阿蘇山登山① 東京 → 名古屋 → 別府 → 阿蘇。そして仙酔峡の駐車場へ
あらすじ:九州の百名山、阿蘇山・祖母山・九重山・霧島山・開聞岳を一気に巡る旅に出ました。別府に到着すると最初に目指したのは熊本県の阿蘇山でした。
東京から旅の散策ツアーズのバスで名古屋へ
4月16日火曜日 21時6分。
現在は祖母山の登山口である「尾平」の駐車場にテントを張り、その中で背中を曲げコツコツとノートパソコンのキーボードを叩いている。月明かりもない深い闇の中にポツンと一人。気を抜くとつまらない想像が頭を占領して怖くなる。ザワザワと流れる沢の音の細部まで聴きとれる。
阿蘇山を登り終え夜の山道を駆け抜けてここまでやって来た。けれどこんなところまで来なければ良かった、と心から後悔している。
恐怖に押しつぶされない様、必死に日記を書く。
4月12日の金曜日、夜9時過ぎに東京からの高速バスは名古屋の栄に到着した。旅の散策ツアーズのバスは相変わらず素晴らしい。そして栄から電車に乗り一社、その後は駅から歩いた。購入したダッフルバッグのゴロゴロという大きな音を閑静な住宅地に響かせながら。
悩みに悩んでイーグルクリークのキャスター付きダッフルバッグを選んだけれど、この選択は正しかったのだろうか、わからない。意外と手が疲れる事がわかったし、段差ではくるんとひっくり返る事も度々あった。夜の街を徘徊するにはキャスターの音も少しうるさい。(まあスーツケースもそうだけれど)
移動中は歩きにくいけど常に登山靴を履いて、旅の荷物を出来るだけコンパクトにまとめて60リッターのザックに無理やり押し込む。そんなスタイルで来るべきだったのだろうか。登山と旅行がセットになると荷物の扱いがややこしくなって困る。
ちなみに、東京から名古屋、九州との間にワンクッション置いた理由は、まず動かないと始まらないと思ったからだ。姉の住む名古屋にさえ出てくれば東京に戻るのも面倒になるし、やっぱり人の家だから居心地が悪くなり飛び出したくなってしまうのだ。行き先もなくなれば旅をするしかない。
基本的に僕は出不精でインドアなんだ。無理やりやる気スイッチをオンにするしか方法がない。
九州 百名山登山のプラン
高速バスを使って大分の別府まで行く事にした。
当初の予定は、博多までバスで行き、そこで3週間くらい激安レンタカーを借りて九州を周る、というごくごくシンプルな予定だった。けれど姉の提案で作戦を変更。別府で車を借り、阿蘇山、九重山、祖母山と巡り、その後電車で鹿児島へ。そしてそこでもレンタカーを借り、霧島山(韓国岳)と阿蘇山を登る。九州の北と南を別々に攻める作戦となった。
僕は車の運転が嫌いだし疲れるので、少しでも運転時間を減らした方が良いだろうと考えた。
ちなみに、僕はこんな感じの大まかなプランしか持っていなかった。これが決まっていればじゅうぶんだ。ここは日本だし、あとは現地で何とでもなるだろう。
名古屋からぶんご号で別府北浜へ
2013年の4月16日火曜日。九州の百名山を巡る旅1日目。
ー 名鉄バスセンターから「ぶんご号」に乗って大分は別府へ ー
名鉄バスセンターは素敵だった。東京駅がぐちゃぐちゃだからあんなものを想像していたけれど、小ぎれいだったしコンビニやトイレもあり便利だった。窓口の掲示板には名古屋から行ける各地の名前がたくさん書かれていて、見ているとワクワクする。旅の出発点として良さそうな場所だ。
ぶんご号は通路が2本の3列シートだった。隣がいないので素晴らしいが、座席の前後の間隔は旅の散策ツアーズのものよりは狭い。足置きはあるけどフラットにする事ができない。まあそこそこリラックスは出来そうだけれど、足のポジション決めが難しそうだ。
バスが出発するとうしろに振り返り、席を倒していいですかとおばさんに尋ねた。するとおばさんは「今ですか?」と絶対に嫌だ、という顔をして言った。今でしょ!と心の中の僕は叫んでいたが、わかりました、と明るく返事をして前に向きなおした。
そしてすぐに僕は乗務員に言い、うしろに人がいない一番前の席に移動させてもらった。おばさんの ”前のシートが倒れても良いタイミング” を気にしながらのバス旅なんか嫌なんだ。
ぶんご号は22時30分過ぎにどこかのサービスエリアに停車した。これが最後の休憩らしく、僕はコンビニのチキンを食べタバコを吸い歯を磨いた。バスに戻ると全てのカーテンが締まっていた。ここからは景色を見ることのできない旅が続く。オーディブルで英語を聴きながら寝た。
気がつくとカーテンの隙間から空の明かりが入ってきていた。足を置くポジションをなおしながら、バスが激しく揺れる音に起きながらもそこそこ眠れていた様だった。そして朝7時30分頃別府の北浜に到着。当初は大分で降りる予定にしていたけれど、レンタカー屋が多そうだと思い直し別府で降りる事にした。
それに別府の北浜で降りた人には素敵なサービスを受けることができた。北浜バス停目の前の「西鉄リゾートイン別府」で朝食と温泉のサービスを受けることができるのだ。これは本当に素晴らしい。
僕は温泉は入る気分ではなかったので、朝食だけを頂いた。ご飯やパン、コーヒー、ジュース、惣菜、味噌汁など、豪華ではないけれどこのサービスには笑みがこぼれた。いたく感動してご飯を2杯食べた。
このままのんびりしたいなあ、旅館に入って温泉に浸かって畳でゴロゴロしたいなあ、と朝食の会場で食後のコーヒーを飲みながらぼーっと考えていた。けど覚悟を決めて動く事にした。まだまだ腰が重い。
別府でレンタカーを借り阿蘇山へ
西石油のレンタカーを借りる事にした。携帯で簡単に調べた所、別府ではここが一番やすい様だ。2525(ニコニコ)レンタカーっていう12時間で2525円の安いレンタカー屋さんは有名だけれど、それに対抗して2424円(ニシニシ)でやっているようだ。面白いのでここに決めた。
西石油の電話のおねーさんの対応は的確で素敵で、近くの給油所までの道順も丁寧に教えてくれた。
北浜から別府駅に向かって坂を登り、駅を通り越してなおも坂を登る。大荷物では大変な道のりだった。そして暑くて汗が出てくる。朝は肌寒かったが日が出れば暑い。九州だ。幸せだ。
30分ほど歩いて9時、指定のエネオスに到着した。手続きもすんなりと進み料金は4泊借りて17750円。保険も込みだ。4泊か3泊かで迷ったけれど、レンタルの延長が出来ない場合もあるのでいたしかたがない。軽自動車。ホンダのゼスト。
早速、ぶんご号に乗っている時に目をつけていたマックスバリューへ向かった。そして駐車場でカーナビやシガーソケットのチャージャーのセッティングをした。
それが終わるとマックスバリューで食料を調達。米2キロ、缶詰系、パンをたくさん、レトルトのカレー、スニッカーズなどを購入。料金は3000円。確実に足りない量だけれど、まあ途中でコンビニもあるのでなんとかなるでしょう。
それにしても、車内の至る所に荷物が散らばってしまい、どうしたもんだかわからない。初めての車旅は難しいのだ。
さあ車も手に入れたし食料も手に入った。朝飯もただで食べた。ものごとが驚くほど順調にすすんでいる。でも暇だ。ということで、僕は阿蘇山に登る事にした。阿蘇山なら短い時間で登れるので、昼過ぎまでに着けば夕方には下山できるはずだ。急だけれど、今日は時間があまっていてやることがないし、空が晴れているから。しかも明日は雨だと言う。車も4泊しか借りてないので晴れれば確実に登らなければならない。
気合を入れて出発。でもすぐに車をとめた。
持参したカーナビをハンドルのクラクションの位置につけていたが、駐車場を出ようとハンドルを思いっきり切ると、そのカーナビのコードがハンドルにぐるぐるとからまったのだ。僕は馬鹿なのだろうか。
カーナビは持ってきたが土台を持ってくるのを忘れた。面白そうだと思って取り付けたのに、こんな結果になってすごく悲しい。
その後別の場所に取り付けたけれどすぐに取れた。なので諦めてカーナビの音声だけを頼ることにした。ついでにグーグルマップの音声も携帯から流し、ダブルナビで阿蘇山に向かった。車内はナビの声でひどくにぎやかになった。
別府の坂道に軽自動車は唸り声をあげたけれど、不安だった高速も無事に入ることができ、そして九重方面へ向かった。晴れていて暖かくてドライブがすごく気持ちいい。何よりみんな車を急がせないし、交通量が少ないのが素敵だ。形の良い由布岳を眺めながらの運転は本当に気持ちが良かった。
しかし素敵なドライブもあっと言うまで、ナビに九重のインターで降りる様しつこく言われた。ETCのマシーンが無いのでお金は手渡し、うまくいった。
阿蘇の不思議なカルデラと仙酔峡道路
その後もナビまかせでのドライブは続いた。片側一車線の狭い道路だけれど、ぽかぽかとお日様は気持ち良く、過ぎていく町並みと山々の景色を楽しんだ。
どれくらい車を走らせた頃だったか忘れたけれど、眼下には広大な盆地が広がり、その向こうには独立峰的な山が見えた。阿蘇山だろうか。
そしてすぐ、道路はものすごい急斜面を下った。山に登ったつもりもないのになぜこんなに急激に下っているのだろうかと不思議に思ったが、カルデラの盆地に向けて下っているんだなと言う事に気がついた。それでも不思議だったし違和感があった。僕がいた場所の標高が高かったのだろうか。それとも僕はマイナスに向かっているのだろうか。大きくて深い穴に潜っていく様な気分になった。
急な山道が終わるとあっけないほど道はストーンっとまっ平らになった。不思議だ。
その後しばらく車を走らせ、コンビニで「阿蘇の天然水」だかの水を2リットル購入。そして精肉店が運営する定食屋でからあげ定食を食べた。店内を見回すとみんなからあげ定食を頼んでいたのだ。鳥がプリプリとしておいしかった。お客はスーツ姿の人が多く地元の人達で賑わっている様だった。
仙酔峡の登山口を目指し「仙酔峡道路」なる道を走った。牧場の中に道が通っている格好で、阿蘇山の眺めが気持ちのいい道路だ。そしてたくさんの牛がフェンスの近くで僕にメンチを切っている。彼らがこの辺りの名物の赤牛と言うやつだろうか。「赤牛」と書かれた看板を来る途中目にしたけれど、記念に食べておけばよかったかも知れない。
そして牧場の感じも面白い。ぼこぼこと盛り上がった小山がいくつかあって、その緑の下の黒い地面があらわになり模様を作っている。牛がのんびりするするには少し激しすぎる様に思える景色だけれど、何がこの景色を生んだのだろうか。こんな場所を訪れたのは初めてだ。
そんな不思議な景色を眺めながら山道を登ると仙酔峡の駐車場に到着した。駐車場はとても大きかったけれど数台の車しか停まっていない。そして登山者は今まさに下山したばかりの様子の人が多くて、すごく気持ち良さそうに登山靴を脱ぎ、うわあやっぱり普段着は最高!みたいな顔をしていてゆるせなかった。
そんな中僕だけは悲壮感を漂わせ、せっせと登山靴を履きザックに荷物をポイポイと放り込んだ。なんとしても13時30分までには出発したい。
そして出発。車上荒らしにあわないだろうか。それだけが心配だ。