」の観覧車が光っていたが、歩けども僕らと観覧車の距離が縮まる事はなかった。ゴールデンウィークの渋滞だろうか、413号は渋滞していた。車の赤いテールランプが続いていた。
足が少し痛くなってきたけれど、それでも僕は楽しかった。車が多いのにはいささか参ったが、夜の道をこんな風に歩くのは嫌いではない。これはこれで旅をしている気分になれる。子供の頃にはしゃいで遠くに行きすぎて、夕方近くにとぼとぼと長い距離を歩いて帰ってくる。それとすごく似ていると思う。
413号に入ってから1時間は歩いただろうか。「三ケ木」という名の交差点に到着する。ここまで来ればバスはたくさんあるだろうと言う完さんの読み通り、三ケ木にはバスターミナルがあり、相模湖行きのバスもあった。
完さんがいなければ、僕は何も考えずに相模湖駅までぼろぼろになって歩いただろう。おのぴーも歩きながら「幸せに浸っていた」様なので、きっと何も考えず酩酊しながら歩いて駅まで帰っただろう。完さんがしっかりと考えてくれたおかげでバスに乗れたようなものだ。次回からリーダーは完さんだなあと思った。
そして僕らは20時過ぎの三ケ木発のバスに乗る事ができた。相模湖駅に到着したのは20時半頃だったと思う。
朝9時30分に相模湖駅で待ち合わせをしたので、ほんとにまる1日遊んだ。石老山自体は簡単に登れたけれど、そのあとのバリエーションルートが面白かったし、下山後も散々歩いて疲れ果てる事ができた。これだけ疲れると「歩いたぜ」って感じがして気持ちがいい。そうそう、ご飯も美味しかった。
そして何よりも完さんとおのぴーが楽しんでくれた事が嬉しい。天気も応援してくれた。二人とは登山の好みも似ていると思うので、今後も一緒に登れたら良いなあって思う。