DAY9:そしてナムチェはすごく寒い
2014年10月17日。
朝は6時頃、自然に起きた。いつもより一時間くらい遅い。疲れが溜まってきているのだろうか。
今日は歩き出しから少しイラツイていた。ルクラを過ぎて登山者がありえないくらい増えたこともそうだし、異常な数のロッジの多さもそうだ。ロッジが道々に並んで途切れることが少ない。ヨーロピアンの団体客も多い。カフェにはびっしりと白人が詰まっている。
彼らのことが嫌いな訳ではないのだけれど、同じ量を働いているとしたら、楽をしているのはヨーロピアンだろうか、アジア人だろうか、なんてことがついつい頭に浮かんでしまうのだ。
美味しいシェルパシチュー
昼ごはんは「シェルパシチュー」をジョンが注文した。どっかで飲んだ「シェルパティー」が激マズだったので不安だったけれど、シチューはほんのりカレー味でクリーミーで、大きな豆が入って美味しかった。それにパンがついた。ルクラ以北は観光客が多いので、それらに向けた味付けになっているのかも知れない。
道にはロッジだらけでびびっていたけれど、進むにつれ山は深くなり道は狭くなり、ロッジの数は減った。
「ナムチェの山」に登る登山道は急登で細く、渋滞が度々起こった。道が渋滞するとゆっくりと登れるのでありがたいが、足並みを揃えることも大切なので疲れてしまう。ハーメルンの笛吹みたいに、みなもくもくと山の上へ上へと導かれる様に登っていたのが印象的だった。
また、ナムチェの山につながる長い吊り橋も印象的だった。
吊橋を渡っていると、突然強い風が吹き、プレイヤーズフラッグははためき、光に向かって歩いていて、どこか別の世界の入り口を通過しているんじゃないだろうか、と感じた。ジョンもウォーリーも同じような印象を持ったらしい。
TIMSのチェックポイントと働く動物たち
TIMSのチェックポイントはこれまで4~5箇所はあっただろうか。その都度ザックを下ろしてTIMSカードを取り出さなければならないので面倒だ。取りやすい場所に入れておくのがいいと思う。
チェックポイントの警察は相変わらずいばった感じで嫌なんだけれど、今日は僕の年齢を見て笑われた。海外を旅をしていると、若造にナメられたり、年齢を言うと驚かれることが多い。若く見られるのは嬉しいけれど、旅には向いていない気がする。
道では「ロバ、ウマ、ヤク」の3タイプの動物が荷を運ぶお仕事をしているが、一番お目にかかるのはロバで、そして一番叱られているのもロバだ。しょっちゅう引っ叩かれている。ウマの数は少ないが、彼らは与えられた仕事をもくもくとこなしているイメージで優秀。ヤクは感情を表に出さない。彼らの不満はビンビン感じるが、穏便に暮らした方が賢いと考えている気がする。
ナムチェにたどり着く
急登を登り終えナムチェに辿り着いた。そこからナムチェの町並みを見上げた時の気持ちを僕は一生忘れないだろうと思う。
ここまで下からずっと、シバラヤからずっと歩いてきたから、こんな山奥でこれほどの規模の町を見た感動は、ルクラから歩いた人にはピンとこないかも知れない。気分的には、遠い遠い山奥にある伝説の町にやっと辿り着いた、そんな感じだった。それくらいの喜びだった。
しかし体が寒い。体温調節の機能がおかしくなってしまっているのだろうか、体の芯から冷えてしまい、どれだけ服を着込んでも、ロッジで寝袋の中に入っても手足の先が寒い。さて、僕はこれ以上寒いところに行けるのだろうか。とても心配だ。