済州島(チェジュ島)の漢拏山(ハルラ山)登山
2012年の8月お盆の頃、ニュージーランドでお世話になった韓国の友人に会いにチェジュ島に行って来ました。前回はソウルでしたが今回はチェジュ島。エイデン、リブ、ケビンの4人で漢拏山に登ったり牛島(ウド)を観光したり、4泊5日の韓国旅行を満喫しました。このページではハルラ山の情報やゲストハウスのことなどを書いています。
ハルラ山のゲストハウス情報
Mt.halla Guest Houseは城板岳(ソンパナク)登山コースの近くにあり、漢拏山へのピックアップサービスもある素敵なゲストハウス。登山の前日と登山日の二日間宿泊しました。とても素敵なゲストハウスでしたが、リンク先のウェブサイト内に英語や日本語のページを見つけられないので、自分じゃ確実に予約できないなあと思います。1泊25000ウォン。
Mt.halla Guest Houseの特に気に入ったところはロケーションです。郊外に位置しているので静かで緑も多くバカンス気分を味あわせてくれました。チェジュ市街には車で何度も行きましたが、あの辺りのホテルやゲストハウスじゃなく本当に良かったなと思いました。周辺には何もないので、レンタカー無しでの利用は難しいかも知れません。
それと朝食にキンパが出るサービスがありましたが、あれが本当にサービスか、それともお金を出していたのか、と言うことは良くわかっていません。
Mt.halla Guest Houseのフロント
写真には写っていませんが、左手にフロントがあります。真ん中にあるのはカフェ。メニューがあったので飲み物などを注文できるんじゃないかと思います。靴は玄関でサンダルに履き替えて奥のロッカー(鍵付き)まで運ぶ必要があります。これが面倒だったので、カフェを潰してロッカーになったら嬉しいな、なんて思いました。
ドミトリーの様子
2段になっているドミトリーですが、各部屋は個室の様に区切られています。この部屋は恐らく12人部屋です。
個室内の様子
カーテンもありプライベートは確保されます。室内灯もあるので夜間でも他の宿泊者に気を使わなくて済みました。一番うれしかったのはエアコンが効いて過ごしやすいことでした。コンセントもあります。
シャワールーム
男性用の綺麗なシャワールームです。リンスインシャンプーとボディーソープ、ドライヤー等無料で利用できます。日本のシャワーと違ってシャワールームは完全に丸見えでやや抵抗がありました。
キッチン
大きなキッチン。自炊をする人はこちらを利用します。使い勝手が良いとは言えませんでしたが、綺麗で基本的な設備は揃っていました。浄水もあります。
Mt.halla Guset Houseからの眺め
ポツポツと建物はありますが、Mt.halla Guset Houseの周りはほとんどが緑です。ここちの良い風が吹いていました。
漢拏山(ハルラ山)登山日記
2012年8月16日木曜日。朝6時に起きるとゲストハウス「Mt. halla Guest House」の屋上でタバコを吸った。良い天気だ。昨晩も思っていた事だけれど、チェジュ島の気候は本当に素晴らしい。暑過ぎないし、心地良い風がそよそよと吹いている。空気も澄んでいる。そしてもう一つ素晴らしいのはこの Mt. halla Guest House のロケーション。街から離れているから、目に映る物は別荘的なもの以外、緑と山と空しかない。チュンチュンと鳥の鳴き声が聞こえるだけで 騒音もない。以前行ったハワイ島の朝を思い出した。素晴らしい朝だ。
ボチボチとみんなも起きてくる。みんなは朝食と昼食用に、スパムのサンドイッチを作ってくれた。このスパムサンドを漢拏山で食べる様だ。ありがたい。
それとこの Mt. halla Guest House は朝に韓国海苔巻き「キンパ」を出してくれる。確か1人あたり2本あったと思う。中々のボリューム。でもこれが有料なのか無料なのかはわからない。でも翌日ももらえたらしいので、こう言ったサービスなのかも知れない。
6時50分。準備が終わると Mt. halla Guest House の送迎車に乗り僕らは出発した。
運転中、運転手は韓国語で何やら皆に解説をしていた。たまに皆は笑った。たしか漢拏山に関してのガイダンス的な様なものだったと記憶しているが、とにかく何もわからなかった。そんな事よりも彼の運転するスピードが速すぎでびびっていた。車の少ない山道だけれど、軽く100キロは出ていたと思う。カーブを曲がる度にものすごいGがかかった。またバスの中では Mt. halla Guest House のバッヂをもらった。これが下山時ピックアップの際の目印になるようだ。
15分も車に乗ると「城板岳(ソンパナク)登山コース」の駐車場に辿り着いた。 城板岳登山コースの駐車場はなかなか広く、そしてトイレもあった。お土産なども売っていそうな雰囲気の施設もあったけれど、 皆に急かされ中を確認する事ができなかった。そんなこんなで7時20分登山開始。
皆スタートダッシュ。僕らと同じタイミングで登山を開始した人々は、子供からおばさんまで瞬間的に視界から消えた。リブとケビンも消えた。僕はいつもの登山と同じ様にゆっくりと歩いた。みな軽装備だから軽快に歩けるだろうけど、山頂までは9.6キロも登らなければならない。観音寺コースでの下山と合わせると合計で18.3キロもある。標高差は1100メートル以上もある。前半がんばっちゃうと後半きつくなってしまう。
バンバン人に抜かれて悲しくなってしまうペースだけれど、エイデンは僕のペースにあわせて歩いてくれた。
登山道は非常に歩きやすい樹林帯。木道だったり、石が敷き詰めてあったり綺麗に作られている。しかも初めのうちは登山道の傾斜も少ないから、ハイキングの様な感じで歩けてしまう。残念なのは登山道の両サイドに延々と張られたロープ。自然を保護する目的なのだろうけど、ここまで自由度が無いと少し寂しくなる。こんなに厳しくされている登山道を登るのは始めての経験だ。
そんな熊笹生い茂る樹林帯歩きが続くなか、僕は少し不安を持っていた。誰か、昨晩K-martで購入した行動食を持っているのだろうか?見る限り、エイデン、リブ、ケビンのザックはぺしゃんこだ。
恐る恐る「スニッカーズは持ってきた?」とエイデンに尋ねると、「アラタ、ソーリー」と彼はにこやかに答えた。スニッカーズの大袋とダイジェストっていうリブが好きなクッキー、そしてプリングルスのチップス。全てを忘れてしまったらしい。今朝出発前に行動食の事を考えたけど、誰か持っているだろうと思って確認しなかった。僕は皆の食料を持っていたから、お菓子は誰か持っているだろうと。それがいけなかった。まあ、これだけ人もいるしなんとかなるだろう。大変な思いはするかも知れないけども。
2時間ほど歩くと「沙羅(サラ)休憩所」に到着した。 沙羅休憩所は広々とした屋根のある休憩所で、幾つかの簡易トイレもあった。ここで僕らは朝食をとった。僕は Mt. halla Guest House が作ってくれたキンパを食べた。美味しかった。
登山を再開して20分後、9時頃になると水場に到着した。これがこのコース唯一の水場で、みなものすごい勢いで水場に殺到していた。観察しているとほとんどの人が500mlのペットボトル一本しか所持していないようで、夏真っ盛りでこんなに暑いのにそれだけでは足りないだろう、と心配になった。まだ半分くらしか歩いていないのにこれから先どうするのだろうか。ちなみに僕は、万が一の事も考え3リットルの水を用意した。
そう、装備不足は多くの漢拏山を登る多くの登山者に言える。ものすごくハイテクな格好をしている登山者もいるが、ほとんどがトレランの様な格好で食料も防寒着もカッパも十分な水も持っていない用に思える。靴はローカットのランニング用のものだ。でもこれらの人はまあまともと言えるかも知れない。ひどいのはコンビニ袋をぶら下げちょっと買い物に来ました、的な格好の人もいるし、クロックスのサンダルで登っている人がいたことには本当に驚いた。
こんな風に、韓国の登山事情を観察しながら登った。普段登山をしない人ばかりだろうから正確な登山事情とは言えないだろうけど。
それ以外では服装が気になった。化繊の立体裁縫が施されたハイテクウェアを来ている人が多く目立ったのだけれど、おじさんおばさんまでビシッと上下ハイテクで決めている。日本の場合だと、おじさんおばさんはクラシックスタイルが定番で、若い世代の服装とはっきりと分かれている様に思う。しかし漢拏山ではその様なクラシックスタイルをしている人を見かける事はなかった。韓国の登山の歴史が浅いのか、もともとその様なスタイルの服装で登山をしていたのか、新しい物を積極的に取り込んでいく文化なのか、それともここが初心者だらけの漢拏山だからだろうか。色んな風に考えてケビンにも訪ねたりしてみたが、結局答えは見つけ出せなかった。
話は登山日記に戻る。10時10分には「つつじ畑休憩所」に到着した。ここは先程の「沙羅(サラ)休憩所」よりも大きく開放的な場所に位置しているので休憩に良い。しかも、食料や飲み物、そしてアイゼンやレインコートなどの装備も販売されているので素晴らしい。どうやらここで食事をとると言うのが定番の様で、みんな湯気を出しながらカップラーメンを食べていた。僕はウォンを持っていなくて困ったが、ケビンから4000ウォンを借りチョコレートバーを4本購入しておいた。忘れてきた行動食の代わりで、みんなの食料がなくなったら渡す予定にした。
つつじ畑休憩所前のベンチでご飯を食べしばらく過ごすと、僕らは漢拏山の山頂を目指して出発した。ここから登山道は急勾配となる。
高い樹木も少なくなり登山道には夏の日がサンサンと降り注ぐ。そんな中ケビンは足腰が強いらしく、1人でポンポンと先に登っていった。一方遅れているのはエイデンとリブで、特にリブの疲れ方は激しい様に思えた。足首が痛いと言う様な事を言っており、下を向きながら体を重そうに持ち上げている。そしてしばらく登っては立ち止まる、と言うリズムを繰り返した。無事に下山できるだろうか、と心配になった。
つつじ畑休憩所から40分も歩くと木段歩きが始まった。前方頭上には漢拏山の山頂らしきものが見える。そしてそこからは長い木段歩きが続いた。標高があがれば眺望が楽しめそうなものの、登れば登るほどガスは濃くなって視界は悪くなった。
12時10分。漢拏山の山頂に到着した。7時20分に登山を開始してから5時間ほど要した事になる。参考タイムは4時間30分ってことだから、あれだけ休憩してゆっくりと登ったにしてはまあいいペースなんじゃないだろうか。いや、4時間30分ってのがゆるい設定なのだろう。
漢拏山の山頂は多くの登山者で賑わっていた。ガスって眺望は楽しめないものの、 白鹿潭(ペンノクタム) を眺める事はできた。僕らはここでしばらく休憩し、記念撮影をしたりご飯を食べたりした。そして12時半過ぎに下山を開始した。確か送迎バスのピックアップが16時だったから、ゆっくりも休憩してらんないなって話しだった様に思う。
下山道は観音寺コース。山頂から北へと下山する。8.7キロとこれまた長いが、城板岳登山コースに比べ視界にはダイナミックな山が入り気持ちがいい。地図を持っていないから自分がどこを見ているのかわからないが、左手に見える尾根が歩いたら非常に気持ちよさそうだった。あそこを歩いたら最高なのになあ、と上を眺めつつも木段は沢に向かって急下降するばかりだった。
登山者の「あいさつ」について書こうと思う。
韓国では登山者同士の挨拶はない。一般の、路上と同じ様にみな歩く。日本の様に挨拶をしたり道を譲りあったり、と言う事は全くなかった。登山で挨拶をし合うと言うのは日本だけなのだろうか。調べてないから良くわからないけど、日本の登山に慣れている人間としては少し寂しい思いをした。
それともう一つは音楽の問題について。韓国人はスマートフォンを使い、音楽をスピーカーで鳴らして聴く事が多いのだけど、これが登山中にもあって閉口した。そんな数多くの人間がやっているわけではないけれど、先を行く登山者が音を鳴らしていると延々と聴かされるハメになるのできつい。僕は携帯のスピーカーからの汚い音が嫌いだからこれには参った。まあ日本でもラジオを聴いている人やあまりにも熊鈴がうるさい人もいるから同じ事かもしれないけど。
13:40分頃になると沢に辿り着き立派な吊り橋を越えた。それを越えるとすぐに水場があり、皆給水をしていた。僕もプラティパスに満タンの水を入れた。3キロ持ってきた水もみんなにあげているからカラになっていた。大量に運んで来て本当に良かったと思う。
14時には「三角峰待避所」と言う場所に辿り着いた。トイレなどはあったが、待避所内は無人、売店などもなかった。それにしても14時だと言うのに、ここから観音寺登山口まではまだ6キロ以上もあるようだ。長い。僕とケビンなら16時までには下山できると思う。でもリブとエイデンはどうか。とりあえずがんばってみよう、という事になった。
そこからは長い樹林帯がひたすら続いた。辺りは見渡す限り熊笹が茂っている。そして悲しくも雨が降り始めた。初めはソヨソヨと細かい雨だったが、標高を下げるに連れ土砂降りになった。登山道は沢になっていた。そう、城板岳登山コースもそうだったけれど、登山道の水がはけず、ところどころ水たまりができていた。しっかりとした登山靴がある方が安心だなと思った。
沢から上がる長い木段を登り切ると僕らは少し休憩をとった。時刻は15時20分で、そこから観音寺登山口まで何キロだか忘れてしまったが、僕らは16時には間に合わないという事がわかった。僕とケビンは相変わらずだけれど、リブとエイデンは本当につらそうだ。笑顔も、面白い事を言う余裕もない。登山を開始してから8時間も経過しているのだ。僕も少し疲れてきた。
休憩が終わると、僕とケビンは先に行く事にした。もうどの道間に合わないから、エイデンとリブはマイペースに下って、僕らはとっとと下山をしてしまおうと考えたのだ。理由はタバコを吸いたいから。漢拏山は禁煙の山だからタバコを吸えない。登山中タバコが吸いたい吸いたいと言い続けていた僕らは、ダッシュで残りの道を下った。
相変わらず熊笹の樹林帯で、石がボコボコとした歩きづらい道が続いた。僕とケビンは会話もせずひたすらに下った。雨も上がり濡れた服は乾いてきた。そして16時15分頃、僕らは観音寺コースの登山口に到着した。
観音寺コースの登山口には大きな駐車場、そしてキャンプ場もあり多くのキャンパーで賑わっていた。約束の16時から15分も過ぎていたから、やはり Mt. halla Guest House の送迎車は既にいなかった。
歩いてすぐの所にセブンがあり、僕らはそこでジュースを買いタバコを吸った。
30分くらい寛ぐと、エイデンもリブも下山してきた。僕らは先に下山してしまったので少し心配をしていたが、みんな無事に下山ができて良かった。
Mt. halla Guest House に連絡をとると17時30分にもう一度迎えに来てくれるようだ。これがわかっていればもう少しゆっくりと下山したのにな~、と思った。
送迎車が来るまでの間、僕らは管理所で漢拏山登山の証明書を作ってもらった。エイデンは僕の名前がハングルで表記された証明書を頼んでくれた。
無事にみんなが漢拏山の頂上を踏んで、そして下山ができた事が嬉しい。それと同じ日付が記載された漢拏山の登山証明書を持てた事も嬉しい。こればっかりはみんなで経験しないと得ることができない。
エイデンとリブに「機会があればもう一度漢拏山に登りたい?」と尋ねると、「もう2度と登りたくない」と、彼らは笑って答えた。
標高差1200メートル、そして18.3キロもある漢拏山のロングコースはそう簡単ではなかったようだ。