鳥取の大山 (だいせん) 登山 ① ー 鹿児島中央から博多への旅 ー
あらすじ:九州の百名山、阿蘇山・祖母山・九重山・霧島山・開聞岳を巡る旅に出発、そして最後の開聞岳も登り終えました。これで予定通り全て登りましたが、でもせっかくここまで来たのなら鳥取の大山も登ろうか、という事でまだまだ旅は続きます。
藤井さんからの電話、鹿児島中央のバスターミナル
2013年の4月23日の火曜日。九州の百名山を巡る旅8日目。
ー 鹿児島中央駅前・ホテルガストフー
8時過ぎに起きた。なかなか体が怠くてしばらくぼーっとしていた。すると藤井さんから電話がかかってきた。 ー藤井さんは僕と同じく九州の百名山を登る旅をしていて、祖母山で出会い一緒に登り、その後九重山で偶然再会した石川の素敵なおじさんだ。
藤井さんは長崎にいるという事だった。これまた登山で仲良くなった人と旅先でばったり出会い、その流れのなんやかんやで長崎にいると言うことだった。そしてこれから福岡あたりに行くと言っていた。寝ぼけていたのであまり覚えていない。
僕は長崎に行くつもりだったけどその話しを聞き福岡に行くことに決めた。藤井さんは大山(だいせん)に登ろうぜとは言っていなかった気がするが、電話があったという事は一緒に大山に登るということなのだ。やった。旅にまた色がでてきた。
荷物をまとめると鹿児島中央駅に向けて歩いた。相変わらず巨大な荷物をガラガラとひいているが、今日でこれともおさばらだ。
JRの窓口に行ったりインフォメーションセンターに行ったりして、高速バスのチケットは少し離れたところで買える事がわかった。どこもバスターミナル的なものは駅から少しだけ離れている場所に位置する、という事を学んだ。
駅からもうちょっと近いとありがたいが、無理なのだろう。そして鹿児島中央駅は最高に素晴らしいところだけれど、このバスターミナルの所在地がわかりにくいというのが-0.5ポイントだ。人に聞かなくてもたどり着けるシステムが良いと思っている。
荷物の発送、スタバ、アローズ、リンガーハット
昨日さつま揚げやのおばちゃんに教えてもらった、アミュプラザ(駅に隣接したデパート)の地下にあるヤマトの窓口に行き、荷物の発送をお願いした。箱に入れ替える必要もなくダッフルバッグのままいけるらしい。120サイズと言っていた。これでテントや寝袋や火器類など重たい物を運ぶ必要がなくなった。
その後軽い足取りでバスターミナルに行った。藤井さんは「福岡」と言っていたがどの福岡か聞いてなかったので、やまかんで博多行きのチケットを買った。
そしてまた駅に戻ってくると、今度はスタバに行きアイスコーヒーを注文。僕の持っているナルゲンボトルに入れてもらった。確か30円ほど安くなったと思う。すごい。感動。そしてグランデサイズが450ミリだ、ということもわかった。スタッフのおねえちゃんは丁寧にあれこれと気遣ってくれて嬉しい。そしてスタバのコーヒーなんかを飲みだすと、リッチな旅の雰囲気がでてきた。
スタバのあとはユナイテッドアローズだ。そこで服を買う。これから大都会の福岡に行くし、ゴールデンウィークは四国を旅行をする。その時の街着が欲しい。ということで七分袖の白くてかわいいシャツを買った。
かしこい店員のおにいちゃんは、僕が山登りで九州に来ていると知ると、濃い色のシャツや麻素材のもの、頑丈なものを選んでくれた。けど最終的に僕は薄くて白い、コットンのシャツを選んだ。即効しわくちゃで汗だらけで汚れるだろうけど、欲しかったんだ。店員さんありがとう。
買った服はそのまま着た。僕の見かけはいくらか小汚さは減ったけれど、黒い体で真っ白なシャツを着ると、南国のホテルのいつもにこにこしているボーイみたいな雰囲気になった。
そしてもう一つ書きたい事がある。購入したシャツがLサイズなのだ。これには参った。最近どうもMが小さいなと思っていたが、まさかLだなんて。ちなみにズボンはXSで良いくらいの短足だ。ほうれん草を食べたポパイの様な体格だ。なんて事だろうか。でもこれは僕がゴツイんじゃなくて、最近のしゃれた店の服の基準サイズが小さくなったのだ、と思う様にしている。世の中の人々が細くなっている傾向にあるのだ、と思う様にしている。
そしてアミュプラザ地下のフードコートにあるリンガーハットで皿うどんを食べた。大好きなお酢を調子に乗ってかけまくったら、最後の方は吐いたゲロを食べている様な気分になり気分が重くなった。それと頭も重い気がする。なので頭痛薬を飲んだ。
高速バスで福岡は博多へ
12時10分にバスは鹿児島中央駅を出発した。
バスは三列シートで通路が2つあるタイプ。席と席との感覚もまあまあで座り心地は良かった。バスの旅は好きだ。相変わらずビートルズやオアシスなんかを聴きながら旅をした。車内のモニターではデスノートが映しだされていた。旅をしながらデスノートなんてクールじゃないと思っていたが、ついつい無音でデスノートを見切ってしまった。
天気も悪く寂しい感じの眺めだったけれど、熊本には立ち寄ってみたいと思った。他のエリアと違って熊本はすごく平らで、畑がずっと広がっている印象だ。それは新幹線で通過した際にも思った。熊本は通過してしまう県なのかもしれない。次来た時はこの平地に降り立とう。
16時15分頃バスは博多駅のバスターミナルに到着した。その前には天神駅のバスターミナルにも立ち寄った。天神。聞いた事がある。
バスから見る博多は大都会だった。そして綺麗に整備されていたように思う。歩きやすそうだった。旅の心得として、バスが駅に近づいてる時は景色をなるべく見る様にしている。どこになにがあってどこが栄えて、自分はどう駅に向かっているかを確認する。そうしておくと、頭に簡単な地図が出来上がるのでその後歩きやすくなる、とわかった様な感じで書いておく。
博多駅、プレジデントホテル
博多駅の人の多さと歩くスピードの速さには驚いた。都会だ。そして人の表情も東京と変わらない。都会はみなこうなのだろうか。鹿児島なんかだと、顔の表情も少し違った。僕が旅行者だとわかると少しは好奇の目がある様な気がする。しかしここではみなが瞬間的に僕とすれ違っていく。気のせいなのかも知れないが少しさみしい。僕はかまって欲しいのだろう。
その後藤井さんに博多に到着したと電話を入れ、19時に天神の三越で待ち合わせ、ということになった。僕は予約したプレジデントホテルに向かった。
プレジデントホテル。名前も外観も立派だったけれど、受付のおねーさんにはがっかりした。特別に何かが悪いというわけではないのだけれど、焼けたたこ焼きをひっくり返すみたいに流れ作業で無関心なんだ。冷たいとかそういうものでもない。すごく寂しくなったし、博多の印象も悪くなりそうだ。
料金も安いだけあり部屋もすこぶる狭かった。まあこれは都会の駅前なので仕方ない。
荷物を落ち着けると、風呂のシンクでシャツ、そして登山用のパンツを初めて洗った。開聞岳の下山中に気づいたのだけれど、ズボンが汗で塩を吹き白くなっていた。姉からもらった固形洗剤でごしごしとこすった。
天神のジャーナル・スタンダード
少し早いが待ち合わせの天神に向け部屋を出た。何だか顔も熱を持っているし、なくならない唇ヘルペスが勢いを増した気がする。どうやら僕は疲れている様だ。それをみとめた。
部屋の鍵を預けに行くと、ホテルのフロントスタッフは感じの良い男性に交代していた。シフトが変わったのだろう。
祇園駅からパスモを使って天神駅へは二駅。待ち合わせには1時間早かったのでパルコのジャーナルスタンダードに入った。鹿児島中央のユナイテッドアローズでシャツを買ったので、どうせならそれにあったパンツを買うのだ。
パンツはゆったりとした藍色のものを選んだ。裾をまくりあげて色を見せるタイプのもので、丈は7分くらいで履くものだろう。けれど僕が履くとズボンが長すぎて7分ではない。足があと10センチ長ければと思う。足があと10センチ長ければ世界が変わっただろう、と年に12回は思う。
ちなみに店員のにーちゃんはなんでもイエスイエスって言っちゃう感じだったけど、軽い感じもまた好きだった。
藤井さんと3度めの再会、夜ご飯
そして藤井さんと合流した。藤井さんと会うのは3回めになる。祖母山、九重山と出会って今度は博多だ。この再会の喜びは、旅ならではのものだろう。ほんと旅って最高、とあらためて思う。藤井さんは相変わらず元気でカラッとしていて、加賀の殿様の様な風格がある。完全にイメージだけど。
そしてすでに酒を飲んでいたのだろう、藤井さんの顔は赤らんでいた。そして居酒屋選びを任された。
ぶらぶらと繁華街をしばらく歩いてみたが、最終的にはキャッチのお兄ちゃんが働くお店に入った。
あんまり期待をもっていなかったけれど、店内は賑わっていて安心した。藤井さんは焼酎のお湯割りを、そして僕はハイボールを頼んだ。料理はいくつか頼んだが、その中でもモツ鍋のモツがとろとろとしていて美味しかった。
藤井さんとは色々な事を話した。登った山の事を話したり、旅先のこと、旅の途中のこと、それと石川県の山の事を話した。僕は居酒屋の席は得意ではないが、藤井さんと飲んでいると楽しかった。ついつい「今年の12月にエベレスト街道を歩きましょうよ~」と藤井さんを誘った。そう言えてしまうくらい、藤井さんは旅の人だし考え方が若いのだ。
そう、会った時から思っていたけれど、藤井さんはすごく若いのだ。60は過ぎているんだけれど、感覚としては僕と同じくらいの頭の若さがあると思う。逆に僕の方がじじいの様な気もする。色んな話に好奇心を持って聞くし目もキラキラとしている。経験でものを決めちゃうのではなくて、すんなりと聞いたものを受け入れるというか、だから僕も自然に話す事ができる。それとすごく人が好きなんだなあとも思う。僕も一緒だ。百瀬慎太郎も「山を想えば人恋し、人を想えば山恋し」と言っている。
明日の約束を交わすと僕らはお互いのホテルへ向け別れた。僕は反対方向の電車に乗り1駅分間違えた。たった2杯のハイボールにやられたようだ。電車の中のサラリーマンの表情は皆同じだった。福岡も、東京も。
ホテルにつくと預けた鍵を受け取りにフロントに向かった。驚いたことに、夕方からシフトに入ったお兄さんは、僕の顔を見ただけで部屋番号がわかった様だ。これはこの旅始まって以来のことで、大いに感動した。博多が好きになった。
部屋に戻ると干していたシャツとズボンがすでに乾いていた。アウトドアの服はやっぱり素敵だ。
すぐに寝ようと思ったけれど酒がまわって眠れなかった。なのでテレビをしばらく見てから、1時過ぎに寝た。